警視庁は、女性を風俗店に紹介する大規模スカウトグループ「アクセス」のリーダー、遠藤和真容疑者(33)を9日再逮捕した。同時に、「アクセス」から紹介された女性に売春の場所を提供した疑いで、風俗店代表の稲毛大樹容疑者(30)らも逮捕された。
この事件は、SNSを悪用した現代の犯罪組織の実態を浮き彫りにし、風俗業界の闇に改めてメスを入れるものだ。
オークション形式で女性を斡旋か
「アクセス」は、約300人のスカウトを抱える大規模な組織で、メンバーは「ゴールド」「シルバー」といった階級に分けられ、風俗店に女性を紹介していた。その手口は、SNS上で勧誘した女性の自撮り写真などを風俗店に送り、オークション形式で最も高い報酬を提示した店に女性を斡旋するというものだった。
警視庁の捜査によると、同グループは5年間で約70億円もの利益を上げていたとみられている。風俗業界の関係者によると、このようなオークション形式の斡旋は業界内でも噂されていたが、これほど大規模かつ組織的に行われていたケースは前例がないという。
特別捜査本部設置の背景
警視庁は今回の事件に対し、16年ぶりに生活安全部として特別捜査本部を設置した。これは、同組織の活動が全国46都道府県、約350の風俗店に及んでいたこと、また人身取引とも言える悪質性を持っていたことから、特別捜査態勢が必要と判断されたためだ。
捜査のきっかけは、昨年2月に新宿・歌舞伎町でホストが女性客の売掛金トラブルで逮捕された事件。その女性が売春を強要されていた風俗店に、「アクセス」が女性を斡旋していた事実が浮上し、特別捜査本部の設置に至った。
SNS上の偽名使用で「トクリュウ」認定
「アクセス」のメンバーはSNS上で偽名を使い、女性を勧誘していたという。この手口により、警察が把握するのが難しくなっていたことから、警視庁は同グループを「特異流通(トクリュウ)」に分類し、摘発に至った。
「トクリュウ」とは、偽名や匿名アカウントを用いて行われる犯罪組織のことで、従来の暴力団組織とは異なり、摘発が困難な新しい形の犯罪として注目されている。警察関係者は「SNSの匿名性を利用した犯罪は増加しており、今後も捜査の強化が必要だ」と語る。
今後の捜査と風俗業界への影響
今回の摘発は、風俗業界全体に大きな波紋を広げている。摘発された風俗店以外にも、「アクセス」と取引があった店舗が多数存在するとみられ、今後の捜査次第では業界全体の浄化につながる可能性がある。
一方で、風俗業界の内部からは「過去にもスカウト摘発はあったが、業界の構造は変わらなかった」という声もある。今回の摘発が業界の構造的な問題にどこまで踏み込むのかが注目される。
ここ数カ月、全国的に各地にあるソープランドや風俗店の摘発の報告が相次いでいる。これらの動きは、「アクセス」のスカウト組織摘発と無関係ではないと考えられる。風俗業界の人間曰く、「今回のスカウト組織摘発をきっかけに、性風俗業界全体の浄化に向けた一斉捜査が進められていくだろう」と指摘する。背景には何があるのか。
大阪・関西万博のせいで全国のソープが全滅か
業界関係者の見立てとして噂されるのが、今年2025年に開催する大阪・関西万博の影響だ。万博のように国際的な注目が集まる中での摘発強化は、過去の大型イベント時の動向とも一致する。
例えば、2005年の愛知万博の際にも、開催地周辺での違法風俗店摘発が強化された記録がある。国際的なイベントの前には、治安維持の観点から風俗業界の浄化が行われる傾向があるようだ。
また、関西万博は世界中から多くの観光客が訪れるため、風俗業界を通じた人身取引の発覚を避けるための予防的措置としても捉えられる。警察がこのタイミングで一斉捜査を行っている背景には、国内外の評価を意識した政治的意図もあるのではないかとの見方が強まっている。