大阪・関西万博の開催まであとわずか。多くの注目を集めるパビリオン展示の中でも、ひときわ未来を感じさせるのが「空飛ぶクルマ」だ。SFの世界の話だった空飛ぶクルマは、今まさに現実のものになろうとしている。だが、その現状と未来はどのようなものだろうか。
「空飛ぶクルマ」という言葉は、車輪やタイヤといった車の要素とは異なり、身近な乗り物を包括的に表す「クルマ」を冠した愛称である。正式名称は電動垂直離着陸型無操縦者航空機であり、現状では操縦者が必要な場合もあり、技術面・法整備の両面で発展途上にある。
万博での空飛ぶクルマ、商用運航は断念もデモ飛行は実施
当初、万博での商用運航を目指していた空飛ぶクルマだが、安全性に関する国の証明取得が間に合わず、見送られることとなった。しかし、デモンストレーション飛行は実施される予定だ。
この空飛ぶクルマ、バッテリーを動力源とし、改良されたプロペラを使用することで、ヘリコプターよりも静かに飛行できる点が特徴だ。万博では4社が空飛ぶクルマをお披露目する予定だが、国産機体の実物公開は未だ少なく、CG画像での公開が多いのが現状だ。海外メーカーが既に実用化段階にあることを考えると、国産メーカーの開発状況に懸念の声も上がっている。
空飛ぶクルマが拓く未来の可能性
空飛ぶクルマの実用化は、私たちの生活に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。災害時の物資輸送や救急搬送、過疎地への医療提供、離島・山間地域への移動手段、そして都市部の渋滞緩和など、その応用範囲は幅広い。
1970年の大阪万博で未来の乗り物として展示された携帯電話が、約20年の時を経て日本でサービス開始されたように、空飛ぶクルマの実用化にも時間を要する可能性がある。
eVTOLの開発競争と未来のモビリティサービス
空飛ぶクルマの中でも、特に注目されているのがeVTOL(電動垂直離着陸機)だ。SkyDrive社のようなスタートアップ企業に加え、ホンダやトヨタなどの大手自動車メーカーも開発に参入し、競争が激化している。eVTOLは完全自動飛行を想定しており、ユーザーは操縦免許なしで利用できる未来の乗り物として期待されている。
ホンダは、eVTOLと自動運転車、そしてホンダジェットを組み合わせた、シームレスな移動体験を構想している。AIを活用したコンシェルジュサービスなど、新たなビジネスモデルの創出も期待される。一方で、SkyDrive社への公的資金投入額は100億円を超え、過去のMRJ開発への公的資金投入500億円と併せて、税金の適切な使用について疑問視する声もある。
空飛ぶクルマの実現に向けた課題
空飛ぶクルマの実現には、技術的な課題だけでなく、法整備やインフラストラクチャの整備も必要だ。離着陸場となるバーティポートの建設や、航空管制システムの構築など、多くの課題が残されている。
また、安全性確保のための基準策定や、騒音問題への対応も重要な課題となるだろう。国産メーカーの経営力、そして開発の遅延を取り戻せるかどうかも、今後の普及に大きく影響するだろう。
開発の現状と今後の展望
空飛ぶクルマは、まさに開発初期段階にあると言える。1970年の大阪万博で展示された携帯電話のデモ機が、実際に日本でサービス開始されるまで約20年かかったように、空飛ぶクルマも実用化には数十年を要する可能性がある。
今後の開発状況、法整備、そして社会受容性を見極めながら、長期的な視点でその進展を見守る必要がある。