バイデン米大統領は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を阻止する決定を下した。複数の米メディアが2日に報じた。ホワイトハウスは3日にも正式発表を行う見通し。
背景にある米国の思惑
買収計画は2022年12月に発表され、安全保障上のリスクなどを理由に審査が行われてきた。USTR(米通商代表部)は買収に反対の姿勢を示していた一方で、財務省や国務省は反対していなかったとされ、バイデン大統領はブリンケン国務長官とも協議を重ねていたという。
大統領側近の一部は、日本を代表する企業の巨額投資を阻むことは日米関係に悪影響を及ぼす可能性があると警告し、買収を認めるよう説得を試みた。しかし、バイデン大統領は最終的に阻止を決断した。
背景には、米国内の鉄鋼業界保護や雇用維持への配慮、そして中国との経済的結びつきへの警戒感があると見られる。また、トランプ前大統領が12月2日に自身のSNSで述べた 「かつて偉大で強力だったUSスチールが、外国企業、今回の場合は日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」「買収者は気を付けろ!」と投稿し、改めて買収計画への態度を表明していたことの影響も考えられる。
かねて反対していた全米鉄鋼労働組合(USW)のマッコール会長も12月3日、トランプ氏の投稿を受け「歓迎する」との声明を発表。
また、日本製鉄は2024年7月まで中国の宝鋼集団と合弁事業を行っていた経緯があり、これが米政府の懸念材料になった可能性も指摘されている。
日本製鉄への影響
日本製鉄にとっては、成長市場である米国での事業拡大の機会を失うことになり、大きな痛手となる。買収不成立の場合、約800億円(5億6500萬ドル)の違約金が発生する可能性もある。日本製鉄の森高弘副社長が昨年の決算会見で明らかにしていた。
森高副社長によると、米規制当局の審査で買収が認められない場合は、日鉄に巨額の違約金負担が発生。一方、買収が、株主総会で否決されるなどUSスチール側の事情で不成立となった際は、同社が日鉄に違約金を支払う取り決めのようだ。だとすると、今回は大統領判断でどちらでもないから違約金の取り扱いは難しくなり、訴訟になる可能性が高い。
SNS上の反応は様々
SNS上では、今回の決定に対する様々な意見が飛び交っている。買収阻止を支持する声もある一方で、日米関係への悪影響を懸念する声や、日本製鉄の将来を心配する声も上がっている。
今後の鉄鋼業界の行方
日本製鉄は今回の決定を受け、今後の戦略を練り直す必要に迫られる。世界的な鉄鋼需要の動向や米中関係の行方など、不確定要素が多い中、どのように活路を見出すかが注目される。また、この決定が他の日系企業の対米投資に与える影響も懸念される。