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岩屋外相に浮上するIR事業の収賄疑惑 揺らぐ日本外交の信頼

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米司法省が中国企業「500ドットコム」元CEOを起訴

岩屋たけし HP
岩屋たけし 外相のHPより

米司法省は2024年11月18日、中国企業「500ドットコム」(現BITマイニング)の潘正明元CEOを海外腐敗行為防止法違反などの容疑で起訴したと発表した。同氏は、日本の統合型リゾート(IR)事業をめぐり、2017年から2019年にかけて日本の複数の国会議員へ総額190万ドル(約2億9000万円)の賄賂を渡したとされる。

起訴状によれば、贈賄の内容は現金だけにとどまらず、プライベートジェットによる旅行、高級贈答品、食事、性接待などを含むものだった。

潘氏および関係者が日本の議員へ金銭を渡した目的は、IR事業の進出を円滑に進めるための便宜を図ることにあったとされる。また、贈賄の資金は偽の契約を通じて隠蔽されていたという。

中国企業「500ドットコム」とは何者か

今回の疑惑の中心にある中国企業「500ドットコム」(現BITマイニングLimited)は、もともと中国でサッカーくじのオンライン販売を手掛けていた企業とのこと。創業当時の主力事業は、中国政府公認のサッカーくじをインターネット経由で販売する仕組みを提供するもので、順調に成長を遂げ、2008年には国家ハイテク企業にも認定された。その後、2013年にはニューヨーク証券取引所に上場し、IPOで8000万ドルを調達するなど、一定の信用を得ていた模様だ。

しかし、2015年に中国政府がサッカーくじの販売に対する規制を強化し、同社は主要事業を事実上失うこととなる。この経営危機の中で、同社の株主には中国の国有企業である「紫光集団(Tsinghua Unigroup)」が名を連ねることとなったが、以降の500ドットコムは、オンラインカジノや商品取引など、新たな事業分野へ迷走を始めた。その中で同社は、2017年にマルタの企業を買収し、ヨーロッパ市場を対象にオンラインカジノ事業を展開するようになる。この頃から、日本のカジノを含む統合型リゾート(IR)事業への参入を狙い、積極的に動き出したとされる。

日本のIR事業進出を巡り、500ドットコムは国会議員らへの賄賂や接待を通じて、その目的を達成しようとした疑いが浮上している。同社の過去の事業からは、中国国内の政府規制を回避しながら、国外市場で勝負しようとする姿勢が見て取れるが、その過程で法を逸脱した行為が行われた可能性がある。

岩屋毅外務大臣にも疑念の目、2020年に否定していた賄賂受領疑惑

潘氏による贈収賄計画に関与したとされる議員の中には、現外務大臣の岩屋毅氏の名前が挙がっている。岩屋氏に関しては、2020年に一度、秋元司元衆院議員の収賄容疑に関する捜査の延長線上で疑惑が取り沙汰された。当時、岩屋氏は、「中国企業から金銭を受け取った事実は断じてない」と述べ、完全に疑惑を否定している。

その際、岩屋氏は「政治資金規正法に基づき、外国企業からの寄付を受け取ることはあり得ない」と強く主張。また、仮にそのような金銭があった場合は返金する意思を示していた。しかし、潘氏の起訴状における「複数の日本政府関係者」との記載や、FBIによる詳細な調査結果が明らかになる中で、岩屋氏への疑念は再び注目を集めている。

500ドットコムが、秋元被告のほか、IRを推進する超党派の議員連盟で当時幹部を務めていた岩屋氏ら5議員側に100万円ずつを提供したと供述していたことが報じられているが、改めて明快な説明が必要と言える。

G7外相会合に出席した岩屋外相、ローマからコメント

岩屋毅外務大臣は、2024年11月25日から26日にかけてイタリアのローマ、アナーニ、フィウッジで開催されたG7外相会合に参加した。会合では、ウクライナ戦争や中東情勢、さらには世界経済の安定化に向けた協議など、幅広い議題が話し合われた。

岩屋外相は会合終了後、次のようにコメントを発表している。

「今回のG7外相会合は、私にとって初めてのG7の場だが、非常に建設的かつ意義深い議論が行われた。米国のブリンケン国務長官をはじめとする各国の外相たちが暖かく迎え入れてくれた。国際社会が直面する課題に対してG7としての役割と責任は極めて重要」

このように、岩屋氏は会合の成果を強調し、外交のトップとしての役割を果たしていることをアピールした。しかしながら、その裏で彼に対する収賄疑惑が米司法省の起訴状によって再び注目されている事実は、国際社会における日本の信頼性に影を落としている。

ちなみに、外務省の11月29日の岩屋外務大臣会見記録によると、インディペンデント・ウェブ・ジャーナル濱本記者は以下のように岩屋大臣に対して質問したことが開示されている。

インディペンデント・ウェブ・ジャーナル濱本記者

 

“告訴状によると、潘氏らは2017年(平成29年)から19年の2年間で、複数の日本の国会議員に総額190万ドル、2億9000万円の賄賂を渡したとされており、その中に現職の岩屋大臣が含まれていたと供述しているとのことです。岩屋大臣は、当時この容疑を否定しており、現在、既に控訴時効を迎えているため、国内的には、問題は終わった話とされています。

しかし、米国の時効にはかかっておらず、米国において、贈賄側である潘氏らが、有罪答弁で贈賄の起訴事実を認めているため、収賄側である岩屋大臣も容疑者となるとの指摘もあります。岩屋大臣は、米国に収賄容疑者とされている状態で、海外への渡航なども多い外務大臣としての職務を全うできるとお考えでしょうか。”

岩屋外務大臣

“まず、はっきり申し上げておきたいと思いますが、これは既に終わった話だと思います。私(岩屋大臣)は、令和2年の1月4日に記者会見を行って、申し上げたとおりでございまして、私(岩屋大臣)が、中国企業から金銭を受け取った事実は断じてありません。まして、工作を受けたこともありません。私(岩屋大臣)自身、報道されている中国企業とは、全くお付き合いはありません。政治資金規正法上も、外国企業から寄付を受けることなどはあり得ません。

そのことを当時の記者会見で、質問が尽きるまで、私(岩屋大臣)の方から、お答えをさせていただいているところでございますので、今、御指摘があったような嫌疑は、晴れていると、確信しております。”

日本外交の信頼を揺るがす贈収賄疑惑

ただ、こうした疑惑が浮上する中、岩屋氏は外務大臣としての職務を遂行しながらも、自身の潔白を証明しなければならないという難しい立場に置かれている。

先述したが、彼は2020年1月にも記者会見を開き、「中国企業からの金銭授受は断じてない」と明言して疑惑を否定している身だ。しかし、米国側の捜査で贈賄の事実が認められている中、収賄側として名前が挙がる日本政府関係者への疑念が完全に晴れることは容易ではない。

国際社会と日本メディアの対応に注目

本件をめぐって注目すべきは、疑惑が国際的なスキャンダルとして浮上する一方、日本国内の主要メディアがほとんど報じていない点だ。米司法省が公開した起訴状や日本の捜査当局の協力が明らかになっているにもかかわらず、多くの大手報道機関が沈黙を守っている。

齋藤元彦兵庫県知事の問題が連日騒がれてきたが、問題となったファイルが立花孝志氏の手によってついに開示されるや、加熱していた報道は収束しはじめた。次こそ、IR事業の収賄疑惑というこの国際社会を巻き込んだ大きな問題に目が向けられるのか。

いずれにしろ、この状況は、日本国民に対して重要な情報が十分に共有されていないことを意味する。

また、岩屋氏が外務大臣という外交の中心的役割を担う有職者でありながら、米国の起訴状に名前が挙がる状況下でG7会合などの国際舞台に立つことが、日本の外交にどのような影響を及ぼすかも懸念される。もし仮に、収賄疑惑が国際的にさらに拡大するような事態になれば、それは岩屋氏個人の問題を超え、日本全体の信頼性に関わる深刻な問題となる。

岩屋外相と政府に求められる透明性と説明責任

岩屋外相に課せられているのは、単なる疑惑否定を超え、国際的な場での透明性ある説明を行い、国民および国際社会の信頼を取り戻すことだ。これが叶わない場合、日本の外交そのものが危機に陥る可能性もある。また、疑惑に対するメディアの沈黙が続く限り、国民がこの問題を十分に認識する機会が奪われ続けることにもなる。このような状況下では、疑惑を晴らすための取り組みと同時に、情報の透明性を向上させることが求められる。

岩屋外相が「あらぬ嫌疑」と主張していることが事実であるならば、具体的な証拠をもって自身の潔白を示すべきである。それは彼の名誉だけでなく、外務大臣という職務、さらには日本という国家の名誉を守る行動にもつながる。政府としても、単なる疑惑の否定に終始するのではなく、捜査機関と連携し、事実を明らかにする姿勢を見せることが重要だ。

さらには、日本のメディアが本件に対して沈黙を貫く現状もまた、民主主義国家としてのジャーナリズムの在り方を問われる問題である。本件に関する報道が不足していることは、国民にとって重大な情報が共有されていないことを意味し、社会の健全性に影響を及ぼす。疑惑が日本の外交や国家的信用に関わるものである以上、メディアにはその責務を果たすことが求められる。

日本の外交と信頼を守るために

今回の贈収賄疑惑は、岩屋外相個人の問題を超え、日本の外交全体の信頼性を揺るがしかねない重大な問題である。外務大臣という職務は、国際社会における日本の顔であり、その人物が疑惑を抱えたままでは、日本の外交的立場が弱体化する恐れがある。特に、国際的なルールや法の遵守を訴える立場を取る日本にとって、今回の問題は致命的な信用失墜につながる可能性がある。

岩屋外相を含む日本政府には、疑惑が完全に晴れるまで国際社会に対して誠実かつ透明な対応を示す必要がある。また、国内メディアや国民がこの問題に向き合い、健全な議論を進めることも重要だ。本件は単に一人の政治家の潔白を問う話にとどまらず、日本全体の政治的信頼性が試される場面であることを認識しなければならない。

今後の展開次第では、今回の疑惑が日本の外交や社会にどのような影響を与えるのか、さらに注目が集まるだろう。そして、その中で岩屋外相がいかなる行動を取り、政府がどのような姿勢を示すかが、国民と国際社会に問われることになる。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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