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シブヤ大学学長 大澤 悠季さん |ひと足さきに、ほしい未来へ – 八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談

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「シブヤ大学…渋谷のギャルが教えてくれる大学? って、なぜか勝手にわたし思い込んじゃっていて(笑)」——そう語るのは、シブヤ大学2代目学長の大澤 悠季(おおさわ ゆき)さんです。

「八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談」第2回は、第1回に登場いただいた我有さんと共に、シブヤ大学の拠点となっているco-ba ebisuへと大澤さんを訪ね、学長になるまでの歩みと現在、そして「開かれた学びの理想的なあり方」などについて雑談してきました。

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下: 大澤 悠季(おおさわ ゆき)

NPO法人シブヤ大学2代目学長。1992年東京都生まれ。立教大学観光学部在学中に地域における人材育成や教育分野に興味関心を持ちイギリスに留学、大人が楽しく学び続ける姿勢の大切さに気付く。2019年にNPO法人シブヤ大学に入社し、翌年学長に就任。授業企画・ブランディングに取り組んでいる。元 沖縄県今帰仁村 北山高校魅力化プロジェクト公営塾塾長。

左: 我有 才怜(がう さいれい)

2017年メンバーズ新卒入社。社会課題解決型マーケティングを推進するほか、気候変動への危機感や市民運動への興味から国際環境NGOでも活動中。2023年4月1日、メンバーズ社内に開設された「脱炭素DX研究所」の初代所長に就任。IDEAS FOR GOODと共にWebメディア「Climate Creative」運営中。

右: 八木橋 パチ(やぎはし ぱち)

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャーおよびコラボレーション・ツールの展開・推進を担当。社内外で持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちとさまざまなコラボ活動を実践し、取材・発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。WORK MILLにて「八木橋パチの #混ぜなきゃ危険」連載中。
パチ

なぜか、我有さんと大澤さんはつながっているものだと勝手に思い込んでいたんだけど、今日が初対面だということで。

でも、シブヤ大学のことはどう? 知っているよね? これまでにもう何回か授業に参加したりしているんじゃないの?

我有

なんとなく名前は聞いたことがあったような気もしますが、実は、シブヤ大学のことも今回初めて知りました。「え、15年を超える、こんな歴史のある団体だったのか!」って。

でも、私は「渋谷のギャルが教えてくれる大学かな?」とは思いませんでしたけど(笑)。

パチ

だよね(笑)。じゃあ大澤さん、最初に我有さんと読者の方たち向けに、シブヤ大学とは何なのかの説明をしてもらえる?

大澤

分かりました。東京生まれ東京育ちのわたしも、ほんの4年前まではろくにシブヤ大学のことを知らずにいたので、無理もないです。

シブヤ大学は、「大学」と聞いて多くの人がイメージする「学校教育制度の最高学府で教授がいてキャンパスがあって…」という、いわゆる大学とは違います。

シブヤ大学の特徴は、年齢や肩書きに関係なく、誰でも無料で学べる開かれた学校であることですね。

「シブヤ」と銘打っているけれど在住在勤に関わらず参加できて、すべての授業を実費を除いて無料で提供しています。

わたしは、一部の「お金がある人」だけが享受できる学びの場には興味が持てないんですよね。

それに、渋谷という「無料」という言葉から遠いイメージの街で、こうした活動をしていることに価値というか、美学のようなものを感じるんですよね。

ShibuyaUnivAbout
「見つける学び場」シブヤ大学のホームページから
八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

「市民大学」や「ソーシャル系大学」などと呼ばれる、地域住民やその場所に関係する人が「学びあう」、あるいは「学びを通じてソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を育むタイプの学校が、最近少しずつ増えてきている気がします。以前に少し調べたことがあるのですが、日本でも100年ほど前に市民大学の動きが本格化し、その後、繁栄衰退の波を繰り返しながら現在に至っているようです。
おれは何人かそういう取り組みを行なっている人たちを知っているけど、すべての授業を無料で行なっているというのはかなり珍しい気がします。そして、それはかなり難しいはず。だってこうしたものが無料提供されるということは、誰かがその費用を負担してくれているということだから。その辺りどうしているんだろう?
大澤

そうなんです。シブヤ大学は主に行政や企業との連携、それから個人の寄付で賄っています。

それから経費以外にも、授業を行う場所の提供を受けたり、授業料無料のコンセプトに賛同授業料無料のコンセプトに賛同いただき、少額の謝礼で先生役を引き受けていただいたりですね。

ただ、正直コロナでかなり苦しい思いをしました。わたしが2代目学長に就任してすぐコロナ禍となり、行政も企業も、対面で人が集まること自体に価値を置くシブヤ大学のような取り組みは後回しになってしまったと思います。

…仕方ないことですけどね。最近ようやく復調してきて、シブヤ大学としても改めてリアルにな空間で学びあう価値を再考しているところです。

我有

でも、コロナ後のこれからは、むしろ「関係性の大切さ」がもっと多くの人や組織に意識されていくようになるんじゃないですかね。渋谷は特に個性的な大都会だから、シブヤ大学の価値がますます高まりそうな気がします。

パチ

おれもこの前、ひさしぶりに授業に参加させてもらって、シブヤ大学の「開かれた大学」というコンセプトを改めて実感させてもらった気がしました。

「学校って本来そういうものだったんじゃないの?」って考えさせる力のある言葉だよね。そしてシンプルに楽しかった!

ところで、大澤さんも「ほんの4年前まではろくにシブヤ大学のことを知らずにいた」って言ってたけど、そんな人がどういう経緯で学長になったの?

大澤

まず、わたし中学生の頃から沖縄にハマっていて。いつか沖縄で働きたいってずっと思っていたんです。

いわゆる「沖縄病」ってやつですね(笑)。そんな想いを胸に高校を卒業して、大学進学直前のタイミングで3.11東日本大震災が起こりました。

大学生になってびっくりしたのが、「きっとみんな、高校とは違って社会的な話題とかもみんな話しているんだろうな」と思っていたのに、まったくそんなことはなかったことでした。

モヤモヤしたものを抱えつつも、そういうものなのかなぁと学生生活を送っていたんですが、途中でギャップイヤーを取ってイギリスに留学したんです。

そこで「ああ、ここでは社会的なトピックをみんな気軽に話している! まるで恋バナや週末にクラブに行く話をするかのように!」って衝撃を受けました。

その様子が、わたしのシブヤ大学へと繋がる原風景になっていますね。
帰国後は中学生時代からの夢を叶えるべく、沖縄に向かいました。

そこで卒論を書きながら現地での就職先を探し、「高校魅力化プロジェクト」という、教育を核に地域の活性化を進めていく取り組みに参加することになりました。

沖縄では今帰仁村で高校生が通う公営塾の立ち上げに関わり、3年目から塾長兼地域コーディネーターとして活動していました。

パチ

あれ? なんだか、Compathのやさいさん(安井早紀さん)の経歴と重なる部分ない?

我有

そうですよね。やさいさんもたしか、Compathを立ち上げる前、島根の海士町で高校魅力化プロジェクトの一員として活動していましたよね。

大澤

そうなんです! そんなご縁もあって、Compathの2人にはいつも仲良くしてもらっています。

シブヤ大学もCompathも目指している世界観が似ているし、若い女性2人から成るユニットが中心となって運営しているというところも同じなので、親和性が高いなあって思っていて。

八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

この後、大澤さんは、シブヤ大学という「学びの場」が人員募集をしているのを知り応募。トントン拍子に採用話しが進んだものの「2代目学長」としての採用だったことはあまり意識しておらず、最後になって「ええ!?」となったそうです。
とはいえ、大澤さん1人ではなく同時に入社した副学長(深澤さん)と二人三脚で、お互いの強み(大澤さんの「コンセプトメイキングや企画力」、深澤さんの「外部組織との折衝力やボランティアとのコミュニケーション」)を活かした役割分担ができるということもあり、学長という言葉の「重み」や「いかつさ」を感じつつも受け入れることができたそうです(とはいえ、「でも時間はかなりかかりましたね…」だそうです)。
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なんとこの日、Compathのもう1人のファウンダーかおるさん(遠又香、写真中央)と、シブヤ大学副学長の深澤まどかさん(写真右から2番目)が、偶然にも雑談場所のco-ba ebisuに一緒に出現! せっかくなのでみんなで写真に。
大澤

先代の学長(左京泰明さん)が「一人じゃなくて良いし、自分のやり方でいいんだよ」と言ってくれるのが大きいですね。それなら、わたしたちのやり方で、わたしたちのやりたいことをやっていこうと思えるようになりました。

パチ

学長として、シブヤ大学の魅力ってなんだと思います? ときどき授業に参加させてもらっているおれから見ると、授業のバラエティーさと心理的な参加に対する気軽さなんだよね。

やっぱり参加費無料だと、「全然知らないテーマだけど、なんか気になる」みたいなものでも参加しやすい。あ、それからシブヤ大学としての野望ってあったりしますか?

大澤

シブヤ大学の魅力ですか。

わたしがすごく好きなところは、偏りがないことですね。そしてこれはパチさんの質問への答えとしては少しズレますけど、シブヤ大学の授業とかイベントでは名刺交換が起きることが少ないっていうのもすごくいいなと思っているんです。

もちろん、名刺交換自体を悪いわけではないですよ。

ただ、シブヤ大学というオトナの学びの場でそれが起きないっていうのは、参加者が肩書きに関係なく、本当の自分自身として参加していることを象徴的に示していると思うんです。

10代の学生が60代で定年間際のサラリーマンの方とフラットな感じで話されているのとか、相手の肩書きに関係なく参加者たちが前のめりになって楽しく学びあっている光景を目にすると、本当にステキな場所だなって思いますね。

そういう場面がもっと日本全国に広がってほしいですね。渋谷から、オトナが前のめりに学んでいる場をもっとどんどん増やしていきたい。それが野望ですかね。

我有

すごく分かります! 私も大学生になって京都で暮らすようになるまで田舎育ちで、その後就職を機に新宿区へ引っ越してきた社会人1年目のとき、すごいフラストレーションを感じながら生活してたんです。

「ナナメの関係」っていうんですかね、会社以外のつながりが日常に全然存在していなかったんですよね。「今日も職場の人とだけしか会話せずに1日が終わってしまった…」って。

その後、渋谷でアーバンファーミングの活動があることを知り、参加するようになって同じテーマでつながれる人たちとの関係性が少しずつ増えていき、フラストも減っていきました。

大澤

そうなんですよね。もっと安心して、自分たちが本当に話し合いたいことを話し合える場であったり、もっと楽しみながらオトナが自分たちで学び合いができる場が必要だと思っています。

わたしがシブヤ大学の中で生まれたらいいなと思うのは、元々は学生として授業に参加した人が「わたしもやってみたい!」と思って、授業を企画するスタッフ側に回っていくような循環です。

授業に参加した人が「このテーマをもっと知りたい」「この魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい」って、授業を企画したり、当日の運営を手伝ったり、あるいは自分が先生になったり。

一市民が「自分のやりたい気持ち」に突き動かされ、授業を企画する自主講座のほうがおもしろいし、バラエティーにも富んだものになりますよね。

パチ

それはすごくステキだ! 授業の質や種類が良い方向に向かうのも間違いないし、自分がやりたいと思ったことが実現できる仕組みがある社会はステキだよ。

大澤

それから、ちょっと違うケースですが、関係性が細く長く続くのもシブヤ大学の特徴なのかもしれません。

先日も、「戦時下にあるウクライナのために何かしたい!」と居ても立ってもいられなくなったという、10年以上前のボランティアスタッフから連絡をもらいスタッフ内で勉強会グループが発足し、そこから戦争をテーマにした授業も生まれました。

八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

この後、「シブヤ大学の魅力」についていろいろと3人でディスカッションしたのですが、大澤さんが大事にしているという「中庸」というキーワードが、とてもシブヤ大学にピッタリだなと感じました。
「意識高い人ばかりじゃない」「先端技術や起業の話もあれば田植えを学ぶこともある」「会場もピカピカのファッションビルから地域の公民館まで」と、やっている内容もやり方も幅が広いし、団体として特定の考え方や嗜好性を強く押し出すこともない。ある意味において、それは「分かりづらい」という捉え方にもつながるものだけれど、だからこそどんな人も受容し、居心地の良い学びの場が生まれていくんじゃないかな、なんて思いました。
大澤さん自身も、イギリス、沖縄、そして渋谷でのこれまでの経験から、「どちらかに寄ることなく、間に入れる人の大切さ」を感じる場面も少なくなかったとか。
最後に、大澤さんの環境問題への関心を聞いてみました。
大澤

正直、わたし自身はあまり環境問題を自分ごととして的確に捉えられていないんですよね。もちろん大問題だとは分かっているものの…。

「脱炭素」も言葉としては理解しているけれど、「戦争」と同じくらい巨大で、手触り感がない言葉のままになっているというか…。どこから手を付ければいいのか分からない感じがあります。

我有

そうですよね。「自分たちの行動が一体どれだけの影響を与えられるのだろう?」とは、環境活動に取り組んでいる私自身も常に思いを巡らせてしまいます。

とはいえ行動しないという選択もあり得ないなと思っていて。渋谷関連ということでは、去年、Climate Clock(クライメートクロック)という気候変動アクションを個人的に応援していました。

大学生が中心になって、渋谷区長さんにも応援していただけて。シブヤ大学とも何かつながりを持ってご一緒できないかなって、今日思いました。

大澤

渋谷に実際に気候時計が置かれているんですね! 知らなかったです。シブヤ大学を名乗る身としては、早急にチェックしなくちゃですね。

たしかに、身の回りにこんなふうに環境問題に意識を向けさせるものがあることの意味って小さくないと思うし、それをきっかけに、わたしのような人たちが「自分が何を知りたいのか」に気づくことにもつながりそう。

我有

大澤さんのお話を聞いていて、脱炭素を推進する組織として、メンバーズや脱炭素DX研究所として、シブヤ大学と連携して寄附講座のようなものができたらいいなとも思いました。

今後、個人としてもプロボノやイベント企画などで、渋谷をフィールドに何かご一緒できたら嬉しいです。ぜひ、これからもよろしくお願いします。

パチ

そうだよね。組織としての持続可能性やソーシャル・インパクトを考えたら、スポンサーシップ的な関係の持ち方と、個人としての関係の持ち方と、両方で考えていきたいよね。

大澤さん、今日はありがとうございました。今後、おれも授業を受けるだけじゃなくて、ボランティア活動をしている組織と一緒に授業を贈る方法を考えてみますね。


次回は、デンマークから来日中の環境エンジニア/空気デザイナーの「マッキー」こと蒔田 智則(まきた とものり)さんと雑談予定です。

直接顔を合わせるのは2019年にデンマーク・コペンハーゲンに「幸福調査」に行ったとき以来かな? 楽しみ〜。

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ライター:

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計

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