窓の専門商社マテックス(東京・池袋)はサステナビリティ対応に真摯に取り組む会社。
同社が重点課題(マテリアリティ)を特定していく過程で大学生にヒアリングした模様をレポートする。
<対話会(2日目)に参加した学生達>
※本記事における学部学年は取材当時のものです。
トークテーマ:「自分ごと化」
マテックス社のマテリアリティの一つ、「自分ごと化」というキーワードに共感できますか?
君宮
共感しました。日本には「神頼み」みたいな言葉もあるくらい、「他の誰かがどうにかしてくれるだろう」という文化があります。でもそれでは何も変わらないし、問題の解決にはつながらない。そういう日本の文化を再考するという意味で、「自分ごと化」に着目して挑戦しようとする姿勢が面白いと感じました。
高橋
このキーワードを見て、環境問題でよく言われる「共通だが差異ある責任」という言葉を思い出しました。私はその言葉を知るまで、先進国の上から目線で環境問題を見ていたところがありました。でも先進国こそ、自身の工業発展のために環境問題の最大の原因を作り出してきたんですよね……。
佐々木
私は実体験から、このキーワードに共感しました。規模の小さい話ですが、中高の部活で問題が浮上したとき、少数のリーダーたちだけで解決しようとしても問題の原因や改善点を見いだせないままでした。というのも、部活内の大多数は問題を理解していないし、問題を知ろうとすら思っていませんでした。だから問題自体に気付かない。まずは「自分ごと」として知ろうとしなければ、問題解決はできません。
「自分ごと化」は共感度の高いテーマだったようです。マテックス社がこのテーマに取り組むことについて、納得感はありますか?
高橋
まだ自分の中で、「窓を扱うマテックス社」と「自分ごと化」の2つがうまく結びつきません。
辻
同感です。「自分ごと化」について理解が及んでいないせいかもしれません。
マテックス社は、「自分ごと化」をシンプルに考えています。「社会課題に向き合うときに自分を重ねて考えてみよう」「自分ならどう参画できるか考えてみよう」というメッセージと捉えてみてください。
君宮
子どもっぽい考え方で申し訳ないのですが、正直なところ、1つの企業が「自分ごと化しましょう」というメッセージを発信しても、あくまで社会の一部でしかないから、納得性が低いように思います。国の代表みたいな人から言われたら「じゃあ頑張ってみようか」となるかもしれないけど……。
どういう表現だと、「窓を扱うマテックス社が『自分ごと化』を社会課題として捉えている」ことに納得性が出てくると思いますか?
高橋
窓というか、住環境に関連してこんな話を聞いたことがあります。海面上昇によって住環境が脅かされているオランダでは、住居を海抜面に合わせて上下させられる構造の住宅を作る取り組みが始まっているそうです。
海面上昇という環境問題を防ごうとすると、「ダムを作って」「堤防を作って」というアプローチになると思うのですが、それって自分1人ではどうしようもない。そうではなく、「あなたの家が沈むかもしれません」と言われたときに、住人としていかにその問題と共存していくかというアプローチで考えると、「上下する仕組みの家を作ろう」「高台に街を作ろう」という発想になります。こういう発想の転換に、もしかしたら窓と「自分ごと化」を結びつけるヒントがあるのかもしれません。
トークテーマ:「依(よりどころ)」
「依(よりどころ)」というキーワードに共感できますか?
佐々木
共感できました。衣食住の「住」ではなくむしろ「衣」を転じた「依」に視線を向けているところが面白かったです。窓は暮らし全体に関わっているので、「よりどころ」という観点に強く共感しました。
天沼
私は「よりどころ」のイメージがピンときていなくて、まだ共感できません。
「よりどころ」とは、心の支えになる人や居場所だったり、刺激をくれる場所だったり、人によっていろいろな形があると思います。マテックス社がこういったテーマに取り組むことについて、納得性はありますか?
辻
あります。よりどころが多様であるように、我々と窓との関わり方も多様です。例えば自分にとっては、夏暑すぎて外に出ることがままならないようなときも、友人たちと気軽に集まって喋れるだけの場所があれば、そこがよりどころになります。窓を作っているマテックス社は、窓を通していろいろな形のよりどころやサードプレイスを作れるでしょうから、そういう意味で納得性の高いキーワードだと感じました。
なるほど。サードプレイスとなる場所を作るという意味でも、ステークホルダーの皆さんと心の支えになる関係性を育むという意味でも、マテックス社にとって「よりどころ」は重要なキーワードといえそうです。
トークテーマ:「脱炭素」
佐々木
CO2の排出量削減に貢献していることは分かりましたが、まだ理解が不十分です。
高橋
私はそもそも、世界が直面している「脱炭素」という課題には、企業の社会的責任として規模や業種を問わず全企業が取り組むべきだと思っています。日本では従来から日本が得意としてきた空気汚染対策や水問題などに目が行きがちです。しかし、脱炭素問題ではそれよりも広範囲での対策が求められます。窓や住居といった電力消費に近いところで影響をもたらす製品を扱っているからこそ、脱炭素に第一線で取り組めるという印象を持ちました。
マテックス社が「脱炭素」に取り組むことについて、納得性はありますか?
辻
あります。窓は社会のいろんなところにある存在なので、その分、社会に及ぼす影響も大きいと思うからです。
天沼
脱炭素の取り組みをしっかり行っている会社は、社会に対して責任を持っているいい会社だなと感じます。「長く続く企業ってどういう企業だろう?」と考えたときに、社会的責任をきちんと果たしている企業はやはり長く続くと思うので、就職先を考えるときの要素のひとつにもなりますね。
トークテーマ:「経済成長至上主義からの脱却」
「経済成長至上主義からの脱却」というキーワードに共感できますか?
君宮
うーん……僕は経営学部で「利益を生むにはどういうことをすれば良いか」という観点で学んできたので、会社が商業至上主義から脱却するなんて難しいんじゃないかなと思います。なかには、いろんな仕事を自社で内製化することで低価格を実現しているような企業もあるかもしれませんが。
高橋
私はこのキーワードに共感できました。これまでのアルバイト経験や就職活動を振り返ると、企業の規模や歴史の長さに関わらず、地球環境や働く人、周囲の地域社会やお客様のことを考えながらも、ちゃんと利益を生み出している企業は確実にあります。環境問題にしっかり取り組んでいる企業は、人も大切にしているという相関関係も見えてきました。君官さんがおっしゃるように、「脱却」までは難しいのかもしれないけれど、少なくともマインドセットを見直すことは全ての企業ができるんじゃないかな。
マテックス社が「経済成長至上主義からの脱却」に取り組むことについて、納得性はありますか?
高橋
あります。日本は地震の多い国でもありますし、住環境に関わる企業として、「いかに安く」ばかり考えていると安心感を提供できないと思います。
天沼
私も納得性があると思います。よりどころにもつながる話で、やはりよりどころを提供する会社が経済成長至上主義だと「なんか違うな」と感じますよね。環境や人を大切にするからこそ、よりどころになれると思うので、マテックス社と「経済成長至上主義からの脱却」はしっくりきましたし、それをテーマとして掲げている会社は素敵だなと思います。
最も共感度・納得性の高いテーマは?
これまで4つのテーマについて討論してきましたが、どのテーマに最も共感しましたか?
君宮
僕は「自分ごと化」に一番共感しました。僕自身、政府や他の誰かに人任せにしていたところがあったので、「他人ごと」になっていることに気付かされたこと自体にグッときました。
佐々木
私も「自分ごと化」が印象的でした。最初は「窓の会社」と「自分ごと化」を関連づけるのが難しかったのですが、話を聞くうちに、窓の会社かどうかに関わらず、「組織の中にいる1人1人が考えよう」という姿勢の重要性を示しているのだと分かってきました。また、このテーマは他の3つのテーマとも密接に関係するテーマだと思いますし、自分がいろんなことを考えるうえでも「自分ごと化」して考えるのが大事だと実感したので、共感度の高いテーマでした。
辻
僕も「自分ごと化」ですね。話を聞く前は曖昧でしたけど、具体的な何かというより「問題に取り組む姿勢」のことなんだとだんだん分かってきました。「自分も問題の一部」と捉えて物事に臨む意識が大事なんだと学びました。
天沼
私は「よりどころ」に焦点をあてた「依」に共感しました。窓って生活に絶対必要なだけでなくて、インテリアの側面もありますし、それこそ「よりどころ」という要素があるなと。そういう意味で、最も心に響いたテーマでした。
高橋
私は「経済成長至上主義からの脱却」が一番共感できました。就職活動をする中で、何を重要視するか考えたときに、「この企業は社員のことをどう見ていて、自分はどういう働き方ができるか」を軸に考えてきました。それを表す言葉としてこれまで「社会保障」という言葉を使ってきたのですが、あまりしっくりきていなくて……。今回、「経済成長至上主義からの脱却」というワードを知って、これが一番近い言葉だったと、大きな気付きが得られました。
では、どのテーマが最も納得性が高いと感じましたか?
佐々木
「脱炭素」ですね。環境問題が私にとって分かりやすいテーマだったのと、やはり住環境に関わる会社なので、脱炭素への取り組みにマッチすると思いました。
高橋
同感です。住環境に関わる企業として、脱炭素との結びつきが強いと思いましたので、マテックス社と脱炭素は親和性が高いと感じました。
辻
自分にとっては、やはり「自分ごと化」の納得性が高かったです。脱炭素の取り組みもそうですし、マテックス社は何事にも「自分ごと化」という姿勢を貫いておられると感じられたので、すごくマッチするテーマだと思いました。
それでは、本日の討論の内容を踏まえて、マテックス社のマテリアリティを特定したいと思います。貴重なご意見をありがとうございました。
SDGsツヅケルのメディアでも今回の取り組みが紹介されています。
是非、ご一読ください。
【企業と学生の対話会レポート】企業の取り組み、どこまで共感?「マテリアリティ」策定とSDGsへの貢献
◎会社概要
マテックス株式会社
所在地: 〒170-0012 東京都豊島区上池袋2-14-11(本社)
TEL:03-3916-1231
資本金:1億円
URL:https://www.matex-glass.co.jp/