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横浜商工株式会社

https://ysk-ap.co.jp/

〒220-0023 神奈川県横浜市西区平沼1-40-17 モンテベルデ横浜202

045-471-9921(部品本部)

現場の「困った」を「ありがとう」に。横浜商工株式会社が創業90年で踏み出した環境事業への挑戦

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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横浜商工株式会社
画像提供:横浜商工株式会社、以下同

神奈川県内有数の規模を誇る、創業90年の老舗自動車部品商。横浜商工株式会社がいま向き合っているのは、部品の供給にとどまらない、水道インフラの老朽化や脱炭素といった社会課題である。

同社は2025年、「環境事業部」を立ち上げ、メーカーではなく「目利きの商社」という独自の立ち位置でその解決に挑み始めた。

 

老いる水道インフラと、現場で変わり始めた「お困りごと」

蛇口をひねれば安全な水が出る。日本では当たり前とされてきたこの日常が、静かに揺らぎ始めている。全国に張り巡らされた水道管の総延長は約74万キロメートルにのぼるが、その多くは高度経済成長期に一斉に敷設され、いま更新の時期を迎えている。国土交通省の資料によると、法定耐用年数である40年を超えた管路の割合は2022年時点で約23.6パーセントに達した。一方で同じ年に更新された割合はわずか0.64パーセントにとどまり、このペースが続けば今後20年で経年化率は約69パーセントまで上昇すると試算されている。

老朽化のリスクは、すでに各地で表面化している。2025年1月には埼玉県八潮市で大規模な道路陥没事故が発生し、下水道管の破損が原因として報じられた。さかのぼれば2021年10月には、和歌山市で水管橋が崩落し、市内の約6万戸が断水する事態も起きている。私たちが意識しないところで、暮らしと産業を同時に支える基盤が確実に老いつつある。

水と並んで、もう一つの地殻変動が進んでいるのが自動車業界である。CASEと呼ばれる技術潮流やEV化、IT革新が重なり、「100年に一度」とも言われる変革期を迎えている。長年この業界を支えてきた事業者にとって、これは事業の前提そのものが書き換えられる事態にほかならない。

神奈川県内で整備工場やカーディーラーの現場に伴走してきた横浜商工は、近年、現場から寄せられる「お困りごと」の質が変わってきたことを感じていたという。カーボンニュートラルへの対応を求められても何から着手すべきか分からない。異常気象による現場の酷暑で、整備士のなり手が減っている。災害リスクや水道インフラの老朽化を前に、事業をどう継続していくか不安が拭えない。いずれも、単なる部品の不足とは次元の異なる、地域社会の持続可能性に関わる課題である。横浜商工が環境事業へと舵を切る背景には、こうした現場の声の変化があった。

 

創業90年、自動車業界の「かかりつけ医」が見据えた転換点

横浜商工の歴史は、自動車がまだ珍しかった1936年、小さな個人商店として始まった。そこから時代の波を越え、いまでは売上高約46億円、従業員約80名、神奈川県内に15の拠点を構えるまでに成長している。県内有数の規模を持つ自動車部品商として、地域の整備業界を長く支えてきた会社である。

その成長を支えてきたものを、同社は「お節介営業」と表現する。顧客のニーズに応えたい、困りごとを解消したいという思いで現場に踏み込み、泥臭く伴走する姿勢である。同社はこれを、整備工場にとっての「かかりつけ医」のような存在になることだと説明する。部品を届けるだけでなく、現場の事情を知り尽くした相談相手として関係を積み重ねてきたことが、地域での信頼につながってきた。

しかし、その足場となる自動車業界そのものが、いま大きく揺らいでいる。エンジンから電動へという駆動方式の転換は、扱う部品の構成を変え、整備の手法を変え、ひいては部品商という業態の存在意義にまで及ぶ。日々現場に通うなかで顧客の悩みの質が変わってきたことは、横浜商工にとって、自社の将来を映す鏡でもあった。

この変化に、横浜商工は守りではなく攻めで応じた。2025年4月、自動車部品の事業を継承しながら、新たに「環境事業部」を設立する。脱炭素や防災といった社会課題を、商機としてではなく、現場に最も近い立場だからこそ担うべき役割として引き受けた格好である。部品商として築いてきた現場との距離の近さを、そのまま新しい領域へ持ち込もうとする判断だった。

 

なぜメーカーではなく「目利きの商社」だったのか

環境事業に乗り出すとき、横浜商工はひとつの分かれ道に立っていた。自ら環境機器をつくるメーカーになるのか、それとも世界の技術のなかから現場に必要なものを選び抜く立場に徹するのか。同社が選んだのは後者、すなわち「目利き」の販売代理店という道だった。

この選択の理由を、同社はこう整理する。仮に自社で製品を開発するメーカーになれば、提案できるのは自社製品に限られてしまう。しかし現場が抱える課題は一様ではなく、必要な解決策もその都度異なる。自社開発に縛られないからこそ、フラットな視点で世界の優れた技術を選び、それらを組み合わせて現場に合った答えを示せる。同社はそこに、部品商として積み重ねてきた強みが生きると考えている。

実際、横浜商工が長年果たしてきたのは、メーカーと現場のあいだに立ち、無数の製品のなかから最適なものを見極めて届ける役割だった。どの部品が、どの現場の、どんな悩みに効くのか。その判断を支える「目利き」の力は、扱う対象が部品から環境技術に変わっても、そのまま応用が利く。環境事業を商社の立場で手がけるという判断は、新規参入というよりも、培ってきた本業の延長線上にあるものと言える。

同社は、環境に良いものをただ右から左へ流すのではなく、現場の「困った」を「ありがとう」に変えることこそ自社の役割だとしている。何を選ぶかだけでなく、なぜそれが目の前の現場に必要なのかまで踏み込んで伴走する。その姿勢は、これまで地域の整備業界との間で築いてきた信頼関係の延長にあり、横浜商工が環境事業をどう捉えているかを端的に表している。

 

2つの解決策が示すもの――脱炭素の現場と、インフラに頼らない水

横浜商工が「目利き」として選び抜いたのは、性質の異なる2つの技術だった。一つは現場の脱炭素に関わるもの、もう一つは水のインフラに関わるものである。どちらも、地球環境への貢献にとどまらず、そこで働く人の安全や地域の備えにも関わる点に、同社の選定の視点がうかがえる。

一つ目が、リチウムイオン電池を搭載したEVフォークリフトである。物流や整備の現場で使われるフォークリフトの動力を電動に切り替えることは、脱炭素の文脈で小さくない意味を持つ。国土交通省によると、2024年度の日本のCO2排出量のうち運輸部門は19.3パーセントを占め、その大半を自動車が排出している。荷役の現場で日々稼働する車両を排気ガスの出ない電動へ替えることは、この構造に働きかける一手にあたる。

横浜商工株式会社

同社が選んだのは、BYD JAPANと斗山ボブキャットジャパンが手がけるリチウムイオンEVフォークリフトである。メーカーによれば、排気ガスを出さないため屋内の空気を汚さず、現場で働く人の健康にも資する。さらに従来の鉛バッテリー車と比べて稼働時間は2倍に伸び、充電回数は半分に減り、補水作業も不要になるという。横浜商工は、こうした性能を持つ技術を正規代理店として現場に導入する支援を担っている。自動車業界の変革を肌で感じてきた会社が、その知見を物流現場の脱炭素へ応用した形である。

もう一つが、空気から水をつくる分散型水源システム「無限水」である。製造元はENELL株式会社で、横浜商工は正規代理販売店としてこれを扱う。冒頭で触れた水道インフラの老朽化に、製品の側から応える技術と位置づけられている。同社によると、配管も塩素も不要で、電源さえあれば空気中の水分から1日あたり最大33リットルの飲料水を生成できる。逆浸透膜フィルターを備え、近年各地で問題となっているPFAS(有機フッ素化合物)への対応も図られているという。

無限水は2025年に「NIPPON INNOVATION AWARD」でグランプリを受賞し、東京都や群馬県富岡市、北海道美唄市などの自治体でも、防災と脱炭素を同時に実現する設備として導入が進んでいるという。導入企業からは、災害に備えてペットボトルを大量に備蓄する負担が減り、事業継続の備えとして安心が得られたという声も寄せられているとされる。

2つの技術に通底するのは、横浜商工がメーカーから示された性能をそのまま伝えているのではなく、現場のどの課題に効くのかという視点で選び取っている点である。脱炭素も、水の確保も、突き詰めれば現場で働く人と地域の暮らしを守ることに行き着く。何を選ぶかにその会社の姿勢が表れるとすれば、この2つの選択は、横浜商工が社会課題のどこに照準を合わせているかを物語っている。

 

変化を機会に変える、6代目社長の即応力

横浜商工が変化を恐れずに新しい領域へ踏み出せる背景には、その舵を取る経営者の質がある。2021年に第6代社長へ就任した岩﨑智史氏は、「挑戦を軸にした経営」を掲げ、自ら先頭に立って改革を進めてきた人物である。

その姿勢を象徴するのが、不測の事態への向き合い方である。社長就任の初日、同業の老舗部品商が突然倒産し、取引先の整備工場から部品供給を肩代わりしてほしいという問い合わせが朝から殺到した。岩﨑氏は入社式の合間を縫って現場へ直行し、取引条件を即座に整えて、困っている整備工場へ責任をもって部品を届けると約束したという。翌年にはグループ会社との経営統合という難局にも、全社員と面談を重ねて一人ひとりにビジョンを語りながら向き合い、組織をまとめ上げた。

こうした即応力は、もともと現場で培われたものだった。2011年、東日本大震災でブレーキ部品の供給が止まったとき、当時の岩﨑氏は他メーカーに協力を仰いで代替品を確保し、無料点検キャンペーンという形で顧客の安全に応えた。窮地を機会に変えるその発想と行動力が、社内で次世代のリーダーと目されるきっかけになったという。プロ野球選手というステージで一度挫折を経験し、回り道を経てこの会社にたどり着いた軌跡も、変化のなかで道を見出す姿勢と無縁ではないだろう。

EVフォークリフトや無限水をいち早く手がけ、部品商という業態の枠を自ら押し広げてきたのも、こうした経営者の質があってのことである。変化を脅威ではなく機会として捉える視点は、環境事業という新しい挑戦の根にも、確かに通じている。

 

変わるものと、変わらないもの

水道インフラの老朽化も、自動車業界の構造変化も、私たちの暮らしのすぐ足元で進む、答えの定まらない問いである。横浜商工はその問いに、自らが答えそのものになるのではなく、世界中から最適な答えを見つけ出して現場へ届けるという立ち位置で向き合っている。創業から90年、神奈川の地で部品を通じて現場の「困った」に応え続けてきた会社が、いま水と脱炭素という新しい「困った」に手を伸ばす。扱うものが変わっても、現場の最も近くで伴走するという姿勢は変わらない。変化を恐れず挑むその歩みは、地域とともに持続可能な未来をつくる、ひとつの確かな試みである。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

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