
群馬県伊勢崎市田中島町の住宅で、小学1年生の長女(6)と保育園児の長男(3)が死亡し、群馬県警は7月6日、長女を殺害した疑いで父親の会社員、井上敏典容疑者(42)を殺人容疑で逮捕した。長男についても殺人容疑で調べを進めている。
母親が発見し通報、父親である容疑者は不在
読売新聞などの報道によると、5日午後8時5分ごろ、仕事を終えて帰宅した母親が2階の部屋で布団に倒れている2人を見つけ、「子どもが倒れている」と119番通報した。井上容疑者はその時自宅におらず、約30分後に伊勢崎署へ自ら出頭した。2人の首には絞められたような痕があり、遺体の近くには容疑者のものとみられるネクタイ数本があった。容疑者は「2人の首をネクタイなどで絞めて殺した」と供述し、容疑を認めているという。事件当日、容疑者は仕事が休みだった。
捜査関係者によると、容疑者は動機について「自分に病気があり、将来が不安になった」という趣旨の説明をしているという。FNNの報道では、この家庭についてトラブルの通報などは確認されておらず、近隣住民も取材に「普通の家族だった」と語っている。
「家族の将来を悲観して」という動機の危うさ
「自分の病気」「家族の将来への不安」を理由に親が子の命を奪うという構図は、これまでも繰り返し起きてきた。病気の告知や経済的な行き詰まりに直面した親が、「自分がいなくなったら家族が困る」「子どもを残して逝けない」という思考に陥り、子どもを道連れにしようとする。いわゆる「無理心中」や、その未遂形態としての子殺しである。
言うまでもなく、子どもの命は親のものではない。6歳の女の子と3歳の男の子には、それぞれにこれから続くはずの人生があった。
「普通の家族」の内側で起きたこと
今回の家族は、周囲から「普通の家族」に見えており、外部に何のシグナルも発せられなかった。トラブルの通報もなく、行政や地域が介入する接点は事前にはなかったとみられる。
健康不安や将来への悲観は、誰の身にも起こり得る。問題は、それを一人で抱え込んだとき、思考が「家族ごと終わらせる」という誤った出口へ向かってしまうことだ。がん相談支援センターのような病気に伴う不安の相談窓口、自治体や民間の生活・こころの相談窓口など、外部に悩みを開くための仕組みは存在する。それでも届かなかったという事実を、社会の側の課題として考える必要がある。
病気や将来への不安を抱えたとき、家族だけで抱え込む前に外部へ相談する窓口はある。自治体のこころの健康相談、精神保健福祉センター、医療機関の相談窓口などが代表例だ。がんなどの病気であれば、全国のがん診療連携拠点病院などに設けられているがん相談支援センターも利用できる。
群馬県警は長男の死亡についても関連を調べており、事件の詳しい経緯は今後の捜査で明らかにされる。



