
専門家がスーパーエルニーニョ級の可能性を指摘する中、日本では記録的猛暑や台風による大雨が懸念されている。異常気象が日常化する時代、過去の災害を振り返りながら備えを考える。
エルニーニョ現象の発生状況とスーパー級となる理由
2026年5月の気象庁エルニーニョ監視速報によると、太平洋赤道域東部の海面水温が平年を大幅に上回り、春からエルニーニョ現象が発生している。米海洋大気局(NOAA)も発生確率を高く見積もり、秋から冬にかけて継続する可能性を96パーセントとする。
スーパーエルニーニョと呼ばれる理由は、海面水温偏差が2℃以上、場合によっては2.5℃を超える強い状態になる可能性が高いためだ。過去の1997年から1998年や2015年から2016年の事例を超える規模になるとの予測もある。NOAAのモデルでは非常に強い現象となる確率が25パーセントから37パーセントに上昇した。
貿易風の弱まりにより西部の暖水が東へ移動し、正のフィードバックが働くメカニズムが発達を加速させる。地球温暖化による海洋熱蓄積がこれに拍車をかけ、従来の予測を超える強さになるとの見方が強まっている。
ラニーニャ現象との違い
エルニーニョ現象は太平洋東部(ペルー沖)の海面水温が平年より高くなる。
一方、ラニーニャ現象は同海域で水温が低くなるほぼ反対の状態だ。貿易風の強弱が鍵となる。
エルニーニョ時は風が弱まり暖水が東へ広がるのに対し、ラニーニャ時は風が強まり東部の冷水湧昇が活発化する。
日本への影響も対照的だ。エルニーニョ発生時は本来冷夏・暖冬傾向だが、最近は温暖化の影響で猛暑となるケースが増えている。
ラニーニャ時は猛暑・寒冬傾向が強い。台風ではエルニーニョで寿命が長く動きが遅くなりやすく、ラニーニャで接近数が増えやすい。
両者はENSO(エルニーニョ・南方振動)という同じシステムの表裏で、エルニーニョの後にラニーニャに移行しやすい。
2年前の日本で起きた災害事例
2023年から2024年にかけて発生した前回のエルニーニョ現象では、典型的な冷夏傾向が現れず記録的猛暑となった。
2024年夏の全国平均気温は観測史上最高を更新した。熱中症による救急搬送者は約9万7600人で過去最多、死亡者も2000人を超えた。
特に高齢者の自宅内発生が目立ち猛暑日の増加により電力需要が急増し、農業では品質低下や不作の懸念も生じた。台風被害も深刻化した。8月末から9月初めの台風10号は動きが遅く、西日本から東日本に記録的な大雨をもたらした。総雨量900ミリを超える地点があり、土砂災害や河川氾濫が発生。
死者・負傷者が相次ぎ、能登半島地震の被災地にも追い打ちをかけた。
北日本では7月下旬の大雨で線状降水帯による洪水・土砂災害が相次いだ。これらはエルニーニョの残存熱と温暖化の複合効果によるものと分析されている。
異常気象の常態化と地球温暖化の影響
かつて異常気象と呼ばれた猛暑や豪雨は、もはや珍しくない。
エルニーニョ現象が発生しても冷夏にならず猛暑となる事例が増え、気候変動が自然変動を上書きしている実態が浮き彫りだ。世界気象機関(WMO)も、温暖化による海洋熱増加がENSOの極端化を促すと警告する。
海面水温の上昇は大気中の水蒸気量を増やし、集中豪雨や熱波を激化させる。異常気象が常態化するニューノーマル時代に入ったとの指摘が専門家から相次ぐ。
日本では40℃超えの日が当たり前になるリスクが高まり、台風のノロノロ化による長期大雨も懸念される。
農業や電力、健康被害への影響は避けられない。
今後の防災対策と備え
2026年夏は全国的に高温が予想される。
熱中症対策として室内温度管理と水分補給を徹底し、高齢者や屋外作業者の見守りを強化する必要がある。
豪雨・台風対策ではハザードマップ確認、避難経路の再確認、非常持ち出し袋の準備が急務だ。
農業関係者は品種選定や灌漑設備の見直しを、企業は電力需給計画の策定を進めるべきだ。
気象庁や自治体の最新情報をこまめにチェックし、早期警戒システムを活用したい。個人・社会全体でレジリエンス(強靭性)を高めることが、異常気象時代を生き抜く鍵となる。



