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告発者はクビで不正認定の教授は出世?京大・小田裕香子教授「論文改ざん」騒動、疑問が残る大学側の対応

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京都大学不正
京都大学における研究活動上の不正行為に係る調査結果についてより

正義の告発をした若手研究者が職場を追われ、研究活動上の不正行為が認定された教授が栄転を果たす。そんな対照的な事態が日本を代表する最高学府・京都大学で起き、現在ネット上で波紋を広げている。

事の発端は、スローニュースの報道だ。京都大学の研究室で発覚した「論文のデータ改ざん」を内部告発した若手研究員が、その直後に雇い止めの通知を受けたという。

 

一方で、不正を指摘された側の教員は、なんと調査の最中に准教授から教授へと出世を遂げていた。この構図に対し、なぜ告発者が不利益を被り、不正をした側が守られるのかと疑問の声が殺到している。

本記事では、報道を知ってさらに深堀りしたい読者のために、事件の数奇な経緯と、世間を驚かせている京都大学の調査結果、そして渦中の小田裕香子教授の素顔について紐解いていく。

栄光への影?「JIP論文」の追試と告発者との軋轢

 

事件の舞台となったのは、2021年に米科学誌に発表された論文である。この論文は、上皮組織の細胞同士の接着を誘導する「JIP(ジップ)」と呼ばれるペプチドの画期的な機能を発見したとするもので、当時の学界で高く評価された。しかし2023年の秋、小田氏の研究室に所属し、論文の共著者でもあった若手研究員(A氏)が、このJIPの実験の追試を試みたところ、細胞間接着は誘導されたように見えているだけではないかとの疑念が生じ、論文のグラフ作成時にデータが不自然に削除されていることに気がついた。

A氏がこの不審な点を小田氏本人に指摘すると、小田氏は「Aさんはラボを潰したいですか」「少額であれば研究させてあげますよ」と発言したとされている。そして翌日からA氏と直接のコミュニケーションを取らなくなったという。

もはや当事者間での解決は不可能と悟ったA氏は、2023年12月4日に京都大学の窓口へ研究活動上の不正行為に関する通報を行った。

 

告発からわずか3ヶ月…雇い止めの通知と教授への昇進

ここからの大学側の動きが不可解に映る。告発からわずか約3ヶ月後の2024年2月末、A氏は大学側から雇い止めを通知されてしまう。通報直後からプロジェクトを事前の相談なしに別の研究員に引き継がれるなど、厳しい環境に置かれたA氏は、そのままCiRAを退職することとなった。

その一方で、不正を通報されていた小田氏は、京大が調査委員会を設置し本調査を開始した直後である2024年4月1日に、生命科学研究科の教授へと昇進を果たしているのだ。

炎上の火種は京大の報告書。「育児の事情」は不正の理由となるか?

 

さらに議論を呼んだのが、京都大学が公表した調査報告書の内容である。この報告書では、対象論文の図(Figure 2A, 2B)について、明確に研究活動上の不正行為である「改ざん」があったと認定している。しかし、その不正が起きた理由や大学側の結論には、異例とも言える内容が含まれていた。

報告書は、小田氏が1回目と2回目の実験条件が同一だと思い込んだ状態で撮影を行い、共著者の実験ノートを十分に確認することなく思い込みで論文を執筆したと説明している。さらに、不正に関与した背景事情として、小田氏が当時多数の実験を並行して進めていたことに加え、育児による時間的制約から物理的にも余裕を欠いた状態にあったと公式文書に明記しているのだ。

そして、改ざんを認定しておきながら、その実験結果は概ね当該分野で再現性があると見なされており、論文の結論に関わるものではないため、研究の進展への影響は低いと判断していると結論づけた点である。論文の撤回すら求めず、同誌に論文訂正を申請するよう勧告する予定にとどめるという。「結論に影響がないから問題は小さい」とするようなこの判断には、多くの研究者から厳しい視線が注がれている。

 

「最悪のメッセージを発信した」現役大学教授が鳴らす警鐘

今回の京都大学の異例とも言える対応について、他大学で研究室を主宰する現役の国立大学教授は、匿名を条件に次のように苦言を呈した。

「報道された内容が事実だと仮定すると、大学人として自らを見つめ直した方がいい。育児による多忙を改ざんの情状酌量の理由に挙げるのは前代未聞であり、日夜真面目に育児と研究を両立させている多くの研究者への冒涜になりかねません。また、『結論に影響がないから問題ない』という論理も学術的に危険です。意図的であれ過失であれ、途中のデータが不自然に操作されている以上、その論文の信頼性は揺らぎます。さらに問題なのは、勇気を持って内部告発をした若手研究者が実質的に研究室を追い出されている点です。これでは『不正を見つけても黙っていた方が身のためだ』という最悪のメッセージを学界全体に発信することになり、大学の自浄作用が働かなくなってしまいます」

専門家からもこのように強い懸念が示されており、組織としてのコンプライアンス感覚が問われている。

 

数億円を動かす「スター研究者」と、日本の学界が抱える課題

ここまで大学組織に擁護され、数億円単位の公的研究費を動かす小田裕香子教授とは、一体どのような人物なのか。

彼女は京都大学農学部を卒業後、同大学院で博士号を取得し、細胞生物学の分野で著名な研究室を渡り歩いてきた生粋のエリート研究者である。前述のJIP論文の発表後、優れた女性研究者に贈られる「京都大学たちばな賞」を受賞し、日本医療研究開発機構などの狭き門である公的研究費を次々と獲得してきた。民間財団からの助成金も含めれば、数億円規模の資金を引っ張ってくるスター研究者として、学内で確固たる地位を築いていた。

 

しかし、不都合な真実を指摘した若手研究者との間で軋轢を生み、結果として研究室から去らせる形となったことには、批判の声も上がっている。多額の税金が投入される科学研究の場において、データの改ざんは研究の根幹を揺るがす行為である。不正をただそうとした者が不利益を被り、改ざんを行った者が順調にキャリアを重ねる。この最高学府で起きた波紋を呼ぶ事件は、日本の学術界が抱える重い課題を私たちに突きつけている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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