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手書き義務の遺言がスマホ作成可能に 民法改正案が閣議決定 押印廃止で負担軽減へ

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「遺言」がスマホで作成可能
政府は2026年4月3日、手書きが義務づけられていた自筆証書遺言の負担を大幅に軽減する民法改正案を閣議決定した。パソコンやスマートフォンで遺言本文を作成できる新たな方式「保管証書遺言」を創設し、押印要件も廃止する。高齢化社会の進展に伴い、遺言作成を促進し、相続トラブル防止を図るのが狙いだ。施行は成立後、数ヶ月から1年程度後と見込まれる。
 

現行制度の課題と改正の背景

現行の自筆証書遺言は、民法968条に基づき全文、日付、氏名を遺言者本人が手書きし、押印する必要がある。財産目録のみパソコン作成が認められているが、本文の手書き義務が特に高齢者にとって大きな負担となっていた。

手が震える、視力が低下しているといった理由で作成を諦めるケースも少なくなく、遺言全体の利用率を低く抑える要因の一つとなっていた。法務局での自筆証書遺言保管制度は2020年から始まっているが、作成段階の手書き要件は変わらず、紛失や改ざんのリスクも指摘されていた。

こうした中、法制審議会で2024年から議論が進められ、2026年1月に要綱案がまとまり、2月に答申された。政府はこれを受け、デジタル技術を活用した遺言制度の近代化を進める方針を明確にした。背景には、65歳以上人口の増加や単身高齢者の拡大、所有者不明土地問題の解決に向けた相続手続きの円滑化がある。改正案は、自筆証書遺言の方式を維持しつつ、新たな選択肢を追加する形でバランスを取っている。

公正証書遺言については、すでに2025年10月からデジタル化が進んでおり、全体として遺言制度のアクセシビリティ向上を目指す内容だ。

 

保管証書遺言の創設と作成手続き

改正の目玉は「保管証書遺言」の新設である。この方式では、パソコンやスマートフォンで遺言の全文を作成可能となる。データ形式(電磁的記録)またはそれを印刷した書面のいずれかで、法務局に保管を申請する。具体的な流れは以下の通りだ。

まず、自宅などで遺言文を作成する。Wordなどのワープロソフトや専用アプリを使い、タイピングで本文、日付、氏名を入力できる。次に、法務局に対し、オンライン、郵送、または持参で保管申請を行う。申請時には本人確認が行われ、遺言書保管官の前で遺言の全文を声に出して読み上げる(口述)ことが必須となる。この確認は対面またはウェブ会議(職員が認めた場合)で実施され、なりすましや強要を防ぐ仕組みだ。

口がきけない人の場合は通訳や自書で代替可能で、財産目録については口述を省略できる特則もある。保管が完了すると、遺言は法務局で厳格に管理される。死亡後に相続人が閲覧・利用する際の利便性も高まる。自筆証書遺言についても、オンラインでの保管申請が可能になる見込みだ。手続き全体のデジタル化により、従来の対面中心からリモート対応への移行が進む。

 

押印廃止と方式要件の緩和

もう一つの大きな変更は、押印要件の全面廃止である。自筆証書遺言では全文自書に加え押印が必須だったが、これを撤廃し、氏名の自書(署名)をより重視する。財産目録の各ページへの押印や、訂正時の押印も不要となる。

秘密証書遺言や特別方式の遺言(死亡危急時など)についても、押印が廃止される。この変更の理由は、行政手続き全体での押印文化の見直しと連動している。署名だけで遺言者の同一性と真意を十分担保できるとの判断だ。押印を紛失したり、印鑑登録が面倒だったりする高齢者にとって、作成のハードルがさらに下がる効果が期待される。ただし、署名が明確でない場合の有効性判断については、裁判所での個別判断が増える可能性もある。

 

メリットと利用促進の期待

この改正によるメリットは多岐にわたる。まず、手書きが苦手な人や長文を作成する人にとって負担が劇的に軽減される。スマホでサクサク入力し、修正も容易だ。高齢者や障害を持つ人でも、自宅で気軽に遺言を準備できる環境が整う。

次に、紛失・改ざんリスクの低下が挙げられる。法務局保管により、紙の遺言書のように自宅で発見されない、または隠される心配が大幅に減る。検索性も向上し、相続開始時の手続きがスムーズになる。全体として、遺言作成者の増加が見込まれ、相続紛争の防止や円滑な財産承継に寄与するだろう。成年後見制度の見直し(途中終了可能など)も同時に閣議決定されており、認知症対策と遺言制度の連携が強化される。

高齢化社会のニーズに合った「オーダーメード型」支援が進む点も評価される。

 

注意点と今後の課題

便利になる一方で、注意すべき点もある。保管証書遺言の場合、全文の口述確認が必須のため、発声や視力に不安がある人は負担を感じる可能性がある。

ウェブ会議は条件付きで、対面を原則とする場合もある。手数料や法務局の体制整備も今後の詳細次第だ。また、デジタル特有のリスクとして、ハッキングやデータ改ざんの懸念が残る。法務局のセキュリティ対策が鍵となる。複雑な相続関係や争いが見込まれるケースでは、依然として公証人関与の公正証書遺言が適している。

現時点では改正案が閣議決定された段階であり、国会での成立・施行を待つ必要がある。詳細な手続きフローや省令は成立後に法務省から公表される予定だ。遺言は自分の意思を確実に伝える重要な手段である。今回の改正を機に、早めの準備を検討したい。弁護士や司法書士への相談も有効だ。法改正の詳細は法務省公式サイトで確認を。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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