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「気にしないでバカになれ」売上の99.7%がウソ! ビッグローブ・ジープランを喰い物にKDDIを7年騙した男と“3000万円キャバクラ接待”

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日本を代表する通信メガキャリア・KDDIのグループ会社による不正会計問題。傘下の「ビッグローブ」および「ジー・プラン」で発覚した前代未聞の不正会計の報告書が3月31日に開示された。

売上高2461億円を過大計上し、純利益に対する影響額は1290億円にのぼる。さらに外部流出額は約330億円。

驚くべきことに、当該事業の売上の99.7%が架空取引だったというのだ。

 

「数十万円の赤字」から始まった巨大詐欺と3000万円の「キャバクラ接待」

始まりは2018年。担当者a氏が立ち上げたジー・プランの広告代理事業で生じた「数十万円の赤字」だった。成果を出さねばという焦りから、遅くとも同年8月には架空循環取引に手を染めた。

当初はよくある小規模な循環取引に過ぎなかったが、2022年12月以降にビッグローブが新規事業として商流に関与したことで事態は一変する。2025年には、架空循環取引に関与した代理店は21社にまで拡大していた。

KDDI不正会計問題の経緯
KDDIが開示した特別調査委員会による調査結果についてより

この事業の実体がないなかで、担当者は関与した取引先から、飲食代(キャバクラ代)として2年間でなんと3000万円もの接待を受けていた事実が確認されている。

 

なぜ巨大企業KDDIは「7年間」も騙され続けたのか?

最大の疑問は、なぜこれほど巨額の架空取引が長期間にわたって見過ごされたのか、という点だ。特別調査委員会の報告からは、グループ全体に蔓延していた呆れた管理体制とリスク感度の欠如が浮き彫りになる。

KDDI不正会計問題
KDDIが開示した特別調査委員会による調査結果についてより

第一に、ジー・プラン内部の業務のブラックボックス化だ。稟議から発注、検収までを同一担当者が行い、広告主や商材が本当に存在するのかという基本的な確認すら行われていなかった。さらに「下流の代理店より先の商流は確認しないのが業界の慣行だ」という言い訳を盾に、最上流と最下流の代理店が同一企業である(=循環している)事実を隠蔽していたのだ。

 

第二に、親会社であるビッグローブの異常なまでの甘さである。急激な売上増加に対して社内でも疑問の声は上がっていた。しかし担当者が「代理店の代表者は緊張するタイプで引っ込み思案なので面会はできない」、「他の社員が同席すると相手が警戒する」という、ビジネスの場とは思えない稚拙な言い訳を展開したにもかかわらず、ビッグローブ側はこれを鵜呑みにし、実在性の確認に踏み込まなかったのである。

そして極めつけは、KDDI本体の「グループファイナンス」の盲点だ。KDDIから子会社への貸付けは、原則として設定された極度額を超えない限り、子会社からの要請に応じて機械的に実行される仕組みになっていた。つまり、KDDIの絶大な信用力と潤沢な資金の蛇口が、実質的なノーチェックのまま不正の原資として吸い上げられていたのである。

 

崩壊の足音…「発覚の決定打」と社長ただ一人の“違和感”

市場規模が全体で500億円のビジネスに対し、自社の売上だけでほぼ100%を占有するという異常事態。砂上の楼閣がついに崩壊の危機を迎えたのは、2025年2月19日のことだった。

KDDIの経営戦略会議において、ビッグローブのマスタープランを審議する中、当時の代表取締役社長(現会長)であるo氏が、広告代理事業の不自然な業績向上に鋭いメスを入れたのだ。o氏は「あまりにも伸びているので怖い」「通信より大きくなっている。これだけ伸びているといつか何かが起きるかもしれないので注意してほしい」と語り、「コンプライアンス的に問題ないか」と明確な懸念を示した。

 

これに対し、事業を管掌していた当時のビッグローブ取締役執行役員常務(c氏)は「扱う商品の審査とクリエイティブチェックはしている。変な広告が出たり、薬事法違反になったりが起こらないようなマネジメントをしている」と、ピントの外れた説明でその場を乗り切ろうとした。

恐ろしいのは、この会議でo氏と同様の懸念を示す役員が「他に一人もいなかった」という事実だ。もし当時の社長がこの”異常な膨張”にたった一人で違和感を覚え、指摘していなかったら……被害額はさらに天文学的な数字に膨れ上がっていたことは想像に難くない。

 

スパイ映画さながらの隠蔽工作と「バカになれ」

社長の指摘を受け、KDDIの監査役らが動き出し、内部監査へと発展していく。そして同年10月、ついに会計監査人からの指摘が入り、12月には一部代理店からの入金遅延が発生。子会社従業員からの証言も飛び出し、資金繰りの破綻と架空売上の疑いがKDDI本体の知るところとなったのだ。

追い詰められた首謀者たちは、最後まで悪あがきを見せた。架空取引に現実味を持たせるため、あえて売上が下がる時期を組み込んだ成果レポートを作成。監査の目を欺くために取引先社長のチャット画面を一時的に変更させて架空のやり取りを捏造した。さらに、社内調査が入ると想定問答集を作って口裏を合わせただけでなく、なんとヒアリングの最中にもチャットでリアルタイムに指示を飛ばすという周到さを見せた。

 

発覚前、同僚である担当者bが、異常な商流と高額すぎる取引について主犯格の担当者aを問いただした時のことだ。aは悪びれる様子もなく、こう言い放ったという。

「これは売上を作る仕組みだ。悪いことはしていない。詳細は考えないでほしい。気にしないでバカになれ」

「バカになれ」――そううそぶいた男は、巨額の資金とともに底なしの沼へと沈んだ。この事態を受け、ビッグローブとジー・プランの社長をはじめとする主要経営陣は辞任。親会社であるKDDIの松田社長らも役員報酬の自主返納に追い込まれた。

 

「引っ込み思案だから会えない」

という言い訳すら通ってしまった大企業の驕りと死角。撤退が決まった広告代理事業の焼け跡には、失われたガバナンスへの信頼と、巨額の損失だけが残されている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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