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AIが生み出した“虚像の芸能人” 国内初の摘発が示した「生成AI犯罪」のリアル

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生成AI 犯人
DALL_Eで作成

クリックの先にあったのは、現実の誰かに酷似した“虚像”だった。
SNS上で女性芸能人に似せたわいせつ画像をAIで大量に生成・公開していたとして、秋田市の会社員・横井宏哉容疑者(31)が警視庁に逮捕された。
摘発された画像は約2万点。被害を受けた女性芸能人やアナウンサーは262人にのぼるという。警視庁によると、生成AIを使ったわいせつ画像事件の摘発は国内で初めてだ。

 

「収益が見込めると思った」31歳会社員の供述

横井容疑者は、自宅のパソコンで無料公開されている画像生成AIを使い、実在する女優やアイドルの顔を学習させてわいせつ画像を作成。
作品投稿型の有料サイトにサンプルを掲示し、閲覧料を支払ったユーザーに自身のSNSアカウントへのアクセス権を販売していた。

利用者を「プラチナ」「ダイヤモンド」など5段階にランク付けし、支払額が多いほど“過激な画像”を見られる仕組み。希望する芸能人を指定できるオーダーメイド方式まで用意していたという。
横井容疑者は調べに対し、

「女性芸能人に似せた画像は反響が大きく、収益が見込めると思った」
と容疑を認めている。

彼が得た金額は約120万円。閲覧料の一部は奨学金の返済や生活費に充てられていた。
警視庁のサイバーパトロールが異常なアクセス数に気づいたことが、事件発覚のきっかけだった。

 

AIが描いた「虚構の現実」 消えない傷と法の空白

押収された端末からは、学習用とみられる約2万1500点の芸能人画像が見つかった。
その中には、無断でネット上から収集された写真も多数含まれていたとされる。
生成AIがつくり出したのは、現実には存在しないフェイクの身体だ。
しかし、その画像を見た人々にとっては、まぎれもなく本人のようにしか見えない。

日本では、こうした「生成AIによるわいせつ画像の作成・所持・販売」を直接罰する法律はまだ存在しない。
ある弁護士はこう警鐘を鳴らす。

「作成そのものを禁止しないと、流通段階での規制は追いつかない。海外では生成行為を明確に禁じる国もあり、日本も早急に法整備を進める必要があります」

SNS上ではすでに「AIだと気づかなかった」「実在の人を使うのは怖すぎる」といったコメントが相次いでいる。
AIがリアルを再現できる時代、真実と虚構の境界は、もはや一枚の画像で曖昧になる。

 

広がる懸念「次は自分かもしれない」

ある女性ユーザーはこう語る。

「家族や友人の写真をSNSに上げるのも怖くなった。知らないうちにAIの学習に使われるかもしれないから」

SNSで拡散された画像は、削除してもコピーが残り続ける。
AIフェイクの被害は、一度広まれば取り返しがつかない。
被害者が泣き寝入りするケースも多く、専門家は「名誉毀損やプライバシー侵害を超えた“人格の毀損”」と問題の深刻さを指摘する。

AIが持つ創造の力は、人間の倫理や法制度を軽々と追い越していく。
それでも、私たちはどこまで“便利”と“危険”の線を引けるのだろうか。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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