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任天堂とポケモンが米国特許承認 2つの特許の内容は『ポケモンSV』の「レッツゴー」?ゲーム業界への影響を読み解く

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任天堂
unsplashより

任天堂と株式会社ポケモンが、人気ゲーム『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、SV)の「レッツゴー」システムに酷似した技術など、ゲームプレイの根幹に関わる2つの特許を米国で取得したことが判明した。これは単に技術を保護するだけでなく、今後のゲーム業界の動向、特に係争中の『パルワールド』との関係性にも影響を及ぼす可能性があり、注目を集めている。

 

ゲームプレイの常識を特許化する任天堂の動き

任天堂と株式会社ポケモンは、米国特許商標庁(USPTO)によって、以下の2つの特許が承認されたことが海外メディア「games fray」の報道で明らかとなった。

  • 米国特許番号12403397号:2025年9月2日に承認された「キャラクターを召喚して戦わせる」技術
  • 米国特許番号12409387号:2025年9月9日に承認された「乗り物のスムーズな切り替え」に関する技術
    ※海外メディア「games fray」より

これらの技術は、どちらも任天堂の近年のゲームタイトル、特に『ポケモンSV』に実装されているシステムと非常に類似している。特許は既に日本でも承認されており、「12403397号」は特許番号7482585号、「12409387号」は特許番号7349486号として登録されている。

ゲームの基本的なシステムやメカニクスを特許として保護しようとする任天堂の姿勢は、ゲーム開発者やユーザーの間で大きな議論を呼んでいる。

『ポケモンSV』の「レッツゴー」は特許技術だったのか?

 

まずは、2023年3月に出願された「キャラクターを召喚して戦わせる」技術(米国特許番号12403397号)について詳しく見ていこう 。特許書類の図面と請求項を読み解くと、この技術が具体的にどのようなゲームプレイを指しているのかがわかる。

特許の内容は、プレイヤーキャラクターがフィールドを移動する中、所持しているサブキャラクターを呼び出し、特定の条件下で戦闘を行わせる一連のプロセスを定義している 。

その仕組みは以下の通りだ。

  1. キャラクターの召喚
    プレイヤーが特定の操作(例えば、ボールを投げる操作)を行うことで、サブキャラクターがフィールドに出現する。
  2. 戦闘モードの自動選択
    • サブキャラクターを出現させた場所に敵キャラクターがいた場合、プレイヤーのコマンド入力に基づいてバトルが進む「第1のモード」(手動バトル)が開始される。
    • 敵キャラクターがいなかった場合は、サブキャラクターが自動で動く「自動制御モード」が始まる。
  3. 自動戦闘の開始
    プレイヤーが別の操作でサブキャラクターを特定の方向に移動させ、その場所に敵キャラクターがいると、バトルが自動で進行する「第2のモード」(自動バトル)で戦闘が制御される。

このプロセスは、まさに『ポケモンSV』で実装された「レッツゴー」システムそのものだと言えるだろう。プレイヤーがフィールドのポケモンにボールを当てることで始まる手動バトル、そして連れ歩いているポケモンに指示を出すことで自動でバトルしてくれる「おまかせバトル」機能は、この特許の内容と完全に一致している。「games fray」によると、この特許はUSPTOの審査で「異論なく承認された」と報じられており、その技術が新規性・独創性を有するものと判断されたことが伺える。

「乗り物切り替え」特許の未来:よりシームレスな移動体験へ

 

次に、「乗り物のスムーズな切り替え」に関する特許(米国特許番号12409387号)を見ていこう 。この特許は、オープンワールドゲームにおける移動の煩わしさを軽減する画期的な技術だ。

特許書類の要約によると、この技術は「乗り物の種類を選択し、プレイヤーキャラクターをその乗り物に乗せる」という操作に加え、以下のプロセスを可能にしている。

  • 空中の乗り物(図面では鳥のキャラクター)に乗ったプレイヤーが地上に向かって移動すると、自動的に地上の乗り物(馬のキャラクター)に切り替わり、地上を移動できる状態になる。
  • 同様に、空中の乗り物から水面に向かって移動すると、自動的に水上の乗り物(魚のキャラクター)に切り替わる。

これは、任天堂の看板タイトルである『ゼルダの伝説』シリーズなど、広大なマップを持つオープンワールドゲームで、移動のストレスを大幅に減らすために不可欠な技術と言える。

さらに、この特許には、プレイヤーが意図しない自動切り替えを防ぐための仕組みも含まれている。空中の乗り物から崖面に向かって移動する場合、自動での切り替えは行われず、プレイヤーが特定の操作(例えば「Aボタン」を押す)をすることで初めて、崖面用の乗り物(崖をよじ登るキャラクター)に切り替わる。

この特許は、単なる乗り物の切り替えだけでなく、ゲーム内の地形やプレイヤーの意思を考慮した、より複雑でインテリジェントな移動システム全体を保護しようとするものだ。

ゲーム業界への影響:『パルワールド』訴訟との関係性

 

任天堂の特許取得のニュースは、ゲーム開発者やユーザーの間で、特に『パルワールド』との関連で大きな関心を集めている。

海外メディア「games fray」のアナリスト、Florian Mueller氏は、今回の「キャラクターを召喚して戦わせる」特許(米国特許番号12403397号)が「ゲームプレイの基本的なメカニクス」を対象としていることを強調している。この特許は、『パルワールド』のようなゲームだけでなく、広くゲーム業界全体の創造性や革新性に影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしている。

しかし、同じく「games fray」の報道によると、現在進行中の『パルワールド』訴訟で争点となっている3つの特許侵害の中に、今回の「キャラクターを召喚して戦わせる」特許は含まれていない。訴訟で問題となっているのは、別の「ボールを用いたキャラクターの捕獲」などに関連する特許だとされている。

このため、今回の特許取得が直ちに『パルワールド』への新たな法的な動きに繋がるわけではないとの見方もある。一方で、任天堂は業界全体に対し、自社の知的財産を強力に保護する意思を示し、将来的な競合他社の類似ゲーム開発を抑止しようとしている可能性も指摘されている。

今後の任天堂タイトルへの期待と展望

 

今回の特許取得の背景には、訴訟対策だけでなく、任天堂の今後のゲーム開発戦略も深く関わっていると見られる。

今年10月に発売が予定されている『Pokémon LEGENDS Z-A』では、『ポケモンSV』の「レッツゴー」システムと同様のシステムが実装される可能性があり、今回の特許はそれに先立つ準備であるという見方もできる。また、「乗り物のスムーズな切り替え」技術は、今後のオープンワールドタイトルでさらに高度な移動体験を提供する土台となるだろう。

任天堂は、ゲームのアイデアやシステムを単に特許で囲い込むだけでなく、それを自社タイトルに実装することで、他社には真似のできない、独自のゲーム体験を生み出そうとしている。今回の特許群は、その取り組みが今後も続いていくことを強く示唆している。ゲーム業界の創造性に対する懸念と、新たなゲーム体験への期待。両方の側面から、任天堂の今後の動向はこれまで以上に注目されることとなるだろう。

参照:Last week, Nintendo and The Pokémon Company received a U.S. patent on summoning a character and letting it fight another(games fray)

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ライター:

サブカル分野を中心に執筆するフリーライター。アニメを中心とした二次元をこよなく愛し、推しへの愛とリスペクトを忘れず、作品の魅力やキャストの想いを届ける記事を心がけています。レビュー、考察、インタビュー、イベントレポートなど、多方面からアニメ・サブカルの魅力を発信。

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