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日本エコロジー松井社長「立ち止まれない」 釧路湿原メガソーラー事業、環境保護と投資の狭間で対立

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日本エコロジー、釧路湿原

北海道・釧路湿原国立公園周辺で進められている大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設をめぐり、事業を担う「日本エコロジー」(大阪市中央区)の松井政憲社長は9日、釧路市内で取材に応じ、「かなり投資しており、立ち止まることはできない。市と協議して進めたい」と語り、事業中止を否定した。

国際的に重要な自然環境の保護と再生可能エネルギー推進が真正面からぶつかる構図が鮮明となっている。

 

投資継続を強調する事業者

松井社長は、自民党国会議員連盟や環境省関係者による現地視察後にコメントした。北海道は今月2日、森林法に基づく許可を得ず工事を進めたとして、建設予定地の森林区域で工事中止を勧告したが、同社は「市への届け出に基づいて正規の手続きで進めている」と主張。巨額の投資を背景に、撤退は現実的でないと説明した。

 

環境団体の反発と議員の懸念

釧路湿原はラムサール条約に登録される日本最大の湿地で、国の特別天然記念物オジロワシの巣やタンチョウのひなが確認されるなど希少な生態系が残る。猛禽類医学研究所の齊藤慶輔代表は「生態系に取り返しのつかない影響を与える」と警鐘を鳴らし、工事中断を強く訴えた。

現地視察に参加した鈴木貴子衆院議員は、「現行法では促進区域の設定はできても規制区域が存在せず、ガイドラインにも強制力が欠ける」と指摘。「事業者、研究者、市がデータを持ち寄り協議する場を急ぎ設けたい。法改正も視野に対応策を加速させる」と述べた。

 

市民運動と条例の可能性

地元では事業への融資金融機関に対する「解約運動」も議論されており、資金調達リスクを高めることで事業を抑制する可能性が指摘されている。

さらに自治体は、改正再生可能エネルギー特措法(令和4年施行)で義務化された廃棄費用の積立制度を踏まえ、独自条例で解体費用の前払いを義務づけることが可能だ。地方自治法第2条に基づく条例制定権を行使すれば、撤退時の環境破壊リスクを軽減できるとの見方もある。

 

世論の二分と技術論争

市民からは「子や孫のため、国土保全のために計画中止は良い判断だ。すでに日本の太陽光設置率は世界一で、今後はペロブスカイト型のような次世代技術に期待すべきだ」との声も上がる。

しかし、専門家からは「ペロブスカイトは耐久性や寿命、大面積化の課題、鉛使用による環境リスクを抱えており、現実的な代替にはなり得ない」と冷静な反論が出ている。さらに「太陽光だけに依存せず、安全な蓄電池や原子力を含むエネルギーミックスを現実的に議論すべき」との主張もある。

 

全国的な注目と野口健氏の発言

アルピニストの野口健氏は、岩手県大船渡市で中止された別のメガソーラー計画に触れ「一つが救われれば二つにも三つにもなる」とSNSに投稿。釧路湿原についても「現場に立ち会い、この惨状を自分の目で確かめたい」と述べ、全国的な問題提起へと広げている。

 

エネルギーと環境のせめぎ合い

再生可能エネルギー推進の必要性は国策として揺るがないが、法整備や規制の不十分さが地域社会を分断している。釧路湿原メガソーラーをめぐる攻防は、環境保護とエネルギー安全保障の調和をどう実現するかという日本全体の課題を象徴している。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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