
小林製薬は、男性向けスキンケア製品「メンズケシミンプレミアムオールインワンクリーム」(医薬部外品)約57万個を自主回収すると発表した。この件は、昨年発生した紅麹(べにこうじ)サプリメントの健康被害問題に続くものであり、同社の品質管理体制に再び注目が集まっている。
小林製薬が「メンズケシミン」を自主回収 紅麹問題に続き品質管理の課題か?
小林製薬が、男性用スキンケア製品「メンズケシミンプレミアムオールインワンクリーム」(医薬部外品)を自主回収すると発表した。製品に含まれる水分が時間の経過とともに揮発し、有効成分が濃縮される可能性があるためだ。現時点で健康被害の報告はないものの、昨年発覚した紅麹問題に続き、同社の品質管理体制に再び疑問の声が上がっている。
なぜ「メンズケシミン」が自主回収に?製品の成分に何が起きたのか
今回の自主回収の理由は、製品に配合されている有効成分「ナイアシンアミド」の濃度が、時間の経過とともに高まる可能性があるためだ。小林製薬は、製造・出荷時点では医薬品医療機器法(旧薬事法)で定められた規格基準を満たしていたとしている。しかし、同社が自主的に行った品質試験で、製品内の水分がわずかに揮発し、それに伴い有効成分が濃縮されることが判明した。
医薬部外品は、厚生労働大臣が指定する有効成分を一定量配合することで、特定の効果・効能を謳うことができる。その成分濃度は厳格に管理されており、わずかな変動でも基準を逸脱する恐れがある。今回のケースでは、製品が消費者の手元に届き、3年間という使用期限内に成分濃度が基準値を超える可能性が否定できないと判断されたため、自主回収という結論に至った。
消費者への影響は?健康被害の報告はあったのか
小林製薬は、現時点で本件に起因する健康被害の報告はないとしている。有効成分であるナイアシンアミドは、肌荒れやシワ改善、美白効果などが期待できる成分として、多くの化粧品や医薬部外品に広く使用されている。過剰に摂取した場合でも、通常は大きな健康被害には繋がりにくいとされる。しかし、肌が敏感な人が使用した場合、かゆみや赤みといった肌トラブルを引き起こす可能性は否定できない。
今回の自主回収は、健康被害が確認されたためではなく、あくまでも製品の品質規格を逸脱する可能性に備えての「予防的措置」である。しかし、紅麹問題で消費者の信頼が揺らいでいる中、こうした事態が立て続けに起こったことは、同社にとって大きな痛手といえるだろう。
紅麹問題との共通点と相違点
今回の「メンズケシミン」自主回収は、昨年大きな社会問題となった紅麹サプリメントの件と重ねて見られることが多い。両者には共通点と相違点が存在する。
共通点:品質管理体制への疑問
最も大きな共通点は、製品の品質管理体制に対する疑問だ。紅麹問題では、本来含まれるべきではない「未知の成分」が混入していたことが健康被害の原因とされた。対して今回のメンズケシミンでは、成分の「濃縮」という形で品質規格から逸脱する可能性が生じた。どちらも、最終製品が消費者の手元に届くまでの品質維持において、予測や管理が不十分だった可能性が指摘されている。
相違点:原因と健康被害の有無
一方、両者には明確な相違点もある。紅麹問題は、製造過程で意図しない成分が混入したことで、深刻な健康被害を引き起こした。腎臓の機能障害など、重篤な症例が多数報告され、死者も出た。しかし、今回のメンズケシミンのケースでは、製造過程での異物混入や健康被害の報告はなく、あくまでも製品が時間経過とともに品質規格を逸脱する可能性に焦点を当てている。原因も、紅麹問題のような製造プロセス上の問題というよりは、製品の「安定性」に関する問題と捉えられている。
今後の展望
小林製薬は、今回の問題を受けて「原因を一刻も早く究明するとともに品質管理に万全を期し、再発防止に徹底して取り組んでいく」と発表している。紅麹問題後、品質管理の強化を掲げていた同社にとって、今回の事態はさらなる信頼回復への道を厳しくするだろう。消費者の信頼を取り戻すためには、原因究明と再発防止策を明確にし、透明性の高い情報公開を行うことが不可欠となる。
小林製薬は、今回の件を教訓とし、品質管理体制を根本から見直すことが求められる。企業の信頼は、単に良い製品を提供することだけでなく、何か問題が起きた際に、いかに誠実に対応し、再発防止に努めるかによって築かれる。今回の自主回収が、同社の品質管理に対する真剣な取り組みを示す機会となることを期待したい。