常在成分であるフィチン酸が美容市場に新風 プラセボ対照試験で“肌の質感向上”を実証

築野グループ株式会社(和歌山県伊都郡)は、米ぬかに含まれる天然成分「フィチン酸」の美容機能性に関する研究成果を発表し、国内の学術誌『応用薬理』(2025年5月号)に掲載された。
古来より健康食材とされてきた米ぬかの成分が、近年は美容の分野でも注目を集めており、今回の報告はその可能性を大きく広げる内容となっている。
「シミ」「シワ」「キメ」に改善効果 12週間の試験で統計的に有意な結果
研究では、米ぬかから抽出したフィチン酸を0.5%配合したクリームを使用。健常な成人女性を対象に、半顔にプラセボクリーム、もう半顔にフィチン酸入りクリームを塗布し、1日2回、12週間にわたって継続するプラセボ対照・単盲検試験を実施した。
試験の結果、フィチン酸を塗布した側では、以下の改善が統計的に有意に認められたという。
- メラニン指数の低下(シミの減少)
- 肌の弾力性向上
- シワの軽減
- キメの改善
加えて、被験者による主観的なアンケート結果においても、「くすみ」や「油っぽさ」、「肌の健康状態」などの評価項目において改善が確認された。
これまでフィチン酸は、金属イオンを吸着する“天然のキレート剤”として食品や工業分野での利用が中心であり、美容効果に関する報告はほとんどなかった。今回の研究は、色素沈着や皮膚老化に対するフィチン酸の可能性を初めて示したものであり、美容業界にとっても革新的な知見となる。
「米ぬか」の総合活用で生まれる循環型モデル
築野グループは、戦後すぐの1947年に設立され、こめ油製造を軸に成長してきた企業である。精米工程で発生する米ぬかを出発点に、現在は「こめ油製造事業」「ファインケミカル事業」「オレオケミカル事業」の3事業を展開。こめ油のみならず、非可食部や副産物も100%活用し、医療・化粧品・化学など多様な分野への供給を行っている。
また、オレオケミカル技術を応用した「廃食用油のリサイクル」など、SDGsに資する循環型社会の構築も推進している。
日本由来の素材がグローバル展開の鍵に
築野グループでは、今後も米ぬかの機能性に注目し、国内資源の有効活用を通じて、美容・健康分野における新しい価値創出に挑む方針を示している。SDGsを背景に、サステナブルな素材や製品が求められる中、国産由来の“古くて新しい”素材が再評価される動きは加速するだろう。
美容成分としての「フィチン酸」の活用が広がれば、日本発のナチュラルコスメ市場において、米ぬかが再び主役に躍り出る日も近いかもしれない。