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ビーモーション株式会社

https://www.bemotion.co.jp/

東京都豊島区目白1丁目4番25号 目白・博物館ビル3階

ビーモーション株式会社の「接客オンデマンド」が拓く未来

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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オフラインとオンラインを融合する“人×AI”セールスプロモーション

ビーモーション株式会社伊藤空社長
ビーモーション株式会社伊藤空社長(提供:ビーモーション、以下同)

販売促進・セールスプロモーションの世界では、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人手不足の問題が同時に浮上している。こうした課題の中で注目を集めているのが、長年にわたって家電量販店向けの販売スタッフ配置や営業代行を担ってきたビーモーション株式会社(以下、ビーモーション)だ。同社は約35年の歴史を通して“人を介した販促”を得意としながら、生成AIを活用した「接客オンデマンド」を武器に新たな販促手法を生み出そうとしている。

「ビーモーションは、単純に人材を出すだけでなく、メーカー様と一緒に成果を創り上げていくパートナーです。販売現場の最前線に立つ人材の教育やマネジメントまで一括して担うことで、実際に売上数字にコミットするのが弊社の強みです」と、2024年6月に代表取締役社長へ就任した伊藤 空(いとう・くう)氏は語る。

 

ビーモーションの事業ドメインと歩み

ビーモーションは1990年に設立され、2025年で35年の歴史を数える企業だ。家電量販店を中心に販売スタッフを配置・育成し、営業代行を通じてメーカーの販促を支援してきた。札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡と全国に拠点を構え、2024年2月期の売上は25億円。最盛期には30億円超を記録し、接客・販売の実務ノウハウを強みに業績を伸ばした。

2025年4月現在、登録スタッフ数は3000名超で、常態的に稼働しているのは700~800名。正社員は90名ほど在籍しており、スタッフの多様なキャリア形成と店舗での即戦力化を支える仕組みを構築している。

ビーモーション株式会社伊藤空社長

「弊社の根幹は、常に現場に寄り添う姿勢です。スタッフ一人ひとりが自信を持ち、“やってみよう”という気持ちを継続できるように支援する。それがやがてメーカー様の販売拡大につながり、私たちの価値になると信じています」と伊藤氏。長年にわたり培ってきた“人を介す販促”が、同社の大きな武器となっている。

業務委託という選択肢が拓く可能性

ビーモーションが「業務委託」のビジネスモデルを重視する背景には、成果にしっかりとコミットする企業風土と、メーカー側の負荷を軽減するメリットの両方がある。派遣形態では、スタッフの指示・教育をメーカーが直接行うため、勤怠管理やメンタルケアなどに相応の手間がかかる。一方、業務委託ならビーモーションがスタッフの採用から研修、現場フォローに至るまでを一括管理し、日々の目標設定や売上管理も担う。

「私たちは、メーカー様と一緒に売上を追いかけるパートナーです。単なる人数合わせではなく、販売台数や顧客満足度など具体的な成果を目指して動きます。そのプロセスで生じるスタッフの悩みや教育も含め、すべて弊社が背負うのです」と伊藤社長は話す。この仕組みによって、メーカーは煩雑な人事管理やノウハウ構築に時間を割く必要がなく、販売戦略に集中できる。

特に外資系メーカーや、国内でも小規模の新興メーカーにとっては、ビーモーションのように“販売員の育成・マネジメント・評価”をワンストップで任せられる相手は心強い存在だという。実際にビーモーションには、長年にわたって業務委託を続ける企業が多く、外部委託の枠を超えた“共創”のパートナーとして関係を深めている。必要に応じてスタッフの増減を素早く行える点も大きな利点であり、大型プロジェクトやキャンペーンの際には、ビーモーションの全国ネットワークが十分に力を発揮する。

「業務委託の最大のメリットは、スタッフやメーカー様の声を拾って改善し、成果へつなげる柔軟性にあります。派遣では味わえない『一体感』こそが、弊社の強みです」と伊藤氏は自信をのぞかせる。

 

コロナ禍を経た再スタートと売上回復への道

コロナ禍は、ビーモーションのように「人を介す」対面販促を主戦場としてきた企業にとって、一時的に大きな打撃を与えた。リアルイベントや店頭プロモーションが軒並み停止・縮小し、スタッフを含む多くの関係者が先行きへの不安を抱えた時期でもある。

「正直、売上が急激に落ち込んだ期間はありました。しかし、そのとき一番に考えたのは“登録スタッフの生活をどう守るか”ということ。人こそが弊社の財産だと思っていますから、やむを得ず短期の雇用調整を行いつつも、みんなが次に活躍できる場を用意しておきたいという思いでした」と伊藤氏は振り返る。

同時に、コロナ禍でオンライン接客やEC対応の重要性が急速に高まったことで、ビーモーションが以前から開発を進めていたリモート接客サービスが脚光を浴びる。家電量販店以外の小売業や通販ブランドからも「オフライン接客が制限される今、何とか遠隔で顧客とつながりたい」という要望が殺到し、同社はサービスを刷新しながら提供を広げていった。こうした取り組みが、コロナ以降の販促現場のニーズと合致し、売上は回復基調へと転じている。

「厳しい状況の中でも、リモート接客への取り組みは確実に実を結び、結果としてスタッフの新たな活躍の場を生み出せました。店頭に立つことが難しかった時期でも、オンラインで製品説明をするチームを編成したり、メーカー様の要望に合わせてシステムをカスタマイズしたりと、忙しさはむしろ増したほどです。

私たちは常に『人こそがサービスの原点』だと信じているのですが、それを補完・強化してくれるのがデジタルテクノロジーだという点を、コロナ禍が改めて教えてくれたと思います」。

“人”と“AI”をつなぐ新サービス「接客オンデマンド」

接客オンデマンドAI画面
接客オンデマンドAI画面

ビーモーションの“オンとオフを融合する戦略”を象徴するのが、対話型AIやオンライン接客ツール、VR、ロボットなどを複合的に活用する「接客オンデマンド」である。たとえば家電量販店の店頭では、タブレット上にAIアバターを配置し、来店客が画面のアバターに話しかけるだけで製品情報や操作方法を瞬時に得られる仕組みを提供。

さらに、リモート接客の仕組みではQRコードをかざすと消費者自身のスマートフォン上で遠隔オペレーターとつながり、より詳細でプロフェッショナルな相談が全国どこでも可能になる。

「これまで弊社が培ってきた“接客のノウハウ”は、デジタルツールと組み合わせることで、24時間365日途切れないサービスに発展します。ECサイトでも似たような仕組みを導入すれば、購買タイミングを逃さずに商品を提案できるわけです。しかも、最近はGPTのような生成AIを取り入れ、人手ではカバーしきれない知識量を瞬時に提供できるようになりました」と伊藤氏。

実際、ビーモーションはオフラインの販売員を教育してきた経験を活かし、AIアバターが回答する“トークスクリプト”にも現場視点の工夫を数多く盛り込んでいるという。

それだけでなく、VRを用いたバーチャルショールームや、ロボティクスを使った省人化サービスの開発にも積極的で、今後はさまざまな業種・業態に向けて“接客DX”を幅広く提供する方針だ。「人のぬくもりや臨機応変さと、AIの正確性・効率性が融合すれば、販売の可能性は格段に広がります。私たちが理想とするのは、“AIがいても結局最後は人が求められる”という瞬間に即座に対応できる社会です」と伊藤社長は力を込める。

ロープレAI対話画面
ロープレAI対話画面

セカンドチャンスを生み出す人材育成の仕組み

ビーモーションのもう一つの特徴は、社会における“セカンドチャンス”の場としての役割だ。登録スタッフの中には、かつて別の業種で挫折を経験した人や、家庭の事情でフルタイム勤務が難しかった人、海外留学から帰国後になかなか仕事が見つからなかった人など、実に多様なバックグラウンドを持つ人たちがいる。

「弊社にはいろいろな人が来ますが、学歴や職歴だけで判断することは一切ありません。むしろ、いま何がしたいのか、どんな未来を描きたいのかを共有し、それに向けて全力でサポートします」と伊藤社長は語る。

同社ではまず3~5日の集中講習とロールプレイングを行い、その後は実店舗でOJTを重ねながら販売スキルを磨いていく。その過程でスーパーバイザーが店舗を訪問し、悩み相談や商品知識のアップデートを行い、スタッフを丁寧に育てていく。店頭で実践を重ねる中で、コミュニケーション能力や課題解決能力が自然と身につき、一定期間を経て正社員登用や、別の企業へのキャリアアップを実現するスタッフも少なくないという。

「人が成長すれば、その喜びがスタッフのモチベーションに直結し、結果としてメーカー様の売上アップにもつながります。私自身も昔は何度も出戻りしながら仕事を転々としてきましたが、最終的に『ここでなら自分のやりたいことが形にできる』と思えたのがビーモーションでした。人生をやり直したい、あるいは新しいステージに行きたいと考えている人が活躍できるプラットフォームとして、これからも存在していきたいですね」と伊藤氏は穏やかな笑みを見せる。

 

伊藤社長が描くビーモーションの未来

北海道の過疎地域に生まれ、医師であり住職でもあった父を持ちながら九州で育ったという異色の経歴をもつ伊藤社長は、海外での生活を経た後、ビーモーションに幾度か復帰し、営業部門や採用部門を歴任。2024年6月に代表取締役社長へ就任した。そうした自身の足跡が、同社のカルチャーでもある「多様性を受け入れ、何度でもチャンスを与える」姿勢を一層強くしている。

「仕事は決して楽しいことばかりじゃありませんが、苦労の先に笑顔や喜びを見出すことができるのが魅力です。私たちは販売促進という入り口から、人々が自分の可能性を見つけるサポートをしたい。そのために現場の育成もデジタルの導入も全力で進めています」と伊藤氏。

今後はさらに「接客オンデマンド」を進化させ、AIアバターによる24時間対応はもちろん、メタバース空間での接客や、ロボットを使った省人化サービスなどを展開することで、人手不足が叫ばれる小売業の変革に貢献したい考えだ。

「どれだけAIが発達しても、最後に求められるのは“人ならではの温かさと提案力”です。だからこそ人材育成とテクノロジーの組み合わせを突き詰めて、国内唯一の“オンオフ両面に強い接客DXカンパニー”を目指したいのです」と伊藤氏は力強く宣言する。

ビーモーションは、店舗販売のリアルな熱量と最先端のデジタル技術を融合させることで、販売促進の概念そのものを変革しようとしている。そこには、社会に“もう一度チャレンジできる場”を提供するという確かな意義と、苦境下でも人材を育て続ける企業カルチャーが根付いている。

【プロフィール】
伊藤 空(いとう・くう)
北海道出身。医師であり住職でもあった父親のもとで育ち、青年期に九州へ移住。海外留学を経て、ビーモーション株式会社へ幾度か出戻りした後、2011年より正社員として勤務。営業・採用部門を歴任し、2024年5月に代表取締役社長へ就任。“接客オンデマンド”を柱とするセールスプロモーションの進化を推し進める。趣味は読書・映画鑑賞。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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