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岡 望美さん(B Corp認証取得支援コンサルタント) | #ソーシャルグッド雑談

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八木橋パチ プロフィール
ここ数年で日本における認知を急速に高め、認証取得企業が急増しているB Corp。 cokiでもこれまで何度か紹介記事や関連イベントの取材記事などが掲載されています。

そんなB Corpですが、実は、すでに20年を超える歴史を持っていて、日本でも10年以上前から「知っている人は知っている」存在でした。それではなぜ、急にこれほどその存在が注目されるようになったのでしょうか?

その答えは岡 望美(おか のぞみ)さんが、一気に日本にその存在を広めたからです(「違います! 同時期に『広げたい』と活動していた方たちがたくさんいたらからで、私はそのうちの一人に過ぎません」とご本人は絶対に言うだろうけれど)。

今回、どこか取っ付きづらく難解なイメージに包まれていたB Corpを一気に身近な存在へと変えた岡さんに、B Corpとの出会いや今後の展望について、雑談しながら伺いました。

※なお、B Corpのことをまったく知らないという方には、併せて以下のページをお読みいただくとよいかもしれません。
ソーシャルグッド雑談 岡 望美さん

中央: 岡 望美(おか のぞみ)

外資系投資銀行、国内大手メーカーでの経営企画やマーケティング、政府系金融機関での調査業務、スタートアップでのサステナビリティ推進などに従事。幅広い経験と知見を活かし、日本の企業が国際企業認証であるB Corpを取得できるよう伴走型の支援を行う。B Corp認証を運営するB LabのグローバルパートナーであるB Market Builder Japanの設立にも参画し、連携しながらB Corpの普及に関する様々な活動を展開中。

右: 我有 才怜(がう さいれい)

2017年メンバーズ新卒入社。社会課題解決型マーケティングを推進するほか、気候変動への危機感や市民運動への興味から国際環境NGOでも活動中。2023年4月1日、メンバーズ社内に開設された「脱炭素DX研究所」の初代所長に就任。IDEAS FOR GOODと共にWebメディア「Climate Creative」運営中。

左: 八木橋 パチ(やぎはし ぱち)

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャーおよびコラボレーション・ツールの展開・推進を担当。社内外で持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちとさまざまなコラボ活動を実践し、取材・発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。

この日の雑談場所はCafé&Meal MUJI東京有明。

無印良品 有明店で開催していた「環境をかんガエルウィーク#004」を3人でぶらぶらと眺めた後、ランチをいただきながらの雑談となりました。
パチ

岡さんの食べているその料理、めちゃ美味しそう。ひと口貰っていいかな?

すごく美味しいですよ! どうぞどうぞ。

我有

レバーとこんにゃくのからしマヨネーズソース和えですね。美味しいですよ〜。

私も前に食べてすっかりその味のファンになっちゃって。ウェブでレシピを調べて我が家の人気メニューにもなっています。

パチ

メチャうまい! それ注文すればよかったかなぁ。。。

でも、この塩麹唐揚げも美味しいしどうしても食べたかったんだよね。次回はそれを頼もっと。

もぐもぐしながらスタートした雑談。
まずは、前から聞いてみたかった岡さんの子ども時代について質問しました。
パチ

岡さんってどんな子どもだったの?

一言で言えば「よい子ちゃん」でしたね。「こうあるのが正しい」みたいなことに敏感で、大人が求める「よい子の役割」を察知して、「岡さんがいると安心ね」と言って貰えそうなことを常に先回りしてやるようなそこで認められて褒められることに喜びを感じていたタイプの子どもでした。

学校でも、先生とクラスメイトたちの方向性を合わせるのが得意だったから、学級委員に選ばれたりして。

我有

分かる〜。私もそういうタイプの子でした。岡さんもそうだったんですね。

我有さんも?! 前に、「私たちちょっと似ているところがあるかも」って思ったことがあったんだけど、だからだったのかな。

それで、神奈川県の秦野というところに住んでいたんですけれど、親の勧めもあり、近所で活動していた野鳥の観察と研究を行う「はだの野鳥の会」という団体に参加して、大人と一緒にフィールドワークに行ったりしていましたね。 

パチ

なんだか今、双眼鏡を首からぶら下げた小学生の岡さんの姿が頭に浮かんじゃった。そこでも大人の期待に応える「正しい子ども」だったんじゃないの?

ソーシャルグッド雑談 岡 望美さん
双眼鏡でバードウォッチング中の小学生の岡さん

その通りですね。でも、ただ、この野鳥の会での体験が、今の私の人生にジワッと影響を与えてくれている気がしているんです。

たとえば、野鳥観察をする中で、すごく珍しいある希少な鳥のことを好きになりますよね。すると、その鳥のことを調べて、とてもきれいな水があるところにしか生息できないことであるとか、微妙な自然環境のバランスが成立しているから今もその存在が確認できることなんかを知りますよね。「だから地球環境が良くなければならない」「自然を守っていかなければならない」ということは、とても当たり前の考え方でした。

今は「小学生がSDGs教育を受けていて大人の方が遅れている」という意識を持たれがちですが、私が小学生の時だって、環境と開発をテーマにした国連会議「リオ・地球サミット」が開催されて、生活科の授業で地球温暖化のことをとことん調べたり、『トットちゃんとトットちゃんたち』が課題図書だったりと、世界の課題に触れて学ぶチャンスはいくらでもありました。

我有

それっていわゆる「原体験」みたいなものに近いですよね。私も子ども時代を過ごした町も、すごく自然豊か…というかほぼすべて自然みたいなところだったせいか、今の話にはすごく共感します。

それから高校生の時にはチアダンスに打ち込んでいましたが、運が重なってアメリカの大会で優勝することができました。

全米で1位=「世界一」ということで、新聞やテレビでも取り上げていただいたのですが…ただ、もてはやされるほど「自分たちだけの力で獲ったものではないのに」という思いが強くなったり、ニュースで流れるのは事実のほんの一部分で、すごい人たちって他にもたくさんいるし、人が期待するドラマがそこになかったり、別の真実があったりするものなんだと思いました。

「いい子ちゃん」っぷりを発揮しつつ、既存の人間社会や経済活動への違和感を感じ取っていたという学生時代の岡さん。そこからどんなキャリアを歩んでいったのでしょうか?

大学時代は、たまたま「スペシャルオリンピックス」というNPOでインターンする機会に巡りあい、また経営について授業で学ぶなかで、企業の活動に興味を持ってCSRレポートを読み漁っていたのですが、「なぜ企業は事業と全然関係のないところに寄付するんだろう」と漠然とした疑問を持っていました。

でもそれに対して何か行動することは特に思いつかず、とりあえず留学に行き海外の風を浴びて、帰ってきたら企業に就職することにしました。

…これ、すごく反感を買うであろう言葉なので、口に出すのを躊躇してしまうのですが、私、「留学生枠」のような形で、さくっとゴールドマンサックス証券に入社が決まったんです。すごくラッキーな就活体験ですよね。

その上、多くの人がイメージする投資業界の「激烈な働き方」とは真逆のとても「ホワイト」な部署が配属先で、ほとんど残業がなく、トレーダーの出す損益レポートをチェックし、実態とのズレや誇張などがないかを確認したり、整合性に問題がある場合は修正をしたりという仕事でした。

ソーシャルグッド雑談 岡 望美さん
ゴールドマンサックス勤務時代の岡さん。同僚たちとのランチタイムの様子
パチ

仕事の内容にも興味あるけど、その前にゴールドマンにそんなホワイトな部門が昔からあったってことに驚いちゃった。

実は当時、私が担当させていただいたトレーダーのお1人が、『きみのお金は誰のため』が大ベストセラーとなっている田内 学さんだったんです。

最近メディアでその姿をお見かけするたびに、ちょっと懐かしく、そして嬉しくなります。

我有

そんなつながりがお有りだったんですね。

その後、岡さんは日産自動車に転職されますよね。この頃は岡さんの中で、B Corpはどんな存在だったのでしょうか?

いや、存在も何も、B Corpという名前すら知りませんでしたね。

日産に転職してからしばらくして、夫の転勤に付いていく形で、再び海外暮らしになりました。そしてイギリスでの新しい生活がスタートしたと思ったら…すぐにコロナ禍がやってきてしまいました…。

自宅での時間が長くなり、結構自由な時間も多かったので、お手伝いのような形でスタートアップのマーケティングを手伝いはじめました。その時ですね。B Corpに出会ったのは。

パチ

ついにB Corp登場! でもこの話、わりと最近のことじゃないですか? 岡さんがB Corpに出会ったのって…まだ4〜5年前ってこと?

そうなんですよ。2020年の年末近くでした。実はまだまだ新参者でして。

なんとビックリ! 「B Corpと言えば岡さん」というくらい、誰もが認める第一人者である岡さんが、まだB Corpと出会ってそれしか経っていないとは…。

実は我有さんとあたしは2018年頃、「エンゲージメント・ファースト」という会社のB Corp認証取得の可能性を一緒に探っていたことがありました。でも当時は、まず日本語の情報が今よりも圧倒的に少なくて、具体的にどこからどんなふうに手をつけていいのかすらも、なかなか分からないという状況でした。

そしてB Corpの公式サイトに記載されている情報を頑張って読み解いていっても、認証申請のプロセスや審査基準、採点方法などをしっかりと理解するには、環境やガバナンスの基礎知識が必要で、「これは自分たちの力だけではどうにもならなさそう…」と早々にギブアップしたという過去があったのです。その話を岡さんにしたところ…

そうなんです! まさにそれこそが私が認証取得支援コンサルタントになろうと思ったきっかけです。お手伝いしていた会社の経営陣からの「なんかサステナやるべきだと思うけど,

何をすればいいかわからない」という問いにいくつかメニューを提示したところ、「このB Corpっていうのを取りたい」となって。それで、審査・採点などの内容確認をお願いされたんですね。

B Corpのウェブサイトを見ながら、翻訳や読み解きなどをしていると「これはとてもいい内容だけど、日本企業が申請するにはハードルが高いだろうなぁ」と感じていました。

それで、「じゃあ、今私が行っている翻訳や日本語での解説をどんどん公開していけば、みんなに喜んでもらえるんじゃないかしら?」と思って、ウェブページを作ることにしました。

それが現在の「Be the Change!」なんです。

我有

Be the Change! がそんな風にスタートしたとは知りませんでした。「B Corp認証取得支援コンサルタント」を名乗り始めたのはいつだったんですか?

それがですね、ウェブページを作ったすぐ後、ほぼ同時のタイミングでしたね。Webページを通じて問い合わせをいただき、別の会社のB Corpの申請もお手伝いすることになったんです。     

これは実際に自分たちで申請しようとしたお二人なら分かると思うんですけど、B Corpの審査で求められるものって、他の人種や先住民族への配慮であるとか、社内制度の細かな明文化であるとか、日本の企業文化や社会的慣習に当てはめづらいものも少なくないですよね。     

でも、その時お手伝いした会社がこれまで社会や地球のためにやってきたことは、そのままB Corpの基準に当てはまったんです。「やっぱり世界はひとつなんだ」と感じました。

加えて、ゴールドマンや日産でアメリカの会社やグローバル企業のやり方を垣間見ることができたので、「こういうふうにしたら日本の会社でも当てはまる」というところをたくさん目にしていたんです。

パチ

なるほど。たしかにそうやって説明を聞くと、子ども時代からのさまざまな経験のエッセンスがここで統合された感があるね。

それで、B Corp取得支援を請け負うと宣言したら、そのあとは申し込みがどんどん殺到した感じ?

殺到というほどではなかったですけどね。

でも、「絶対この会社は取るべきだし、きっと取ろうとしているに違いない」と思っていたHarchさんに連絡を入れようとしていたら、逆にHarchさんからご連絡をいただいたり、そのすぐ後にはお二人もよくご存じのUMITO Partnersさんからご依頼をいただいたりと、本当に数多くの素敵な会社さんに出会うことができました。

今に至るまでずっと途切れることはないですね。

参考 | UMITO Partners 藤居 料実さん |ひと足さきに、ほしい未来へ – 八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談

ソーシャルグッド雑談 岡 望美さん
三人で一緒に企画・登壇した2023年のPYNTでのイベント「B Corp認証のこれまでとこれから」の様子
雑談の最後に、岡さんが今後どのようなことをしたいと思っているのかを聞いてみました。
我有

岡さんはこれまでと同様に、今年もたくさんの会社のB Corp認証取得を支援されていくって感じですか?

うーん。どうでしょうね。もちろんB Corpの考え方にはとても共感するし、日本のB Corpが社会に増えていくことでいい影響もたくさんあるはずだから、取得支援は続けていきます。でも、それだけでいいのかな…という気持ちもあるんですよね。

私、これまで6年おきくらいに大きな変化がある人生なんです。今その地点にきている気もしていて。

と言うのも、今年、B Corpは数年にわたる準備を経て、大きな変化を自ら起こしました。自分たちの認証設定基準を大きくアップデートして、これまで以上に「責任ある持続可能なビジネス」にフォーカスしたものへと進化させました。

そうした「変化を自ら仕掛ける」という行動を間近で見つめていて、「私自身はどうなのだろう。自らを変化させようとしているだろうか?」と感じていました。

我有

そうなんですね。何か具体的な変化、あるいは進化の方向みたいなものがすでに頭に?

まだ明確に定まっているわけじゃありませんが、日本国内にもたくさんいらっしゃる「意見を表明する機会が十分与えられていない人たち」や「不当に発言機会を奪われている人たち」——英語で言うと「under represented」という表現になるかと思いますが—そういった方たちの存在に気づけるような、そんな活動を増やしていきたいという気持ちがあるんです。

実はこの前、少しパチさんには相談させてもらいましたよね。

パチ

こないだ話した「あれ」ですね。うん。自分たちの身の回りで、基本的な人権が守られていないケースがすごく多いよね。おれの場合、パッと頭に浮かぶのは外国ルーツの日本在住者や障がいがある人、セクシュアルマイノリティや被差別部落出身の方たちかな。

そしてそんな状態に対して、「そうは言うものの、現実には社会から差別や搾取を失くすことって無理でしょう」って言う諦めの気持ちが自分の中にもあることが否定できなくて…。

でも、これって立ち向かわなくちゃいけないものだと思っている。完全に失くすことはできないかもしれないけれど、だからと言って失くそうとしなくていい理由にはまったくならないよね。

そうですよね。でも、こうした自分の身の回りにある不平等や不公正にしっかり立ち向かおうとせずに、「自分は『いい会社』の支援をしています」なんて言うことはできない気もするんですよね。

まだ、これから考えを深め、計画を作っていくっていう段階ですけど、私はパチさんとご一緒したいなって思っているんです。

パチ

うん。もちろんウェルカムです! すごく興味あるし、おれにとっても人権問題は本当に一番強く関心を持ち続けて活動を続けている分野だから。多くの困難が付きまとうであろうとても難しい活動だと思うけど、だからこそ意義深い行動だとも思うし。

…あ、そうだ! 我有さんもどう? 「脱炭素DX研究所 所長」ということで、世間的には「自然環境系の人」ってイメージがある我有さんだけど、その根幹にあるのは人権に対する課題感だよね。

我有

そうなんです。人権や世の中の不公正さについて目を向けるきっかけをくれるような、そんな両親のもとで育ったので、少しでも何か、良い方向へと向かうことに関われたら嬉しいです。

えー、知りませんでした! じゃあぜひ、近いうちに3人でまた作戦会議、いや、雑談させてください。

今、この日の雑談を思い出しながら書いていたら、岡さんのモットーが「Be the change you wish to see in the world」だったことを思い出しました。

岡さんと一緒にだったら、おれも「変化」になれるかもしれない——。そんな思いが強くなりました!

(そしてなんと、そのことを我有さんに話したら「私のモットーも同じなんです!」って。…やっぱりこの2人、似ているのかも。)

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ライター:

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計

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