■ 70歳女性が直面した「想定外の年金額」──その理由とは？

この女性は、自身がパート勤務とはいえ長年働き、厚生年金にも加入していたため、もっと高額の年金を受け取れると信じていた。しかし、実際の受給額は驚くほど少なく、その理由として以下の3点が指摘された。

① 老齢基礎年金の納付期間不足

老齢基礎年金（国民年金）は、満額受給のためには40年間（480か月）の納付が必要。納付期間が短いと受給額は減額される。例えば、納付期間が25年（300か月）であれば、満額（2024年度で約80万円）の25/40＝50万円程度になる。

さらに、未納期間や免除期間があると、その分の受給額が大幅に減る。パートや自営業の期間が長かった場合、知らないうちに未納が発生していることも少なくない。

② 老齢厚生年金の加入状況

厚生年金の受給額は「標準報酬月額」に基づいて計算される。以下のようなケースでは、厚生年金の支給額が少なくなる可能性が高い。

• 勤務先が厚生年金に未加入だった
• 労働時間が短く、厚生年金の加入条件を満たしていなかった
• 標準報酬額が低かったため、将来の年金額に大きく影響した

フルタイムで長年働いた場合と、パート勤務が中心だった場合では、年金額に大きな差が生じる。

③ 遺族年金の受給資格

夫が亡くなっている場合、妻は「遺族厚生年金」を受け取れる。しかし、夫の厚生年金の加入期間が短い場合や、妻がすでに自身の老齢厚生年金を受け取っている場合には、遺族年金の支給額が少なくなることがある。

特に次の点が影響する可能性がある。

• 夫が国民年金のみで、厚生年金に加入していなかった
• 妻が老齢厚生年金を受給しており、遺族厚生年金との調整が行われた
• 夫の加入期間が短かったため、支給額が少なくなった

この女性の場合、夫の遺族年金を期待していたものの、制度の計算により受給額が想定より少なかった可能性がある。

■ 年金を正しく知るために、自分で調べる方法

年金についての知識不足が原因で、「想定よりも受給額が少なかった」と後悔するケースは多い。そこで、年金について分かりやすく調べる方法を紹介する。

① 「ねんきん定期便」をチェック（最も簡単で確実）

ねんきん定期便で確認すべきポイント

• 今までの納付記録（未納期間がないかチェック）
• 将来の受給見込み額（50歳以上の人は詳細な試算が掲載）
• 不足している期間や金額がないか確認

さらに詳しく知りたい場合：「ねんきんネット」に登録すると、過去の年金記録をWEB上で確認可能。

② 「ねんきんネット」を活用（無料＆24時間いつでもOK）

ねんきんネットでできること

• 自分の年金加入記録をリアルタイムで確認
• 将来の受給見込み額を試算
• 年金の未納期間や、納めた金額を確認

登録方法：https://www.nenkin.go.jp

③「年金ダイヤル」に電話で相談

0570-05-1165（ナビダイヤル）
受付時間：月～金 8:30～17:15（祝日・年末年始を除く）

相談できる内容

• 年金の受給資格や金額について
• ねんきん定期便や年金記録について
• 未納期間や追納の方法について

■ まとめ──年金の「知らなかった」は取り返しがつかない

Yahoo!ニュースが報じた70歳女性のケースのように、「思っていた年金額と違う」という問題は珍しくない。年金制度の複雑さと、それに対する国民の理解不足が背景にある。今後、老後の生活に不安を抱えないためには、事前に自分の年金記録を確認し、適切な対策を講じることが重要だ。