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株式会社MTG(東証グロース、コード番号:7806)は2月10日、特別調査委員会が実施した調査報告書を公表した。調査の結果、同社の完全子会社である株式会社M’sエージェンシー(以下「M’s」)において、正式な受注がないまま広告を発注し、請求書の改ざんを行っていたことが判明した。
子会社M’sエージェンシーの社長の不正
M’sは、MTGおよびそのグループ企業の広告を一手に担うハウスエージェンシーとして設立されたが、2021年7月ごろから、M’sの代表取締役(当時)のA氏が、MTGグループからの正式な発注を受けずに広告を発注する行為を繰り返していた。発注後、MTGグループからの受注がなければ、A氏は発注先への支払いを行うため、請求書を改ざんしてMTG財務経理部門のチェックを通過させるなどの手口を用いていた。特に2023年後半には、未受注発注の規模が拡大し、発注先への未払いが累積したことで問題が表面化した。
この問題を受け、MTGは2024年12月に外部専門家を含む特別調査委員会を設置。調査の結果、A氏がMTGグループの正式な発注がないまま広告を発注し、支払いを先延ばしにするために請求書を改ざんするという行為が長期間にわたって行われていたことが確認された。調査報告書では、A氏の行為について「コンプライアンス意識の欠如」と指摘。さらに、子会社管理の不備や、M’sの代表取締役選任時の手続きの甘さも問題点として挙げられた。
MTGは今回の事態を重く受け止め、再発防止策として、コンプライアンス教育の強化、子会社管理体制の見直し、役員選任プロセスの厳格化、内部通報制度の拡充を進める方針を示した。また、関係者の責任を明確にし、必要な措置を検討するとしている。
MTGとは? 美容・健康機器で急成長
MTGは、美容ローラー「リファ(ReFa)」や、トレーニング機器「シックスパッド(SIXPAD)」などのヒット製品を展開する企業で、2018年7月に東証マザーズ(現・グロース市場)に上場した。世界的な著名人と共同開発を行う手法も特徴で、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手とは「シックスパッド」、歌手のマドンナさんとは美容機器の開発を手がけた。
創業者であり現在の代表取締役社長である松下剛氏は、長崎県五島列島の出身。小学生の頃から「社長になる」と公言し、ビジネスを始めていたという。幼少期に自分が養子であることを知り、「いつか松下家に恩返しをする」と決意。最初の事業は、小学生時代にパンダ模様のウサギを繁殖し販売するというものだった。その後、高級シャモの販売で大きな利益を得るなど、独自の商才を発揮した。
「日本一の会社で修業する」と考えた松下氏は、高校卒業後に愛知県へ渡り、トヨタグループのデンソーで働いた。その後、独立して温浴機器や美容機器の開発を手がけ、リファやシックスパッドといったヒット商品を生み出した。最近では、故郷・五島列島の産業振興にも力を入れ、ツバキの成分を活用した製品開発を行う「五島の椿」という新会社を立ち上げるなど、地方創生にも取り組んでいる。
MTGは、これまで積極的なブランド戦略と革新的な製品開発で急成長を遂げてきたが、今回の問題を機に、より強固なガバナンス体制の構築が求められることになる。