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ふるさと納税の返礼品選びが人と地域の縁を結ぶ

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稲作の画像
写真ACより

ふるさと納税について成功事例や地方創生の観点から紹介する。

2022年度に自治体に寄付されたふるさと納税の総額が9,600億円余りと過去最高となった。ふるさと納税は「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設された。いまや1兆円もの規模にまで拡大しているこの制度は、お金という面だけでなくその地域の成長や持続にもかかわり、ないがしろにはできないものとなっている。

1兆円規模に及ぶふるさと納税

2022年にふるさと納税を利用した人は890万人あまりと10年連続で増加、寄付額においても3年連続過去最高を更新し、2022年度は前年度から約1,300億円上回っている。

寄付額が多かった地域のトップ20を見てみると、宮崎、北海道、佐賀、山梨、福井、茨城、新潟などの地方の市区町村がランクインしており、特産品のフルーツや肉、海産物、酒といった飲食物や工芸品がお得に買えるのが人気の理由のようだ。

一方で、住民がふるさと納税でほかの自治体に寄付することで、横浜や名古屋、世田谷区といった都市の市区町村では今年度の住民税の税収が減る見通しとなっている。いずれの地域も減収額は拡大していて、ふるさと納税による税の流出が進む傾向が続いているという。

都城市成功の背景

寄付額が最も多かった宮崎県都城市は、宮崎牛やブランド豚、地鶏、地元の焼酎などからゴルフ用品や工芸品まで幅広い返礼品を用意しているが、8年前の1年間だけはある2品だけに絞った。独自色を出すための一点突破のマーケティング戦略で、全国的な品評会で日本一に輝いた宮崎牛と、売り上げ日本一の地元メーカーの芋焼酎だけに絞ることで「宮崎牛と焼酎の街」として認知度を高めることを狙ったのである。

その戦略が功を奏して全国での知名度が飛躍的に上がり、ふるさと納税の寄付額の増加だけでなく、取り扱いを再開した他の返礼品の申し込みにもつながったことが、寄付額最多となった背景だ。

また「宮崎牛と焼酎の街」としての認知が広まったことを生かし、牛肉と焼酎を地元で味わうことができる「ミートツーリズム」というツアーを立ち上げている。昨年度、このツアーには過去最多となる3万7,800人が市を訪れたといい、ふるさと納税が新たな取り組みと地域の活性化へとつながっている。

地方創生とふるさと納税

1兆円を目前とするふるさと納税が地域に及ぼす影響は大きい。ふるさと納税が地方創生に直結するわけではないが、都城市の例を見ればわかるように、それが生み出すものはお金だけではないのである。

トラストバンク地域創生ラボ調査の「ふるさと納税体験に関する調査」によれば、ふるさと納税がきっかけで「地域のファンになったことがある」は約4割、「知らなかった自治体・特産品を知った」と答えた人はおよそ7割だという。

地方創生には、その地域に住んでいる人はもちろん、住んでいなくてもそこに関わる人たちの存在が必要不可欠だ。「関係人口」という言葉もあるように、その土地にいなくても何らかの形でその地域との関係が続いていく人達の存在は、地域の持続や活性化につながる。お金をその地域に払ったり、情報を拡散する一助となったり、不定期でもその地に足を運んだり、その際に情報を運んできたり、新たなつながりによって関係人口が増えたりと、さまざまなところでその地域に良い影響をもたらしてくれる。逆に言えば、関係人口が少なくなるほどその地域の持続性は低くなるだろう。

ふるさと納税は、その関係人口を増やすきっかけとなる絶好の機会だ。マーケティングがうまくいけば、多くの人が名前を知らないような小さな地域でも認知を拡大することができる。ふるさと納税によって資金を調達できれば、その地域の暮らしをより豊かにすることができ、魅力が増すことで人口流出を防いだり、外部からの流入があったりと、持続する地域社会の構築につながる。また、地域の内外での交流が活発になることで新たな価値創造ができたり、地域の可能性を底上げするといったことも望める。

一方で、マーケティングがうまくいかない、できていない地域はどんどん差をつけられていってしまう。従来から地域によって資金面等での差はあったものの、それがよりはっきりと分かれてしまうことになるかもしれない。今や、ふるさと納税におけるマーケティング戦略は、その地域の未来を左右するものとなっている。

人と人との関係と同じように、一度つながった縁はそう簡単には切れない。ふとその県や地域の名前を見聞きした際に「そういえばこの地域にふるさと納税したことがあったな」と思い出したり、「今度その県に行くから寄ってみよう」といったきっかけになったりと自分の”引き出し”の中にしまわれていたものが時折取り出され、細く長く縁は続いていく。

ふるさと納税は、日本各地で人と地域との縁を結ぶ制度だ。自治体がそれを意識したマーケティング施策をすることも重要だが、私たち納税者もそれを頭の片隅に置いておいても良いだろう。お得なものを購入することも良いし、ずっと帰っていない生まれ故郷や、どこか応援したい地域、ちょっと気になっている地域があるなら、そこにふるさと納税をすることも検討してみてはいかがだろうか。

[参考]
ふるさと納税額 過去最高 寄付額ランキング上位 都城・紋別の戦略は | NHK
総務省|よくわかる!ふるさと納税
今や1兆円規模!ふるさと納税から見えてきた持続可能な社会 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

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ライター:

フリーライター。昔から感想文や小論文を書くのが好きで、今なお「書くこと」はどれだけしても苦にならない。人と話すのが好きなことから、取材記事の執筆が主軸となっている。新潟県で田んぼに囲まれて育った原体験から、田舎や地方への興味があり、目標は「全国各地で書く仕事をする」こと。

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