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シンガポールの水素発電最前線!ジュロン島での大規模プロジェクトとは

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ジュロン島の工業団地のイメージ画像
DALL-Eで作成

シンガポールの電力企業パシフィックライト・パワー(PLP)は1月3日、同国のジュロン島に水素燃料に対応する複合火力発電所を建設・所有・運営する契約を、シンガポールエネルギー市場監督庁(EMA)から獲得したと発表した。本プロジェクトの総工費は約7億3500万ドル(約1160億円)にのぼる。

シンガポール政府は、脱炭素化とエネルギーの安定供給を目指し、クリーンエネルギー技術の導入を加速させている。

PLPの新発電所、シンガポールの電力供給をどう変える?

PLPによると、この発電所は600メガワットの発電能力を持ち、2029年1月までの完成を予定している。完成すれば、シンガポール最大の水素燃料対応発電施設となる。さらに、PLPの既存および建設中の発電施設の発電容量を64%引き上げることが見込まれている。

PLPは、インドネシアの富豪アントニー・サリムが支援する企業グループの一員であり、フィリピン最大の電力小売業者であるマニラ電力の子会社である。同社の新発電所では、大規模な電池エネルギー貯蔵システムを統合し、初期段階では発電の30%以上を水素燃料で賄う計画だ。将来的には、全発電を水素で行うことを目指している。

600メガワットはどのくらいの規模?他の発電所と比較

ところで、600メガワットという発電能力は、一般家庭約48万世帯分の電力供給に相当する。以下、他の発電所との比較を示す。

  • 東京電力・柏崎刈羽原子力発電所(日本):820万キロワット(600メガワットの約13.6倍)
  • 関西電力・大飯原子力発電所(日本):470万キロワット(600メガワットの約7.8倍)
  • アメリカ・グランドクーリー水力発電所:6800メガワット(600メガワットの約11.3倍)
  • 一般的な火力発電所(日本国内):1000〜1500メガワット
  • 洋上風力発電所(大規模・欧州):100〜500メガワット
  • 日本最大の水素発電所(予定)レゾナック・川崎事業所(2030年完成予定):100メガワット以上

このように、600メガワットの発電所は、一般的な火力発電所の半分程度の規模でありながら、大都市の電力需要の一部を賄うことができる規模となる。

今後の展望:シンガポールと日本の水素発電の比較

また、日本国内では以下の水素発電所が注目されている。

  • レゾナック・川崎事業所(2030年稼働予定):発電能力100メガワット以上。LNGと水素の混焼からスタートし、最終的に水素専焼発電を目指す。
  • JERA・袖ケ浦ゼロエミッション火力発電所:水素を使用した環境配慮型発電を目指している。
  • 福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R):世界最大級の水素製造装置を備えた実証プロジェクト。

このように、日本では現在100メガワット規模の水素発電所が計画されており、シンガポールの600メガワットの水素対応発電所と比べると、まだ発展段階にあることがわかる。

シンガポールでは、ジュロン島の新発電所を含めた大規模な水素発電の導入が進んでいる。日本ではレゾナックの川崎事業所をはじめ、100メガワット規模の水素発電所が開発中であり、2030年代に向けて水素エネルギーの活用が加速する見込みだ。

シンガポールと日本の水素発電の大きな違いは、導入のスピードと規模である。シンガポールは一気に大規模な水素発電に取り組む一方、日本では段階的に規模を拡大し、技術検証を進めながら発展させている。今後、日本の水素発電がどこまで拡大し、シンガポールと並ぶ規模に達するのかが注目される。

ジュロン島とは?シンガポールのエネルギー戦略の要

ところで、ジュロン島は、シンガポール南西部に位置する人工島であり、シンガポール最大の工業地域の一つとして機能している。もともとジュロン工業団地の沖合に存在した複数の島々を埋め立て、一つの島として統合したものである。埋め立て工事は1990年代に開始され、2009年に完工し、現在の面積は約32平方キロメートルに達している。

本島とは2.3キロメートルのジュロン島高速道路によって結ばれており、島全体が高度なセキュリティ管理下に置かれている。石油化学産業の一大拠点であり、多くの世界的企業が製造・精製拠点を構えている。

ジュロン島の歴史と発展の軌跡

ジュロン島の起源は、もともと7つの小さな島々から成り立っていた。1960年代までこれらの島々には漁村が存在し、住民たちは伝統的な木造家屋で生活していた。しかし、シンガポール政府の経済成長戦略の一環として、1970年代以降、石油精製および化学産業の拠点として開発が進められた。

1991年、シンガポールの工業開発を担うJTCコーポレーションがジュロン島開発プロジェクトを担当することが決定され、本格的な埋め立て工事が1995年に開始された。2000年には、ゴー・チョク・トン首相(当時)立ち会いのもと公式開設され、2009年には最終的な埋め立てが完了した。

シンガポールのエネルギー供給を支えるジュロン島の役割

現在、ジュロン島には多くの石油化学関連企業が拠点を置いており、シンガポールのエネルギー供給と産業発展を支える重要な拠点となっている。エクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、住友化学、三井化学など世界的な企業が進出し、石油精製や化学製品の製造を行っている。

また、シンガポールは液化天然ガス(LNG)のアジアハブとしての地位を確立することを目指しており、ジュロン島にはLNG受け入れ基地が整備されている。2024年中には受け入れ能力を1100万トンまで拡大する予定だ。

今後の展望:ジュロン島がシンガポールの未来を担う

シンガポール政府は、クリーンエネルギーの導入を加速させる一環として、水素発電の開発を推進している。ジュロン島に建設されるPLPの新発電所は、シンガポールの脱炭素化政策の象徴的なプロジェクトといえる。

同国は、エネルギー供給の多様化と環境負荷の低減を同時に達成するため、水素や再生可能エネルギー技術の活用を進めている。ジュロン島が今後どのような形でシンガポールのエネルギー政策に貢献していくのか、引き続き注目される。

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サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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