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ポリコレ終了 トランプの影響でメタとアマゾンがDEI施策を廃止 多様性見直しの背景

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相次ぐ米大手企業の多様性政策後退はトランプ忖度か、それとも法的リスク回避か?

米大手企業のDEI政策廃止

米メタとアマゾンが、多様性を尊重するDEIの取り組み(Diversity, Equity, and Inclusion)の廃止を相次いで発表した。ロイターが報じたところによると、メタは社内通知で、採用や社員教育、取引先選定におけるDEI施策を終了する方針を示し、アマゾンも「時代遅れの取り組み」を段階的に廃止するとした。

メタ、ファクトチェック廃止と共和党員の起用

メタは1月10日、従業員向けの社内通知で、採用、社員教育、取引先選定におけるDEI施策を廃止すると発表した。この決定は、同社がトランプ政権に対してより親和的な姿勢を示すものとして注目されている。

同時に、メタは米国内で投稿内容の真偽を検証するファクトチェック機能も廃止した。また、著名な共和党員であるジョエル・カプラン氏を渉外担当責任者に任命し、さらに総合格闘技団体UFCの最高経営責任者(CEO)で、トランプ氏と親しい関係にあるダナ・ホワイト氏を取締役に起用するなど、保守派との結びつきを強めている。

アマゾンの通知内容にも「多様性廃止」の方針が明記

アマゾンも、2024年末までにDEI施策を段階的に廃止する方針を示している。同社が昨年12月に従業員向けに発表した通知には、「時代遅れの取り組みを廃止する」という表現があり、多様性と包摂性に関する施策の見直しが具体的に示されている。アマゾンは、こうした方針変更の背景に、米国における保守派の反DEI運動の高まりがあることを暗に認めているとされる。

トランプ氏の影響力拡大で企業方針転換?

これらの動きは、トランプ次期大統領の影響力によるものだとする見方が広がっている。実際、メディア報道ではトランプ氏がこうした動きを自らの影響力の証左と捉えているとも伝えられている。

ただ、企業の方針転換がすべてトランプ氏の影響によると判断するのは早計だろう。では、背景には何があるのだろうか。

多様性政策の見直し、その背景にある「法的リスク」とは?

まず第一に考慮すべきは、これが企業としての法的リスクヘッジの一環という点だ。2023年、米連邦最高裁は大学入試における人種的マイノリティの優遇措置、いわゆるアファーマティブ・アクションを違憲と判断した。

この判決により、企業が引き続きDEI施策を推進することは、違法行為に該当する可能性が生じた。こうした法的リスクを避けるために、メタやアマゾンが多様性政策を見直すのは、企業コンプライアンス上当然の対応と言える。

保守派の勢いと「トリプルレッド」の影響

一方で、DEI施策の見直しは、米国社会における保守派の影響力が強まっている現状とも無関係ではない。特に2024年の中間選挙で共和党が「トリプルレッド」と呼ばれる上下院と州知事選での圧勝を収めたことが、保守派の自信を高めた。

保守派は、企業の「過剰なポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)」に反発し、訴訟をちらつかせるなど圧力を強めている。

「プロジェクト2025」とは?保守派の政策方針に企業はどう対応するか

影響として大きいものに、保守派の政策提言集「プロジェクト2025」があげられる。プロジェクト2025は、次期共和党政権における政策の青写真として策定されたもので、政府機関の改革や社会政策の見直しが含まれている。

その中には、DEI施策を「不必要な官僚的手続き」として批判し、廃止または縮小を推進する方針も盛り込まれている。

プロジェクト2025は、保守派シンクタンクであるヘリテージ財団を中心に、複数の保守系団体が協力して策定したもので、次期共和党政権が即座に実行可能な政策集として準備されてきた。提言として企業にとっても無視できない影響力を持ち、DEI施策を継続することへの法的リスクや政治的圧力を増大させている模様だ。

SNSの反応は?多様性政策の後退に賛否両論

今回のメタとアマゾンの方針転換を受け、SNS上では様々な反応が寄せられている。

「行き過ぎたポリコレに対する反動が来ている。Facebookのファクトチェック廃止も、ザッカーバーグがやりたくなかったことを片付ける良いタイミングだったのでは」

「アメリカは多様性を優先しすぎて疲弊していたのかもしれない。トランプ大統領の登場は、それを言い訳に戻るための好機だったのだろう」

「メディアはトランプに忖度しているように見えるが、実際には法的リスクが企業の判断を促した側面が強いのではないか」。

企業の多様性政策後退、法的リスクか社会的変化か?

米国企業の多様性政策後退は、単に「トランプ大統領の影響」とするだけでは見誤る。もちろん、保守派の勢いが背景にあることは否定できないが、法的リスク回避や企業の利益優先の姿勢も重要な要因だ。

振り子の針が一方に振れすぎれば、反対方向に戻るのは歴史の常である。DEI施策のバックラッシュはその典型例だ。

日本企業への影響——本質を見極める時

また、米国におけるDEI政策の行方は、日本企業にとっても無関係ではない。日本でも多くの企業が流行のように多様性施策に取り組んできたが、その本質を理解して継続するのか、それとも単なる流行として終わるのかが問われる局面にある。

歴史は常に変化する。その変化をどう捉え、対応するのか。企業のリーダーシップが試される時代に突入している。

【DEIをめぐるグローバル潮流やD&Iのその他の報道はこちらから】

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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