日本生産性本部は2024年3月末決算の東証プライム上場企業1,130社を対象に行った、有価証券報告書における人的資本開示状況調査の結果(速報版)を公表した。
男性の育児休業取得率は50%以上の企業が6割を超えるなど、取り組みの進展が見られる一方で、女性管理職比率や男女間賃金格差は依然として課題が残る現状が明らかになった。
男性育休取得率は大幅に向上
男性の育児休業取得率は、50%以上が64.8%と、昨年の44.9%から大幅に増加した。
業種別に見ても全業種で増加しており、女性管理職比率や男女間賃金格差と比較して、取り組みの成果が表れやすいことが伺える。
女性管理職比率は低迷、賃金格差も縮小傾向ながら依然として大きい
一方で、女性管理職比率は、5%未満の企業が46.0%(昨年は48.2%)、15%未満が83.2%(昨年は84.1%)を占め、いずれも昨年より微減したものの、依然として低い水準にとどまっている。
業種別に見ると、サービス業、金融・保険・不動産業、情報通信業の順で高く、鉱業・建設業、電気・ガス業が低い傾向が見られた。
男女間賃金格差は、男性を100とすると女性は全体平均で71.4と、昨年の70.8より縮小した。しかし、70~75未満の企業が24.0%、75~80未満が23.2%と、70~80未満の企業が約半数を占めている。
業種別の賃金格差は、情報通信業が76.4でもっとも小さく、製造業、サービス業と続く。一方、金融・保険・不動産業が64.0ともっとも大きい結果となった。
人材育成方針や社内環境整備方針に関する記載は増加傾向
有価証券報告書における人的資本に関する記述の文字数は、1,000~1,499字が最多で全体の20.9%を占めた。
記述内容としては、「人材」が最も多く、次いで「育成」「経営」「環境」の順となった。
「経営」という言葉は昨年と比較して約1,000回増加しており、人材戦略と経営戦略を連携させようとする企業の意識の高まりが伺える。
今回の調査結果から、男性の育児休業取得率は改善が見られるものの、女性管理職比率や男女間賃金格差の改善には、引き続き長期的な視点に立った取り組みが必要であると言えるだろう。
【参照資料】
2024年3月末決算東証プライム企業「有価証券報告書における人的資本開示状況」(速報版)概要
調査結果の詳細は、日本生産性本部の調査研究・提言活動サイトご参照
【日本生産性本部「人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ」について】
人的資本経営の測定・開示のあるべき姿と人的資本指標の具体的な活用を討究・発信することを目的に、2023年4月に設置。学識者と企業実務家(東証上場企業の人事部門)で構成し、一守靖 事業創造大学院大学教授が座長を務める。本WGでは、2024年7月23日、企業の取り組み状況のヒアリングやアンケート調査などを取りまとめた報告書「人的資本の測定と開示が企業経営に与える影響」を公表している。