「長時間労働」と「人材不足」が課題の建設業界。2024年4月まで時間外労働の上限規制の適用の猶予期間が設けられ、各企業が解消に向けて業務効率化のDXチームなどを発足させるものの抜本的な解決は道半ばである。そんな中、現場監督向けの業務効率化アプリなどで働き方改革推進ソリューションを提供するのが、スパイダープラス株式会社である。今回は、建設業界の課題解消のために開発した建築図面・現場の業務効率化アプリ『SPIDERPLUS』と、モノづくりを担う将来の人材の育成を支援する「アカデミックプラン」について、スパイダープラス株式会社海外事業部の北野哲さんに伺った。
◎聞き手・撮影:加藤 俊
導入数49,000名超の現場監督の強力な助っ人。20時間/月以上の業務効率化で建設業を救うアプリ
加藤
北野
『SPIDERPLUS』は、建設・メンテナンス業向け図面・現場管理アプリです。本アプリの想定ユーザーは「現場監督」です。現場監督は日々大量の管理作業に忙殺されています。建設時のエビデンスとなる膨大な検査記録写真や検査データメモ、随時更新される大量の図面や資料、そして工程や人員、安全、資材など、これら全てを現場監督が作成、管理しなければなりません。仕事の膨大さから、現場監督を目指す若手も減少していました。こうした人員不足と長時間労働を解消するために生まれたのが『SPIDERPLUS』です。作業をデジタル化し、クラウドベースで運用することで大幅な業務効率化が実現でき、ユーザーアンケートでは40%以上が20時間/月以上業務効率化できたと回答しています(2020年3月実施ユーザーアンケート調査より)。
kato
2024年4月1日から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用予定の建設業界ですが、『SPIDERPLUS』の活用によって助かる企業は非常に多そうですね。
北野
必要性を感じていただいているのか、ありがたいことにユーザー数は49,000名を超え、1,200社以上の企業で導入いただいております(2022年3月現在)。
北野
建設業界は就業者数が500万人を切っており、特に若年層の不足が課題となっています。離職率を減らし、若者を増やしたいという思いで、2021年7月5日から『SPIDERPLUS』の教育機関向けライセンス「アカデミックプラン」の提供を開始することに決めました。
建設Techで現場の課題を解決、完全無償「アカデミックプラン」で学生にアドバンテージを
加藤
教育機関向けのアカデミックプランとは何でしょうか?
北野
建築・土木・建設を学ぶ教育機関および職業能力開発に特化した施設の教員等と学生を対象に、『SPIDERPLUS』を教育カリキュラムの一環として活用するプランです。図面管理や帳票出力など現場で必要となる機能を学生のうちに学ぶことで、即戦力人材を育成することを目的としています。モノづくりに携わる未来の若手を応援したいという気持ちから、IDを無償提供し、初期費用、サーバー構築費、月額使用料なども一切いただかず提供しています。
加藤
無償提供というのは思い切った決断ですが、どのような経緯があったのでしょう?
北野
サービス内容に相当自信がありましたし、開発にもエネルギーをかけてきたので、当初は一部有償提供の話も出ていました。しかし、アカデミックプランを始めた理由は、希望を持ってモノづくりを仕事とした若者たちが、大量の現場写真を撮影し、膨大なデータをエクセルで管理することで1日を終えてしまうことを防ぐことにあるため、やはり無償提供で進めるべきだと思いました。
加藤
北野
もちろん実際に入社してから『SPIDERPLUS』の操作手順を覚えることも可能ですが、学生のうちからしっかりと学んでおけばより深く使いこなすことができますし、仕事を進める上で非常に有利な武器となるはずです。
他社と共同開発した部分もあったので完全に無償提供できるか不安だったのですが、こうした思いや今後のビジョン、そして業界の未来がこのアプリにかかっていることをお伝えすると、共同開発したゼネコンさんもご快諾くださいました。
加藤
アカデミックプランをスタートさせた時の学校側の反応はいかがでしたか?
北野
無償という点に対して、「ありがたい!」と仰っていただける一方、「本当に無償?どこかで有料になるのでは?」とお考えになる方もいらっしゃいました(笑)。現場の講師の方々は「すぐ取り入れたい」という反応で、大学側としては「シラバス(授業計画)に合わせたものが欲しい」というご要望が多かったですね。実際に導入いただいた大学の教授からは、「学生からの評判も好評。来年もぜひ使いたい。他の学校にも紹介したい」という嬉しいお声をいただいております。
また、『SPIDERPLUS』のユーザー企業が求人を出す際に、「SPIDERPLUSを導入中」と明記してくださっているので、学生さんも授業で習った『SPIDERPLUS』が使える企業なのだと好印象を持ってくれることもあるようです。
加藤
学生にとって将来使うことになるツールを学校で学べるのは非常に役立つでしょうね。
北野
現場で必要なやりとりやコミュニケーションを早い段階から学べるというのはかなりアドバンテージになると思います。『SPIDERPLUS』は専門性の高いツールなので、基本機能だけでなく、全てを使いこなそうとすると時間がかかります。ユーザー企業には弊社のカスタマーサクセスチームがサポートしますが、学生のうちから学んでいた方が絶対に楽なので、ぜひ使ってみてほしいですね。
建設業の生産性向上・働き方改革ツールとして業界標準を目指す
加藤
今後、『SPIDERPLUS』をどのように展開していきたいとお考えですか?
北野
業界での標準化を目指しています。エクセルが中学高校の授業で教えてもらうように、『SPIDERPLUS』も学生のうちから慣れてもらえれば現場の教育コストが削減され、働き方改革につながるはずです。2025年度の国内の建設業に新卒で入社する人は3万5千名と当社では推計していますが、そのうちの1割である3500名以上にSPIDERPLUSで学んでもらうことを目指しています。
加藤
建設業の働き方改革を進めるツールとして『SPIDERPLUS』には期待がかかりますね。
北野
様々な作業をデジタル化することで、長時間残業や危険な現場を減らすことができます。そのぶんモノづくりにかける時間を捻出でき、より仕事が楽しくなると思います。まさにこれこそ私たちがスローガンに掲げる「“働く”にもっと楽しいを創造する」だと思うので、モノづくりに集中するためのツールの一つとしてぜひ『SPIDERPLUS』を検討してほしいと思います。
◎北野哲(きたの・あきら)……関西大学商学部を卒業後、グッドウィル・グループに入社。その後IT×不動産の営業責任者として、04年にエリアクエスト戦略子会社の取締役。06年よりスタートアップITベンチャーにて事業開発に関わり翌年より取締役。副社長、人材開発責任者としてシンガポール法人、福岡支社などの立ち上げを担当。19年より中国IT大手のパクテラ・グループ日本法人にてブランディングと人材開発を担当。21年5月より建設SaaSのスパイダープラス株式会社の海外事業とアカデミックプラン事業を兼任。
◎会社概要
社名 スパイダープラス株式会社
URL https://spiderplus.co.jp/
所在地 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目12番5号 東京信用金庫本店ビル 7階
TEL 03-6709-2830(代表)
Fax 03-6709-2837
代表 伊藤 謙自
創業 平成9年9月