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株式会社土屋

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〒715-0019岡山県井原市井原町192-2久安セントラルビル2F

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女性管理職増加と男性育休制度に見る土屋のダイバーシティ

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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(画像提供:土屋)

介護のトータルケアカンパニーとして、創立3年で2,500名を超えるグループに成長した当社では、多様な人材が活躍できる企業を目指し、ジェンダー平等の観点から女性管理職比率の向上や男性育休制度等に力を入れています。

当社におけるダイバーシティの取組みを、具体的なデータ等を元に代表取締役・高浜敏之がお伝えします。

■ダイバーシティの意義

土屋グループのメイン事業である重度訪問介護は、それ自体がD&I(ダイバーシティ・インクルージョン)を実現するためのサービスであり、事業そのものがダイバーシティと直結しています。

当社にとってダイバーシティとは、企業価値を向上させるための手段ではなく、その実現自体が目的であり、我々自身がダイバーシティと反するようなモノトーンの組織であると、当社への信頼性が大きく損なわれます。

そのため、当社ではダイバーシティは「追求すべきもの」として大きな位置を占めています。そもそもダイバーシティ実現の必要性として、「多様な社会こそ正しいあり方」ということが挙げられます。

我々が生きている生態系自体も、多様であることそのものが生態系を維持するための条件であり、例えばクマがいることによって森が守られ、森が守られることによって水が生み出され、水が生み出されることによって我々が生きていられるというエコシステムの下にあります。

そうした中で、危険な害獣としてクマが駆除され、森が枯れていく現状があり、それによって我々の生命自体に危機が迫っている。

つまり多様性に反する視点は、ものの見方を表層的にし、自身にとってストレスのない状態を限りなく追及すると、どうしても同質性が強くなってしまいます。

そして結果的に我が身を滅ぼすというところでは、生態系でも社会でも同じことが言えます。つまり、多様性を維持することそのものが、社会ひいては自社を維持するための条件であると思います。

そのため当社では、ジェンダーイクオリティ委員会や人事部が中心となり、女性管理職比率の向上や育休制度に力を入れ、多様な人材が活躍できる場を創造しています。

私自身、内閣府『輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会』に参加して、政財界の中心的な役割を果たしている方々と意見交換・勉強の場を持たせていただき、ダイバーシティの重要性を認識しつつ、それを会社のあり方に反映させています。

■取組み① 女性管理職比率を高める

当社の創立時点では、女性管理職の割合は30%でしたが、この3年間弱の取組みを通じて、現在は40%を超えています。

ジェンダー平等を進める具体的な取組みとして、「意識改革の推進」が挙げられます。

とりわけ管理職においては、「男性はできないのにやりたがる、女性はできるのにやりたがらない」という傾向が強くあり、管理職を打診した場合、男性はすぐに承諾しますが、女性は「少し考えさせてもらっていいですか」、「私なんか無理です」と必ず言います。

けれど、色々と話し合っていくうちに「じゃあ、やってみようかな」と多くがなるものです。しかも、いざやってみると女性の方が上手くできる場合が多い。

こうしたことから、女性の内面化した自己否定観や遠慮がちという面を、コミュニティの設立や啓発を通してエンパワーメントしていますが、男性リーダーがそれに対して前向きでなければ阻害要因になるため、当社ではとりわけ男性リーダーの意識改革ならびに対応の仕方に力を入れています。

例えば、多くの男性リーダーの意識の中には、男性は指示に対して軍隊的に従うのに対して、女性はいちいち「いや、でも…」と始まる上に相談も多いので面倒だ、という思考が確かにあり、女性リーダーをあまり作りたくない、男性と仕事がするほうが楽だと考えるケースが少なからずあります。

しかし、そうした男性リーダーでは、管理職の打診を女性に断られた時点ですぐに了承してしまい、女性リーダーが育成されないので、呼びかける男性側の価値観を変えることが非常に大切となります。

現実的にヒグマは無理という気持ちは分かりますが、危険だからと“駆除”していると、やがて森が枯れ、我々が枯れるように、多様性がなければ会社が危機に瀕するという「想像力」の喚起が必要です。

あるシンクタンクの調査では、女性が少ない組織はリスク感覚が弱く、深刻な危機をもたらす可能性が高いとされています。

多くの場合、女性から「それでは危ないのでは。こうした方がいいのでは」などの「適切なためらい」がもたらされ、女性が一定数以上いることにより組織の安全運行につながります。

男性ばかりだと時速140キロでぶっとばし続け、某大手中古車販売会社のようになる。

つまり、男性リーダーが自分の心地よさを重視して選択したことが後々、自分が乗っている船を座礁させる危機につながると認識すべきです。

そこで、こうした意識を伝える機会を持ったり、研修会等の開催、ジェンダー平等の意識が低いリーダーには個別で査問したりと、意識改革を図っています。

また、女性はリスク感覚のみならず細部に対する気づきも深いので、私自身、会社の女性リーダーや妻に相談するよう努めています。

こうした複合的な取組みが、3年間での女性管理職比率10%の向上につながったと考えます。

■取組み② 育休制度の確立

従業員にはもちろん、社を離れた自身の生活があり、私自身、社内のみならず社外のジェンダー平等に対する問題意識も以前より強く持っていました。

当社では創立当初、女性の育休取得率がほぼ100%だったのに対し、男性は30%ほどしかなく、ここに大きな課題がありました。

男性の育休取得率が低い原因を調査した結果、男性は家庭における主たる生計取得者であり、育休制度の下では給料が60%ほどに減ってしまうことから、本人のみならず奥さんも困ってしまい、育休取得に対して消極的になっていることが分かりました。

育休手当が100%でないことが大きな要因であることを見出したため、当社では男性社員に育休取得を促すべく、ジェンダーイクオリティ委員会と人事部が共同し、初めの1か月は給与の100%保障を実現しました。

しかし、100%保障すると公費は使えません。

公費で60%支出し、残りの40%を会社で負担することができない制度になっているため、当社の福利厚生として初めの1か月は全額会社が負担し、「業務として」男性に育休取得を義務付けました。

かつ、業務であることから、取得後に育休体験のインタビューを受けてもらう制度を作りました。こうした取組みで、男性育休取得者も当初の30%から、現在は100%となっています。

これはダイバーシティの取組みの大きな成果であり、なによりも従業員の奥さんがすごく喜んでくれましたね。たかが1か月、されど1か月です。

それに、男性が家事育児の現場を体験することで、その大変さを認識して女性を尊重する姿勢が身に付いていっていると感じます。

できれば、その後も公費を使って、給料は下がりますが、女性と同じく育休制度を利用してほしいとは思っています。

育休ブログ:https://tcy.co.jp/recruit/blog/

■今後の取組み

女性管理職比率に関しては50%を目指しており、まずは取締役の比率を現在の約35%から50%に上げる考えです。

とはいえ、役員や他の候補者から「不平等だ」「女性をえこひいきする視点自体が女性差別の裏返しだ」というステレオタイプの批判があるのも事実です。

残念ながら、ここにはアファーマティブ・アクション(積極的差別待遇)に対する理解が足りておらず、男性と女性ではそもそもスタートライン、置かれている環境が違います。

男性は仕事においてキャリアを積むことが正当化されてきた一方、女性は育児期間等でキャリアの連続性が損なわれたり、社会全体の中で家事は女性がするもの、上には男が立つものといった、いわゆるバイアスがあります。

女性が様々な面でハンディキャップを負っている中で、アファーマティブ・アクションは、男性が5歩10歩前にいるハンディを平等にするための逆差別なわけです。

これをもって初めてスタートラインを同じ位置にできる視点だと思っていますので、それに対する理解を求めながら、一方で感情に配慮しつつ慎重に進めています。

今後2、3年以内には取締役会の男女比率を50%にし、これをモデルに他の部門でも女性比率の向上を進めていく予定です。

なお、当社では全従業員の女性比率自体は70%であり、ここには「ケア労働=再生産労働は女性の仕事」というジェンダー不平等が現れていると考えます。

そのため、入り口の時点で男性が増え、全体構成比で男女比が同率となり、そのバランスがレイヤーが上がっても維持されるのが望ましいですね。

とはいえ、こうした男女の二項対立思考だとLGBTQが埒外に置かれます。

この思考自体、ダイバーシティに対する忘却なので、次のステップとして、会社の中でLGBTQに対する「SOGIハラスメント」、性的指向性に対する差別という社会課題について、もっとオープンに議論できるような土壌を作っていきたいです。

■現在の課題と今後のビジョン

我々は障害者のサポートを中心とする企業ですが、恥ずべきことに、障害者雇用率を全く満たせていません。

事業特性上、困難であるのは事実ですが、最低限、法定雇用率は満たすべく取組んでいきたいです。

例えば発達障害をお持ちの方では、得意な分野と不得意な分野が極端にある傾向が高いので、スタッフがコミュニティとして高齢者をケアできるデイサービスやグループホーム等で就労することは可能だと思います。

我々が障害者雇用率を上げる条件の一つに、事業ポートフォリオの再編、つまり施設系サービスを増やすことが必要だと考えています。

その次のステップで障害を持つ方が活躍できる会社になる。私自身、若い頃にアルコール依存症となり、精神障害3級の手帳を取得しました。

当時、私がいたコミュニティではほとんどの方が障害を持っていたので、その際は市民権を得たという感覚がありましたが、そのような感覚で、身体障害者手帳を持っていることは恥ずかしいことではなく、運転免許証と同じくらいの意識で語れる風土、つまり自分自身の特性を違和感なく受け入れられるような文化風土を当社に生み出せればと思います。

また、内閣府『輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会』の去年のイベントで、武田薬品工業株式会社の代表取締役社長が、「ジェンダーだけでなくジェネレーション・ダイバーシティも必要」だと強調されていました。

我々もジェネレーション・ダイバーシティを意識し、若い人たちの機会の場をしっかりと作り、新しい社会イメージというもののひな形になれれば嬉しく思います。

かつ、ダイバーシティが倫理的な取組みだけではなく、持続的発展すなわち生産性や成果に結びつき、ビジネスの売上と利益が安定して生み出され好業績につながった時に初めて、ダイバーシティが総合的に見て重要だと言えます。

「ダイバーシティとは組織風土のデザインである」と言われるように、世代・性差・障害の有無・国籍の多様化された組織風土を作り、それを経済的価値に結び付けることで、ダイバーシティの重要性、そして多様な社会を実現することを目指している我々自体が多様であることを説得力を持って伝えられるような環境を作りたいと考えています。

◎会社概要
会社名  :株式会社土屋 https://tcy.co.jp/
所在地  :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F
代表取締役:高浜 敏之
設立   :2020年8月
事業内容 :障害福祉サービス事業及び地域生活支援事業、介護保険法に基づく居宅サービス事業、講演会及び講習会等の企画・開催及び運営事業、研修事業、訪問看護事業

◎代表プロフィール
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高浜 敏之
1972年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒。大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。2020年8月に㈱会社土屋を起業。代表取締役兼CEOに就任。2023年1月には、重度障害者を24時間在宅で支援する重度訪問介護事業所「ホームケア土屋」を全国47都道府県に広げる。ALSなどの難病や重度の障害があっても、望む地域で望む人と安心して暮らせる社会の実現を目指し、日々奔走している。

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