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ポストSDGsに向けて産学官民の可能性を追求する行政マン

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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齋藤数弘さん
齋藤数弘さん 提供:佐藤慎一

NPO法人新しい公共のカタチ the Fourthは、様々な分野においてヒト・モノ・情報とのマッチング機会を創り出すことで、地域社会が抱える課題の解決、活性化及び住みよいまちづくりの発展に貢献し、もって地域、企業及び自治体が特色ある活動を行うことで、豊かで個性に富んだ地域社会の創出に寄与すると同時に、これを全国に発信し広めていくことを目的としている。

今回は、現職の公務員でもある、理事長の齋藤数弘さんに、ポストSDGsの日本の救世主になりえる「新しい公共のカタチ」について伺った。

現職公務員が立ち上げるNPO いったいなぜ?

現職の公務員がNPOを立ち上げて運営をしている。これまでの感覚だと少し驚いてしまうところですが、どのようなきっかけでこのNPO法人を立ち上げたのでしょうか?

齋藤

これまで私は行政の業務の中で、数々の官民連携を実現してきました。

しかしながら、ここには問題があったのです。1つは、行政主導のため、予算に依存していること、そのため動きが遅いこと、そしてイノベーションが起きにくいことです。

さらに、2つ目は、行政は短い期間で人事異動が行われ続けるため、ナレッジや人脈が俗人的になり、新しく着任した行政官が0から始めるにも関わらず、プロジェクトを主導しなければならず、予算の使い方も非効率的になりかねないという落とし穴があるのです。

衣類のリサイクル
図 1 実際に官民連携のアプローチを行った課題(アプローチは図3にて)

それは、齋藤さんの役所だけの話でしょうか?国や他の自治体はどうなのでしょうか?

齋藤

もちろん私は外に出て、他の行政職員と交流しました。「よんなな会」という、国家公務員と地方公務員からなるコミュニティがあります。よんなな、というのは47都道府県から由来しています。

ここではオンラインで交流をする、年に数回オフラインで集まるなどしていました。ただ残念ながらコロナの影響で、最近はオフラインのイベントは控えているような状況です。

ただ、オンライン市役所というよんなな会の2階にあたるようなコミュニティの活動が活発になりました。こちらは自治体横断で具体的なプロジェクトを進めていこうという動きがより強いです。

そのようなプラットフォームがあるのであれば、自治体の職員もよその事例や問題をケーススタディとして参照し、行政サービスの向上につなげることができますね。

齋藤

たしかに、これらのプラットフォームは、オンラインに6000や5000といったボリュームをもっており、一定の機能を果たしていると思います。

しかし、自分と同じ問題意識とフットワークの両方を兼ね備えている人は限られていました。

昨今、人的資本の重要性がよくとありあげられていますが、現状を打破しようとする人間がいないことは、自分の自治体はおろか、この国の未来も、こどもたちの未来も閉ざされてしまうのではないかと、そんな危機感が私を突き動かしました。

NPO法人新しい公共のカタチ the Fourthの活動内容

現在、貴法人には、企業・大学・議員・非営利団体など70弱のネットワークを構築していますが、どのような活動がさかんなのでしょうか?

齋藤

まず、ネットワークは70弱だけではないです。・毎月、オンライン交流会を開いており、外部から20人弱のビジターが参加してくれます。そこでも、もちろん化学反応やネットワーキングが生まれることになります。

また、官民連携の取り組みが理想的ではありますが、私を含む官の人間は平日の日中に時間に融通を聞かせることは難しく、その間で民民や産学の動きが広がればいいと考えています。

本法人の賛助会員企業一覧
図 2 NPO法人新しい公共のカタチthe fourth の賛助会員企業一覧

また、3年もたたずして、順調に進んでいるように感じますが、どういったところが課題だと感じられていますか?

齋藤

どこの組織もそうだと思いますが、まずマネタイズというところは困っています。運営資金が十分にないなか組織やプラットフォームを運営するというのは、まさに行政の組織そのものかもしれません。

しかし、私は行政の予算への依存から脱却した、本当の官民連携を目指しています。

私が、この新しい公共のカタチthe forthをしっかりと切り盛りすることが血のこもったメッセージを伝えることになるのではないかと日々邁進しております。

もう1点は、与えられることを待っていては何も始まらないということです。これは自戒を含めて申し上げますが、ただ人を集めただけでは連携することはできないのです。

これは特に日本人の、あるいは日本という国の気質かもしれませんが、起爆剤や触媒といったものがないと、組織やネットワークは機能しないのです。

お金を貰うような、あるいは何かを教えてもらうような関係なら、組織のガバナンスは分かりやすいですが、フラットで自由度の高い環境だとどうしていいか分からず何もできなくなってしまうようです。

現在の行政も同じ状況にあるように感じます。誰もがこのままではいけない、先細りになってしまう、そう分かっているはずです。

大きなフレームワークでは、「新しい」「抜本的な」「大胆な」と言葉の調子こそ力を入れて、有権者やメディアへアピールしていますが、現場では着任したばかりで新しいことなどやる余裕もなく、ただ与えられた予算を使い切るだけの職員ばかりではないかと危惧しています。

今こそ、選択と集中でメリハリをつけた、行政の在り方が求められています。そのためには、行政が最低限の制度と環境を整備した上で、民間主導でイノベイティブに効率的に連携できるシステムが必要となります。

そもそも、官民連携とはイメージばかりが先行して、自治体にも企業にも本質的な理解がまだまだ不十分であるように思えます。

自治体予算を当てにして連携事業を行うことは、予算の切れ目が縁の切れ目になりかねず、持続可能性の高い事業を構築しづらいのではないかと考えております。

自治体も、官民連携が企業を都合の良い下請けとして使える手段くらいの認識しかないでしょう。

企業が社会性の高いことを行い、CSRと位置付けてアピールしておりますが、これからは、CSRの時代からCSVの時代へと、官民連携の在り方を転換するときが来ているのかもしれません。

市役所、まちづくりセンター等に計34拠点に設置
図 3 実際の課題に適用した官民連携のアプローチ(課題は図1にて)

ポストSDGsの行方

いまの社会は2030年や2050年をマイルストーンとして進んでいるように見えますが、行政や公共を支えるマルチステークホルダーの在り方はどのように思われますか?

齋藤

2030年以降のポストSDGsの話は既に議論が始まっております。行政としても、体裁だけでなく、体質や体制を新しい時代にシフトしていかなくてはいけません。

それに先立って、まずはパラダイムやイデオロギーと闘わなくてはいけません。

予算至上主義で、予算を多くとり多く消化することに賛辞が浴びせられるのではなく、予算がなくても成果を上げることができたといったような、生産性や創造性が評価されるべきです。

また、本質的な転換は、再帰的なことではありますが、「自分のことは自分で」という認識を老若男女が持つことだと思います。

もちろん、経済面や健康面を考えて、程度に差はあるべきですが、「与えるか与えられるか」の二元論の中にいるわけですから、プラットフォームに何でもかんでも意見をぶつけたところで、全員が不幸になる未来、持続可能ではない社会に飲み込まれてしまいます。

最後に、読者へメッセージをどうぞ。

齋藤

今日、地域社会が抱える様々な課題において、ビジネスの手法を用いて解決を試みる「課題解決型ビジネス」が関心を集めています。

本法人は、「地域課題をビジネスに。ビジネスの力を社会貢献に。」を合言葉として、産学官民による自由な意見交換の場となる非営利型マッチングサイト【KaTaRiBaカタリバ】を展開しております。

皆さん、課題解決型ビジネスを世に広め、社会的課題の解決だけでなく、地域経済の活性化に繋がる活動を一緒に進めて行きませんか?

◎法人概要
特定非営利活動法人新しい公共のカタチ the Fourth
https://the-fourth.biz
創業:2020年1月9日
〒416-0946静岡県富士市五貫島250番地の2
理事長 齋藤数弘
特定非営利活動の種類
(1) まちづくりの推進を図る活動
(2) 経済活動の活性化を図る活動
(3) 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
事業の種類
(1) 特定非営利活動に係る事業
①協働連携構築事業
②前号の事業並びにコミュニティビジネス(地域課題をビジネスの要素で解決)等に関する調査研究、普及啓発、政策提言及び連携促進に係る事業
③その他この法人の目的を達成するために必要な事業

ライター:

1986年生まれ。大学時代にSNSベンチャーでエコライターのバイトを行い、ノーベル平和賞を取ったアル・ゴア氏の言葉に、環境問題を生涯の課題と決心する。その後、大学院に進学し、国連の会議に3回出席。CYJ1期生として化石賞の受賞や大臣への意見提出を行う。水道システムSEや環境省総合職を経て、活動15年目の現在はフリーでESG業界のエンパワーメントに挑戦している。座右の銘は「傍観者を演者に」。著書に『衡平な選択』『あなたと共にいつまでも』。

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