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Adecco Group Japan

https://www.adeccogroup.jp/

本社所在地:東京都千代田区霞が関3-7-1 霞が関東急ビル

エンジニアを、地方を、日本を活性化する。Modis株式会社常務執行役員イノベーション&キャリア開発本部長前田拓宏氏

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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アデコグループModis
Modis株式会社常務執行役員 イノベーション&キャリア開発本部長前田拓宏さん

世界60の国と地域で事業を展開する世界最大級の人材サービス会社Adecco Groupの日本法人である株式会社VSNが、同グループ会社のアデコ株式会社のエンジニア派遣事業部門と事業統合し、約9000人のエンジニアおよびコンサルタントを有する日本最大級のテクノロジーソリューション事業者となった、Modis株式会社。

「人財の創造と輩出を通じて、人と社会の幸せと可能性の最大化を追求する。」を企業理念とし、人材育成・地方創生など多方面でビジネス展開を続ける同社の、イノベーション&キャリア開発本部長前田拓宏氏に事業の意義と目指す理想について伺った。

エンジニアのキャリア開発とトレーニングが最大のパフォーマンスを生む

Modis株式会社のHP
「テクノロジーと課題解決力を通じて、スマートインダストリーのマーケットリーダーとなり、個人、組織が躍動する社会を実現する」Modis株式会社(同社HPより)

まず御社の事業内容についてお伺いします。

前田

エンジニア派遣サービスを提供する「Tech Talent Services」、エンジニアリング・コンサルティングを行う「Tech Consulting」、そして社内外で教育支援を行う「Tech Academy」の3つのサービスを展開しています。

御社の事業の大きな特徴は「人材のキャリア教育」と聞きます。

前田

派遣サービス事業者として人材とジョブのマッチングを行っていく中で私たちが重視しているのは、エンジニア自身の持つキャリアと、彼らが目指すビジョンに適した場所で活躍してもらうことです。

それらがミスマッチになってしまうと、エンジニアはパフォーマンスを発揮できず、派遣先のクライアントにも満足のいく成果を提供することはできません。

ですから弊社ではキャリアプランナーを設置し、キャリアとビジョンをエンジニアから充分にヒアリングしてから派遣先を決めています。

一般的に人材サービス会社では営業担当がクライアントからオーダーを受注し、要件にあった人材を企業へ紹介します。

しかし弊社では全国から集まったオーダーを当本部で一括し、エンジニアをどこにアサインしていくのかをエンジニアのキャリアとビジョンから分析して決定しています。

エンジニアのキャリア開発を重視することで双方に大きな恩恵があると。

前田

はい。そしてもうひとつ、エンジニアのキャリア開発と共に弊社が持つ大きな特徴が、エンジニアに対して自身の専門領域に加えて、顧客ビジネスをドライブできるデジタル活用力と課題解決力についても合わせて教育研修を行っていることです。

現在ではRPAツールやデータの可視化ツールなどが充実していますが、それらを使いこなすだけではなく、事業の成長を目指した活用を提案できるような人材を育成しています。

エンジニアを技術者としてだけでなく、ビジネスパーソンとして必要な効率化・生産性向上のアプローチから考えることができる人財育成を目指したトレーニングを行っているのです。

不確実性の時代に人財をサバイバルさせる「地方創生VI」プロジェクト

前田拓宏さん
「VUCAの時代に人材が生き残っていくためには『決められたレールの無い』中を進む力が必要」と話す前田さん

前田さんが設立を推進した未来創造部はどのような意図があって設立されたのでしょうか。

前田

未来創造部は中長期的視点で弊社のコアコンピタンスを軸に、サステナビリティを有した会社として歩んでいくための事業プランニングを行い、実践する部門です。

人材サービスは短期的な業績が優先されがちですが、長い時間軸で考えられるチームを作りたかった。弊社はリーマンショック時に大きな打撃を受けましたが、それ以後は堅実に成長を続けてきました。

しかし「不確実性の時代」といわれる中で、その成長をいつまで維持し続けられるのだろうか、そして人材サービス業界は従来のあり方を変革しなくてよいのだろうかと熟思していました。

エンジニアについても、彼らがクライアントに対しエンジニアリングやコンサルティングを提供しているだけで生き残っていくことができるのか危機感をもっていました。

VUCA(激動・不確実性・複雑性・不透明性)の時代にエンジニアの生き残りをサポートすることも企業としての役割だと感じられた。

前田

はい。エンジニアはクリエイティブな仕事ではありますが、大枠で捉えると仕様書に従い、その要件を完遂させることなので、いわば「決められたレールの上で」仕事をしている。

また数年同じ派遣先で仕事を続けていれば派遣先との信頼関係もできてくるので提案しやすくなりますが、新しい派遣先に移ると信頼関係を構築するまでには相応の時間が必要になるため、すぐには同等のパフォーマンスを示すことが難しくなります。

派遣先と充分なコミュニケーションが取れるようになるまで時間がかかればかかるほどエンジニアの評価が下がるだけでなくクライアントにも十分な価値を提供できなくなってしまいます。

この問題を解決する一つとして、弊社では地方自治体にエンジニアを派遣し課題解決を行う「地方創生VI」プロジェクトを行っています。

企業と比べてITリテラシーやノウハウ取得にハードルがある地方自治体というフィールドの中でエンジニアにコミュニケーションの取り方や課題解決の思考方法を身に付けてもらうことは、その後も様々な状況であっても効率的な対処をしていくことができるようになります。

「決められたレール」が無い中で、エンジニアが自ら道筋を描いて解決へと導いていくスキルを身に付けてもらいたいのです。

地方創生を持続可能にするためにビジネスとして取り組む

前田拓宏さん
Modis株式会社が取り組む「地方創生VI」プロジェクトは着実に提携自治体を増やしている

御社が取り組まれている「地方創生VI」プロジェクトの提携自治体についてさらにお聞きします。プロジェクトがスタートした2019年は提携自治体が7、翌2020年には12自治体、そして2021年16自治体、2022年20自治体と確実に拡大されています。

前田

「地方創生VI」事業は弊社コンサルティングサービスのナレッジとなる社員の成長に繋がるだけでなく、自治体が持つ過疎化・人材不足などの問題を解決しサステナブル社会の実現へも繋がる事業を目指しています。

デジタル化の必要性は感じているがスキルを持った人財がいない、というのが多くの自治体で共通した課題意識です。

また、大手ベンダーに「こういうシステムを使ったらこういうことができます」と売り込まれて、必要以上のスペックのシステムを提案されるがままに購入してしまうようなケースも見受けられました。

私たちは、サービスやプロダクトを提供するのではなく、地域の根本的な問題解決を目的としているため、ソリューションありきの提案はしません。「あなたの地域の問題を特定し、共に解決していきましょう。そのためのメソッドはありますので、共に手を取りませんか」という姿勢で向き合っています。

提携がスタートすると地域のキーマンや自治体職員からのヒアリングを重ね、課題を導き出し整理していきます。その際、地域が持つ資源なども分析に加え、新事業の構想に役立てています。

このプロジェクトでは具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。

前田

これまでの事例では学校へ納入するタブレットを同町内の電器店から購入する提案をしました。

文部科学省が推進するGIGAスクール構想では生徒1人1人にタブレットを配布することになっていますが、台数が1校につき数百台にもなるため多くの場合、東京の大手企業が受注するケースが多くなります。

しかしそれでは地方の利益にはなりません。そこで弊社が協力して同町内にある電器店をサポートし、納入・保守・設定などのノウハウを提供することで受注できるようにしました。

それによって自治体に利益が生まれ、その後のメンテナンスも電器店が行うようにすれば地域で利益が循環するようになります。

これらの事業の目的はその自治体が自走できるようにすることです。いずれは弊社がサポートしなくても職員や住民の方たちでやっていけるようにすることが目下の目標です。

数年間の提携期間の中で人口増加に繋がるアイデアなども事業化し、自治体が持続可能になるようにしていきたいと思っています。

地方創生事業に向けた強い課題感が伺えます。

前田

日本は人口減少の一途をたどっています。そのような中、これまでと同じようなやり方を続けていたら、住民に行政のサービスが行き届かなくなる可能性もあり得ます。

人口減少社会において、生活の質を担保するためにはスマートテクノロジーを活用することが必須になります。

私たちはテクノロジーソリューションを提供する企業として、その得意分野を生かしテクノロジーを用いた解決提案を行っているのにはそうした理由があり、それが弊社の使命だとも考えています。

また社会課題を解決していくことでSDGsにも繋がり、それが社員のモチベーションにもなる。同時に重要なのは問題解決の中で売上を出していくこと。

そうしなければ本当の持続可能な支援にはなりません。地方創生もボランティアにするのではなく、互いに利益を生み出す関係を築いていけるように、これからも追求していきたいと考えています。

◎cokiの視点

Modis株式会社の「地方創生VI」事業は、JMA(一般社団法人日本能率協会)が主催する2020年KAIKA特選紹介事例(チャレンジの花開く組織の取り組みを称え応援する表彰制度)に選出。

同事業により、「自治体や地域住民の側に、エンジニア発想が伝わったことも意義深い」「今回の過程を通じて、地道でも着実に障壁を乗り越えようとするエンジニアの本質が感じさせられた」と評価されている。

同社は地域活性化に貢献するエンジニアを1万人規模で養成するという目標を掲げている。今後も社会課題の解決に向けた地域と併走しながら着実な取り組みの活動に期待したい。

全ての世代を躍動化させ「公益資本主義」を目指す

前田拓宏さん
「人財を適財に、場所を適所に」し、組織と個人とビジョンが一致すれば人財が躍動化し始める、と前田さんは話す

「地方創生VI」プロジェクトは公益資本主義的な着想に根差しているように感じられます。

前田

私は以前から「全ての人の幸福・平和に貢献できる仕事」をしたいと考えていました。自分が取り組んでいる仕事がそれに繋がっているのであれば全力をかける意味がある、繋がっていなければ仕事をする意義がないと。その想いを明確にしてくれたのが、まさに公益資本主義との出会いでした。

社会の公器として、事業を通じて社会に広く継続的に公益をもたらすことで、「全ての人が豊かな暮らしを送って楽しく生きる社会」。それが私の心にすんなり入ってきた。それで公益資本主義の実践の場として未来創造部を設立しました。

今後の課題としては?

前田

「地方創生VI」プロジェクトをもっとスケールアップしなければならないと考えています。

提携自治体の数は増えていますが、日本にある基礎自治体は1400以上あり、様々な問題を抱えていますから、さらに拡大していかなければならない。人材育成には時間がかかるので急速に広げていくことはできませんが、効率よく展開を続けていきたいと考えています。

現場ごとの課題はまずは現場を知ることが必要であり、まずやってみる気持ちで今後も取り組んでいきます。

これからのビジョンについてお伺いします。

前田

Adecco Groupでは「『人財の躍動化』を通じて、社会を変える。」というビジョンを掲げ、社会変革を目指しています。

人口減少、少子高齢化が続く日本では、働く人の生産性を上げていくしか道はありません。しかし、私たちが行った市場調査では「生き生きと仕事をしている人」の割合は僅か25%に過ぎないという調査結果があります。

人材サービス企業としてはこの数字を向上させ、多様な人財を躍動させて社会を蘇らせていきたいと思っています。

そのためには「人財を適財に、働く場所を適所に」変えていく必要があると考えています。

まず人財のキャリアやビジョンを共に考え、目指す先を明確にする。そしてそれを実現するために力が不足しているのであればリスキリング・アップスキリングを支援し、経験が必要ならば挑戦できるジョブをマッチングする。

働く場所についても弊社が職場のコンサルティングを行い、より良い環境へと変えていく。こうして「人財を適財に、働く場所を適所に」していくことで組織のビジョンと個人のビジョンが結び付くのです。

これによって人が躍動し、社会が変化していけば社会の本質が変わってくるでしょう。「すべての人が豊かに暮らしを送れる」社会を目指してこれからも挑戦していきます。

◎プロフィール
前田拓宏
名古屋大学工業大学大学院工学研究科産業戦略工学修了。株式会社VSN(現Modis)に機械設計技術者として入社。その後エンジニア社員のキャリアプランニング及びキャリアコンサルティングを通じた人財開発に携わる。現在Modis株式会社常務執行役員イノベーション&キャリア開発本部長。

◎企業概要
Modis株式会社
https://www.modis.co.jp/
〒108-0023東京都港区芝浦3丁目4番1号 グランパークタワー3F
TEL:03-5419-8880 (代表)

ライター:

1980年千葉県生まれ 筑波大学大学院博士課程中退(台湾留学経験有り)。専門は中国近代政治外交史。その他、F1、アイドル、プロレス、ガンダムなどのジャンルに幅広く執筆。特にガンダムに関しては『機動戦士Vガンダム』blu-ray Box封入ブックレットのキャラクター・メカニック設定解説を執筆(藤津亮太氏と共著)。

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