社会的にサステナビリティの取り組みが広がってきている中、株式会社みずほフィナンシャルグループとそのグループ会社は、日本を代表するメガバンクとして自らの役割を認識し、率先してサステナビリティに取り組んでいる。
自社内はもちろんのこと、お客さまも巻き込みながら社会全体のサステナビリティを目指す取り組みについて、株式会社みずほ銀行の皆本哲宏さん、株式会社みずほフィナンシャルグループの杉浦卓さんと堀加奈子さんにお話を伺った。
【デジタルグリッドへの期待】
コーポレートPPA以外でも脱炭素に関わるソリューション開発で連携し、自社単独ではできないことや足りないことを皆で補い合いながら、取引先の脱炭素支援に向けてともに挑んでいきたい。
【デジタルグリッドとの取り組みによる効果】
デジタルグリッドが提供するバーチャルPPAのプラットフォームと〈みずほ〉の機能・強みを掛け合わせることで、先進的かつ具体的な脱炭素ソリューションを一気通貫で提供できるようになった。
これからもカーボンニュートラル社会の実現に向けて、新たな金融ビジネスモデルを構築し、日本社会全体の課題解決に直接的な貢献をしていきたい。
2030年度カーボンニュートラル。まずは自社から変えていく、みずほの目標と体制
最初に、御社が描く未来の社会像や、掲げている目標を教えてください。
杉浦
みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)として、2023年度からの3年間の中期経営計画を新たに策定したのですが、未来からバックキャストする形で検討が進められました。
まず、長期でのありたき世界として、「個人の幸福な生活」とそれを支える「サステナブルな社会・経済」、そこに向かうために10年後に目指す世界として4つのテーマを掲げています。
中期経営計画は、そこに向かうために“次の3年間ですべきこと”という位置づけです。
杉浦
この中期経営計画の中では、特に注力するビジネステーマを5つ定め、そのうちの1つに「サステナビリティ&イノベーション」があります。
また、みずほFGは2030年度までのサステナブルファイナンス(※1)目標100兆円、うち環境・気候変動対応ファイナンス目標50兆円を設定しています。
デット・ファイナンス、エクイティ・ファイナンスに限らず、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)に向けてお客さまが必要とする資金をしっかり供給できるような体制作りを進めています。
杉浦
また、気候変動に関しては、Scope1、Scope2で2030年度にカーボンニュートラル(※2)、Scope3(投融資を通じた排出)では2050年に温室効果ガスの排出が実質ゼロの状態であるネットゼロを目標としています。
※1:環境・社会事業を資金使途とするファイナンスや、ESGやSDGsへの対応について考慮・評価、または、条件とするなどESG/SDGs対応を支援・促進するファイナンス等
※2:グループ企業7社が対象(みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほリサーチ&テクノロジーズ、アセットマネジメントOne、米州みずほ)
その目標を達成するために、具体的にどのような取り組みをされていますか。
杉浦
みずほFGでは、Scope1、Scope2の2030年度カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来電力への切り替えやEVの導入などを進めています。
特に再エネの導入については、みずほ銀行のオフィスや店舗、データセンターなど、日本国内の自社で電力契約を結んでいる物件は全て再エネに切り替えています。
Scope3は、電力、石油・ガス、石炭採掘、自動車、海運といった高排出セクターを中心にセクターごとに目標を定め、お客さまとのエンゲージメントを起点に移行対応が進むよう支援をしています。
堀
社員の意識含め〈みずほ〉全体をサステナブルに転換することを目指したプロジェクトも始まっています。
具体的には、グループ会社として今持っている資産を活用することで何か環境に良いことができないか、よりサステナブルな会社にするにはどういうことができるのかというアイデアを社内有志のプロジェクトメンバーに検討してもらいます。
現在の業務内容や所属部署に関係なくアイデアを検討してもらうことで、社員一人一人に、サステナビリティについて考え・行動する習慣を根付かせたい考えです。
気候変動や社内の意識改革に向けた自社の取り組みと、お客さまや社会全体を変える取り組み、両面からされているのですね。
社内の取り組みにおいて、全国各地にある拠点を再エネに切り替える手段の1つとして、2022年11月にコーポレートPPAを導入されていますが、導入に至った経緯を教えてください。
杉浦
Scope3における目標を掲げたり、お客さまに対するエンゲージメントを行ったりする中で、「自分たちこそ率先して再エネに切り替えるべきだ」という思いがありました。
しかし、だからといってただ闇雲に再エネメニューを導入すれば良いわけではなくて、新たに送電網に追加される再エネ発電設備から調達するといった、“追加性”も追求したいと考えていたのです。
また、2030年にカーボンニュートラルを達成して終わりではなく、それ以降もカーボンニュートラルを継続することを目指しています。
だから、長期的な仕組みを導入するべきであることも、合わせて議論していました。その両方の要素を持っているため、コーポレートPPAを導入をしました。
戦略の実行と、直接的なソリューション提供が実現。デジタルグリッドとの共創
デジタルグリッドとのかかわりについて、最初の出会いのきっかけを教えてください。
皆本
出会いは2021年頃でした。当時、米国で主流となりつつあったバーチャルPPAについて、日本でも早期に実現できるような制度への変更が議論され始めていた中で、一度ディスカッションをさせていただいたのがきっかけでしたね。
それからどういう経緯でデジタルグリッドとの付き合いが始まったのでしょうか。
皆本
〈みずほ〉は以前から、脱炭素に向けた再生可能エネルギー電力の調達方法からファイナンス手法まで、グループ横断によるワンストップソリューションの提供に取り組んでいました。
自社で使用する電力の再エネ化に課題感を抱いているお客さまが本当に多くいらっしゃったことに加え、20年ほどにもなる長期的な契約を結ぶ相手方として〈みずほ〉は安心感があったのだと思います。
反響は大きかったですね。非常に多くのお客さまからご相談をいただきました。
お客さまのニーズに丁寧に向き合う中で、再生可能エネルギーの導入に伴う新たな課題が明らかになってきました。
それらの解決に向けて、日本ではまだ確立されていなかったバーチャルPPAの金融スキーム構築に挑戦したいと考えていました。
ただ、あくまでも私たちは金融機関なので、電力・環境価値分野に関する専門的な知見は持っていません。
そこで、知恵をお借りできないかとデジタルグリッドさんにご相談し、〈みずほ〉のグループ会社も巻き込んだ勉強会を始めたことがきっかけとなり、その後の具体的な案件につながっていきました。
皆本
デジタルグリッドさんが提供するFIP制度を活用した環境価値の直接取引プラットフォームである「Green Purchase Agreement(GPA)」を利用した、当時としては国内最大規模のバーチャルPPAが実現しました。
デジタルグリッドとの取り組みによって、どのような効果があったのでしょうか。
杉浦
パッケージで具体的なソリューションを提供できるようになったことは、特に大きなインパクトがあったと思います。
〈みずほ〉のグループとしての各機能を活用すれば、例えばみずほリースがアセットを保有して、みずほ信託銀行が遊休地を探し、みずほリサーチ&テクノロジーズがコンサルティングや戦略立案をする、といったように様々なソリューションを提供することが可能です。
ただ、それでも金融機関ができることは限られているので、脱炭素に向けた戦略の実行そのものまではなかなか難しく、その土台となるファイナンスをお手伝いすることがこれまでは多かったと思っています。
そこでデジタルグリッドさんのお力を借りることによって、戦略の実行である具体的な脱炭素ソリューションを提供できるようになりました。
そのパッケージを一気通貫で提供できる事業者はほかにないと思います。
また、大企業が率先してPPAに切り替え、追加性のある電源を確保していく。
これがひいては日本全体の再エネ比率が高まることにつながると思うので、脱炭素に向けて自分たちが牽引する意思を示すことにも、非常に意義を感じています。
実際に一緒に取り組む中で、デジタルグリッドのサービスのメリットをどんなところに感じていますか。
皆本
環境価値の移転手続きをはじめとして円滑なスキーム運用が可能であることに非常に強みを感じています。
また、技術面だけでなく、電力や環境価値取引、会計面や法改正の動向など広範な知見・ノウハウを持っていらっしゃるので大変助かっています。
また、デジタルグリッドさんには金融機関出身の方も在籍しており、ファイナンス的な見地からのアドバイスをいただくなど、共通言語で会話できることも含め、デジタルグリッドさんがいなければこのスキームは成立しなかったと思っています。
ともに挑む。ともに実る。共創のビジョン
これまで様々な案件をご一緒されてきた中で、デジタルグリッドはどんな会社だと感じていますか。
皆本
すごく誠実な会社である印象を受けています。ご一緒させていただいた皆さまの人柄もそうですが、何よりそのプロフェッショナリズムだと思っています。
できないことはできないとお話しいただき、乗り越えるべき課題には一緒に挑戦してくれる。そういったところに高い信頼感を持っています。
皆本
今では、グループ会社を含めたいろいろな〈みずほ〉の担当者から、直接連絡したりすることが結構あると聞いています。
皆、「デジタルグリッドさんと一緒に何か考えられないか」と発想するようになっているのだと思います。それはやっぱり、ご一緒する相手としてすごく頼もしいからだと思いますね。
皆本
デジタルグリッドさんとは、PPA以外の脱炭素に関わるビジネスでもご一緒できたらと思っています。
蓄電池であったり、非化石証書であったり、まだまだ違うビジネス分野で連携できると思うので、一緒に開拓していきたいです。
杉浦
みずほFGのパーパス「ともに挑む。ともに実る。」を一緒に体現したいですね。1人ではできないことや足りないことを皆で補い合いながらともに挑み、結果を出してともに実る。そんな関係でありたいと思っています。
◎プロフィール
皆本 哲宏
みずほ銀行 コーポレート&インベストメントバンキング業務部 価値共創チーム ディレクター
杉浦 卓
みずほフィナンシャルグループ サステナビリティ企画部 企画チームディレクター
堀 加奈子
みずほフィナンシャルグループ サステナビリティ企画部 企画チームヴァイスプレジデント
◎企業概要
株式会社みずほ銀行
発足日:2013年7月1日
資本金:1兆4,040億円(2023年3月31日現在)
所在地:大手町本部(登記上の本店住所)
〒100–8176 東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワー)
代表者:取締役頭取 加藤 勝彦(かとう まさひこ)
従業員数:24,652人(2023年3月31日現在)
株式会社みずほフィナンシャルグループ
設立日:2003年(平成15年)1月8日
所在地:大手町本部(本社)
〒100–8176 東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワー)
資本金:2兆2,567億円
代表者:執行役社長木原 正裕(きはら まさひろ)
従業員数:2,270人(みずほフィナンシャルグループおよび連結子会社就業者数合計51,212人)(2023年3月31日現在)