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デジタルグリッド株式会社

https://www.digitalgrid.com/

〒107-0052 東京都港区赤坂1-7-1 赤坂榎坂ビル3階

再生可能エネルギーが社会とビジネスの基本となる未来を見据えて

ステークホルダーVOICE 取引先
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自然エネルギー財団 石田雅也さん(撮影:安藤)

近年、ますます再生可能エネルギー(以下、再エネ)の注目が増し、大企業から中小企業まで再エネを求める声が広がっている。今回話を伺ったのは、公益財団法人 自然エネルギー財団(以下、自然エネルギー財団)で企業・地域における再エネの利用拡大に向けた情報発信や政策提言を担当している石田雅也さんだ。デジタルグリッドと少し違う立場からエネルギーの現在や未来に向き合う石田さんに、現在の日本におけるエネルギー、再エネ、デジタルグリッドへの期待などをお話しいただいた。

【デジタルグリッドへの期待】
アナログだったエネルギーの世界にデジタル技術を取り入れ、AI予測による需給管理や発電家と需要家のマッチング等のサービス展開によって、効率良く精緻なエネルギー活用ができる未来への舵取りをしていくこと。

再エネだけでエネルギー供給できる社会を目指す

御財団は再エネを基盤とする社会の構築をミッションとされていますが、どのような未来像を描いているのでしょうか。

石田

そもそも、財団の設立のきっかけは東日本大震災にあります。それまで私も含めた一般の人たちがエネルギーについて意識することがあまりなかった中、大震災に見舞われて福島第一原子力発電所の事故が発生しました。そこで計画停電の実施や、放射線への不安などを経験し、多くの人が日本の電力システムの不安定さを感じたことと思います。

すでに世界では再エネの活用がかなり広がっていて、日本でもそれを増やすことによって原子力にも火力にも依存しない電力のシステムを構築できるはず。そうした考えのもと、これからの日本のエネルギーを変えるべく、科学的な研究に基づいた適切な情報を発信する機関としてソフトバンクの孫社長によって設立されました。

ですから、我々が思い描くのは再エネだけでエネルギーを供給できる社会であり、そこに貢献をしていくことが目的となっています。

現在の日本のエネルギーに関しては、どのような危機感を抱いていますか?

石田

まず、政府のエネルギー基本計画の中で定められている「2030年に再エネ比率が36%から38%」という目標自体が不十分だと考えていて、我々は2030年に50%を目指す必要があるとメッセージを出しています。

というのも、海外を見ると100%に近い国もありますし、日本と同じような産業立国のドイツはほぼ50%、中国も既に30%を超えているんですね。中国に関しては、日本と比べて電力の利用規模が7倍以上もあるにもかかわらず、2030年には40%を大きく超えると見込まれています。

それに対して日本は2022年度の実績で21.7%。このままでは、「36%から38%」の達成は相当厳しいでしょう。本来はもっと高いレベルを目指すべきところにおいてこの状況であること自体、強い危機感を持っています。

自然エネルギー財団石田様(2)
日本のエネルギーの現状に強い危機感を抱いていると語る石田さん

もしこのままその低水準で推移してしまったら、この先日本のエネルギーはどうなってしまうのでしょうか。

石田

化石燃料は限りある資源ですから、このまま頼り続けてしまうといずれ電力が足りなくなって従来の生活が成り立たなくなってしまいます。また、温室効果ガスの排出によって気候変動も進んでしまう。日本だけでなく世界中に大変な迷惑をかけることになってしまいます。

そうならないように、CO2を排出しない発電方法として再エネと原子力があり、日本政府は両方伸ばす方針を持っているのです。しかし、ご存じのように原子力は重大な課題を抱えています。そのうちのひとつが放射性廃棄物で、現在は処分方法が定まっていないので発電所の中にどんどん廃棄物が溜まっている状況です。

では同じく原子力発電の割合が高い他の国がどうしているかというと、例えばEUでは2050年までに放射性廃棄物の最終処分が可能な計画を持っている場合にのみ、原子力が持続可能なエネルギーとして認めると定義しています。逆に言えば、そうでなければ原子力を持続可能であるとは認めていない。

その中でフィンランドやスウェーデン、フランスは2050年までに最終処分場の稼働計画が作られていて場所も決まっているので、持続可能なエネルギーとして認められているのです。その定義に当てはめてみると、日本は全くそういう状態にないので、原子力が持続可能なエネルギーだとは認められないことになります

他にも、安全性の課題もあります。もちろん原子力発電所も対策を講じて安全性が高まってはいるのですが、決して100%安全とは言えません。福島第一原発の事故も「想定外」と言っているわけですから、今後も想定外のことで事故がおこる可能性はあります。原子力をどうしても使い続けなければならない状況ならまだしも、今は代替手段として再エネが世界でどんどん拡大していますし、日本でも拡大の余地が十分にあります。ですから、あえて原子力を選択する理由はないでしょう。

ならば政府はなぜ原子力を推し進めているかというと、そこには日本の保守的な考え方があると考えています。原子力関連の企業たちが自分たちのビジネスを持続させようとしている。そしてもともと原子力政策は国が進めたものなので、政府はそれを応援している。世界が急速に変わっている中で、日本全体の保守的な考え方がその変化を求めていないんです。それは政府や関連企業だけではなく、自治体や住民なども含めそこにかかわる人たち全体の問題です。ですから、国全体として変える勇気を持たなければいけないと思っています。

日本のエネルギーを変え、大きく飛躍してほしい

デジタルグリッドがしていることは、その「変える」ためのひとつの手段になっているように思いますが、どんなことに期待されていますか。

石田

エネルギーの世界って、電力もそれ以外の燃料も含めてずっとアナログだったんですね。それが必ずしも悪いことではないのですが、今こうしてデジタルでいろいろなことができるようになってくると、アナログの非効率性はやはり弊害になってきます。

ヨーロッパやアメリカは、エネルギーの世界にもかなりデジタルの技術を取り入れていて、効率的かつ精緻なエネルギーの利用が進んできているんです。それに対して日本はまだアナログな部分が残っているために効率が悪くて精度も低いですし、それゆえに先を予測する力も弱い。結果として、何か変えようと思ってもなかなか変えられないような状況になってしまいます。

そういう中でデジタルグリッドさんの事業は、いかにデジタルの技術を最大限に使って効率を上げるか、そしてサービスを精緻にしていくかということ。例えばAI予測による需給管理の自動化や、「電力を生む発電家」と「電力を買う需要家」のマッチングなどです。それにより電力の新たな利用方法を生み出し、ひいてはエネルギー問題の解決につながっていく。そうしたことに先進的に取り組まれているので、エネルギーの世界をアナログからデジタルに変えるドライバーになられていますし、これからもっとなっていただけるんじゃないかというところに一番期待をしています。

海外ではかなりデジタル技術が取り入れられているとのことですが、実際どのように活用されているのでしょうか。

石田

有名なのはスペインですね。スペインではリアルタイムで個々の家庭の電力使用量などの情報をキャッチし、それをもとにして国全体での発電量や需要を分析・管理しており、その実績や予測がWeb上で見られるようになっています。そしてそれを活用し、電力が足りなくなりそうな時間に発電量を増やしたり、余りそうな時間には蓄電したりと、非常にフレキシブルな運用をしているのです。

また、スペインの最大の特徴は大きな発電設備ではなく、太陽光発電や風力発電などの小規模な設備が国中に分散されていて、どこでどのくらい発電されているか、どこでどのぐらい使われているかなどが全部わかることです。そうすると、例えばどこかがトラブルでダウンしても影響が少なく済んだり、それで電力が足りなくなった地域に送ったりすることができるんですね。逆に言えば、分散化しているからこそ、デジタルで管理しないと対応できないという表裏一体の関係になっています。そうしたスペインを中心にして、ヨーロッパの国は分散型かつデジタルで制御するという電力のネットワークが進化しています。

自然エネルギー財団石田様(3)
デジタル技術が入ってきたことによるこれからの変化に期待したい、と石田さんは語る

デジタルグリッドや他の企業も含め、エネルギー分野において新しい企業が出てきていますが、それに関してどのように考えていますか。

石田

エネルギーや脱炭素の世界はこれまでデジタル化されていなかったので、そこに新しい企業がデジタル技術を持ち込んで効率のいいサービスを提供するということが、日本でもうまく広がり始めていると思いますね。

デジタルやオンラインの世界は「Winner takes all」だとよく言われます。ある一社もしくは少数のうまくいった企業がマーケット全部をとるという性格のことです。デジタルは規模が大きくなっても手間が変わらないので、それによってスケールメリットを生かせてコストも安く済み、それでお客さんが増えてより良いサービスを提供できる。GoogleやAmazonがその例です。

実は、そのWinnerになるために重要なのは、バックエンドのシステムをしっかり作ることなのです。Amazonも最初は大赤字になりながらシステムに多くの投資をしたし、楽天も出店者が10社あるかないかの時からすごくしっかりしたバックエンドを作っていた。それによって、商品を登録する仕組みやお客さんの支払いなどのシステムがしっかりした便利なサービスが成り立ち、だんだん利用者が増える中でその便利さとの相乗効果によってあそこまで大きなサービスになったんですね。

デジタルグリッドさんが、今株主が増えていたり、その株主を中心に顧客が増えていたりするのを見ると、きっとバックエンドのシステムをしっかり作りこんでいるのではないかと思っています。そしてこれからさらに株主や顧客が増えていけば、いろいろな要望も出てくるので、さらにシステムを改善する必要があり、その相乗効果でどんどんシステムが良くなっていく。そうすると、ある時からAmazonやGoogleのように他の会社が絶対追いつかないようなところに到達している。まさに「Winner takes all」です。

今デジタルグリッドさんが運営しているサービスはニッチですが、GoogleもAmazonも最初はそうでした。そのニッチな中でもバックエンドをしっかり作って、それに適切なマーケティングを組み合わせてお客さんやサプライヤーを増やして軌道に乗る。そうして他が対抗できないぐらい中身が充実してくると、そこからは大きく飛躍するだろうと思います。ぜひ、そんなWinnerになってほしいと思いますね。

再エネはビジネスの基本要件に

今後日本の企業において再エネはどのような存在になっていくと考えますか。

石田

この先、エネルギーという観点がビジネスの基本要件になる世界が来ると思います。「やっていて当たり前」で、土俵に乗るか乗らないかの話になるだろうと。少なくとも2030年に入れば、脱炭素にどれだけ取り組めているかが企業の競争力に間違いなく影響するようになります。そのうえで「製品が良い」「価格が安い」という競争になっていくのです。

最近はAppleやGeneral Motorsなど名だたる世界の大手メーカーが、取引先に対してCO2を出さない製品を作るように求めています。いつまでにそれができない会社とは取引が難しくなる、というニュアンスのことを言っている企業もありますね。ですから、日本の企業もCO2を出さない、再エネを使ったモノ作りをできるようにしていかないと、世界の取引のネットワークから外れされてしまう危機感がどんどん高まってきているんです。

そうなると自社だけではなく、取引している日本国内企業も同じようにしてくれないと自らの評価が下がることにもつながります。つまり日本国内だけで考えても、取引先は選別されていってしまう。そういう意味で、これからは本当に基本的なビジネスの要件になっていくと思います。

先進的な企業は既に取引先に対して要請を出していて、この危機感はかなり広まって来ていますし、あと2年以内くらいには国内全体へ広まってほしいです。ただ、実際に再エネ100%にしようと思った時に、国内でそれができる基盤が整っていないと国全体が立ち行かなくなってしまいます。そうならないために、政府がイニシアチブを発揮して再エネをどんどん増やし、2030年で50%、2040年には100%に近づけるところまでいってほしいと思っています。そうでないと、大企業から中小まで含めた日本の会社が、世界どころか国内でもビジネスができなくなってしまうかもしれません

その危機感が広がってどれだけ大きな声となり、政府もそれに合わせて変えられるか。この変曲点が2,3年以内に来ればまだ間に合うでしょう。世界や社会のためにも、そしてこれからも日本の企業が世界の企業と競争していくためにも、再エネ利用の輪がますます広がっていって欲しいと思います。

デジタルグリッド 松井様からのコメント

石田さんからはこれまでも示唆に富んだご意見をいただいており、今回の取材でも海外における再エネ利用拡大に向けたデジタル技術の活用や、バッグエンドが大切との話という新しい視点を頂けました。

電力・エネルギーに関しては様々な議論がある中で、なぜ再エネを増やす必要があるのかといえば、それはCO2削減の観点だけでなく、燃料調達のための資金流出の防止さらには国のエネルギー安全保障を確保する上でも重要だからです。

その再エネ拡大のためには、天候や需要が常に変化する中で同時同量を確保するための柔軟性のある電力システムの構築が不可欠です。当社ではDXの力で再エネの売り手と買い手を円滑に繋げ、再エネ拡大にまい進していますが、これまでの常識にとらわれないさらなる挑戦が必要です。そのため今後も、石田さんを始め様々な有識者の方と対話を続けさせていただき、視座を高めていけたらと考えています。

◎プロフィール
石田 雅也
シニアマネージャー(ビジネス連携)
2017年から現職。企業・地域における自然エネルギー(再エネ)の利用拡大に向けた情報発信や政策提言を担当。「自然エネルギーユーザー企業ネットワーク」(略称:RE-Users)を運営、地域の自然エネルギーの開発・利用を促進する「RE-Users地域連携プロジェクト」を主導。日本の各地域における自然エネルギーの導入事例を独自に取材して紹介する連載コラム「自然エネルギー活用レポート」や、企業の自然エネルギー導入の動きを解説する「先進企業の自然エネルギー利用計画」を執筆。2021年9月から国際イニシアティブ「RE100」のテクニカル・アドバイザリー・グループのメンバーを務める。
2012年から2017年まで電力・エネルギー専門メディアのスマートジャパンをエグゼクティブプロデューサーとして運営、日本各地の自然エネルギーの導入事例や電力市場の最新動向に関して多数の記事を執筆。このほかに日経BPで日経コンピュータ編集長やニューヨーク支局長を務めるなど、技術情報メディアとインターネットビジネスの立ち上げに数多くかかわる。東京工業大学工学部卒、同大学院情報工学専攻修士課程修了。

◎法人概要
公益財団法人 自然エネルギー財団
英名称:Renewable Energy Institute
設立 2011年8月12日(2012年2月15日に公益財団法人へ移行)
所在地 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-10-5 KDX虎ノ門1丁目ビル11F
TEL:03-6866-1020(代表)
設立者 会長 孫 正義
代表理事 理事長 トーマス・コーベリエル
代表理事 副理事長 末吉 竹二郎

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ライター:

フリーライター。昔から感想文や小論文を書くのが好きで、今なお「書くこと」はどれだけしても苦にならない。人と話すのが好きなことから、取材記事の執筆が主軸となっている。新潟県で田んぼに囲まれて育った原体験から、田舎や地方への興味があり、目標は「全国各地で書く仕事をする」こと。

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