2025年に創立100周年を迎える社会福祉法人浴風会。
関東大震災を機に誕生した浴風会は、高齢者福祉のパイオニアとして、医療・介護サービスの提供から地域貢献、人材育成まで幅広く活動を展開。
その歴史と未来への展望を、浴風会の特別養護老人ホーム南陽園園長である浅井敏男氏と、同第三南陽園 園長の澤田猛氏に伺いました。
関東大震災を機に誕生。100年の歴史を刻む浴風会
浴風会は、1925年に関東大震災で被災した高齢者救済のため、旧内務省が設立した施設を前身としています。
「震災にも耐えうる、火に強い建物を」というコンセプトのもと、広大な敷地を有する高井戸の地に設立されました。
当初は衣食住の提供だけでなく、高齢者医療の研究機関としての役割も担い、老年医学の発祥の地の一つとも言われています。
「関東大震災で被災した高齢者を救済しなければという目的でスタートしました。衣食住の確保はもちろん、今後の高齢者医療の重要性も踏まえ、研究フィールドとしての役割も期待されていました」と浅井氏は語ります。
多様なニーズに応える包括的なサービス提供
現在、浴風会は東京ドーム約1.3倍の広大な敷地の中に、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、ケアハウス、老人保健施設、認知症高齢者グループホーム、デイサービスセンターなど、多様な高齢者福祉施設・サービスを展開。
さらに、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、ヘルパーステーションも設置し、地域の高齢者福祉の拠点としての役割も担っています。
「同じキャンパス内に様々な施設があるのが特徴であり、例えば在宅系サービスから病院、特別養護老人ホームまで、敷地内で完結するため、利用者の移動負担が少なく済むのが強みです」と浅井氏は説明します。
緑豊かな環境と「安心・安全・支え合いの街」づくり
約3,000名が入所者・職員として過ごす浴風会は、緑豊かな環境の中で、レストランや売店、理容・美容室なども整備。「安心・安全・支え合いの街」づくりを進めています。
澤田氏は「浴風会の緑の豊かさと広大な敷地、そして病院併設の利便性は他に類わない点は、世間からも広く評価されています。自然の中で、季節の移ろいを感じながら、開放的に過ごせる環境が魅力です」と語ります。
地域との協働、ボランティアの支え
浴風会の活動は、地域住民やボランティアの協力なくしては成り立ちません。
特に、職員だけでは手が回らない車椅子の清掃など、細やかな部分でのボランティアの貢献は非常に大きくありがたいと言います。
「ボランティアの方々には本当に感謝しています。コロナ禍で活動が制限された時期もありましたが、様々な方が参加してくださり、施設の運営を支えていただいてます」と浅井氏は感謝の意を表します。
澤田氏も「ボランティアの皆さまをはじめ外部の方の協力なくして、施設の運営は成り立ちません。職員はご利用者への日常のケアを重点にしていますので、ボランティアの方々に車椅子清掃をお願いできるのは大変助かり、ご利用者の生活の質の向上に寄与しています」と続けます。
次世代を見据えた地域貢献
浴風会は、地域の高齢者福祉の向上を目指した地域貢献にも積極的に取り組んでいます。
その一環として地域の学校へ出張して、高齢者の特性を教えたり、車椅子の操作体験をするなどの地域の福祉教育にも力を入れて、地域の高齢者福祉の向上に貢献しています。
「地域のニーズに応えるため、例えば緊急のショートステイの受け入れなども積極的に実施しています。地域の困りごとに応えることで、私たちのリソースを地域に還元し、共に支え合う関係を築きたいと考えています」と浅井氏は語ります。
100年後の未来へ。持続可能な高齢者福祉の実現に向けて
2025年に100周年を迎える浴風会。
次の100年に向けて、浅井氏は「地域からの信頼に応え続け、100年先も地域に必要とされる存在でありたい」と抱負を語ります。
澤田氏は「高齢者福祉を取り巻く環境は厳しく、慢性的な人材不足や物価高騰など課題は山積みです。それでも、職員が働きがいを感じ、ご利用者が穏やかに過ごせる施設を目指したい。そして将来に向けてご利用者と職員ともに幸せのスパイラルを生み出し、それが持続可能な高齢者福祉の実現を望みたい」と未来への展望を語りました。
浴風会は、単なる高齢者福祉施設ではなく、地域社会の一員として、人と人との繋がりを大切にする「共生の場」を目指しています。
100年という歴史の中で培われた経験とノウハウを活かし、地域とともに、持続可能な社会の実現に貢献していくことでしょう。
◎施設概要
社会福祉法人 浴風会
〒168-0071 東京都杉並区高井戸西1-12-1
HP:https://www.yokufuukai.or.jp/
特別養護老人ホーム南陽園
・事業開始:昭和46(1971)年6月
・現施設建設:平成3(1991)年4月
・HP:https://www.yokufuukai.or.jp/facility/nanyo_en.html
特別養護老人ホーム第三南陽園
・事業開始:平成14(2002)年4月
・現施設建設:平成14(2002)年2月
・HP:https://www.yokufuukai.or.jp/facility/nanyo_en3.html