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株式会社土屋

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〒715-0019岡山県井原市井原町192-2久安セントラルビル2F

050-3733-3443

誰も取り残すことのない、トータルケアカンパニーを目指す

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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土屋 高浜敏之代表
株式会社土屋 代表取締役CEO 高浜敏之さん(画像提供:土屋)

私たちは「介護」という言葉を「高齢化」に伴う社会課題として捉える傾向にあるが、介護を必要としているのは高齢者だけではない。

年齢にかかわらず、重度の肢体不自由やその他の障害・疾病により、自宅での介護を必要とする方もいる。

そうした人びとの在宅および地域でのケアとして「重度訪問介護」のサービスを全国47都道府県で提供している「ホームケア土屋」は、株式会社土屋の中核事業である。

同社CEOの高浜敏之さんは、2030年を目標にトータルケアカンパニー、さらにはソーシャルビジネスカンパニーを目指し、社会インフラを担う永続企業への進化の基盤を構築中だ。

その「ビッグビジョン」は、同社の理念経営によって着実に全社化している。

福祉業界における唯一無二のトータルケアカンパニーを目指す

2020年に株式会社土屋を起業した高浜敏之さんは、自身が経営を牽引するのは「あと5年程度」と展望している。

今年の創業記念日に新たな経営方針と共に発表された「ビッグビジョン2025〜2050」では、最初のマイルストーンを2030年に設定。

それまでに「トータルケアカンパニー構想(専門店から総合商社へ)」を実現し、年商200億円企業を目指すとしている。それが高浜さんの「卒業目標」だと言う。

土屋 ビッグビジョン2025~2050
株式会社土屋 第六期経営方針資料より
土屋 高浜敏之代表
(画像提供:土屋)

「創業5年目を迎え「ビックビジョン」を掲げることができたのは、弊社の経営が、理想としてのあるべき姿を目指す”理念”と、合理性を持つ”経営”の永続基盤とのバランスが生まれてきたからです。それを私の経営の「成功」と捉えることもできますが、創業社長の経営はどうしても属人性を持ってしまいます。私が長居すればその属人性が強まるだけで、私以降の土屋グループの永続性は保てません。私の精神、経験、知識の役立てるものは継承しつつ、「ビックビジョン」の実現を次世代が自ら考え実践できるようにする。その仕組み作りが私のこれからの挑戦です。」(高浜さん)

「ホームケア土屋」の調査によれば、「重度訪問介護」を必要とする人がサービスを受けられずに介護難民化している実態が浮き彫りになった。

そもそも障害により就労困難な上、物価高騰による経済的問題、独居高齢者の増加などにより、「重度訪問介護」のニーズは高まるばかりだが、日本では必要な介護人材が不足している。

高浜さんは創業時から、誰もが望めば「365日24時間」のケアを受けられるよう、全国47都道府県で事業所を展開し、必要な人材確保に努めてきた。

それを実現できたのは、福祉業界では唯一無二を自負する資格研修事業部門とサービス提供事業部門の両方を持つ二刀流ゆえの強みだと言う。

人材育成から採用、育成、サービス提供までを一気通貫で実現できるエコシステムをグループ内に持っているのだ。

土屋グループが目指す「総合商社」とは、現在のグループの売上の90%を占めている「重度訪問介護」だけではなく、サービスを拡大し、高浜さん曰く「福祉の分野の何でも屋」をイメージした言葉だ。

福祉業界では一般的だった「障害者」と「高齢者」に分業している垣根をなくし、今後は「重度訪問介護」以外の領域にもサービスを広げて行く。

生活介護、グループホーム、就労支援、デイサービス、定期巡回サービスなど、さまざまなサービスを組み合わせることで、介護を必要とする誰もが自分に合ったライフスタイルを実現できるのが「総合商社」の姿である。

人の命を守る、そして救うためのステークホルダーになる

重度訪問介護 土屋
重度訪問介護の様子(画像提供:土屋)

土屋グループの成長とこれからの経営方針には、新入社員から経営層まで誰もが自分ごととして常に考え、実践している「経営理念」が貫かれ、それは次の「PPMVV」の5階層で構成されている。

P フィロソフィー 「生き延びる」の肯定
P パーパス    つながりあいささえあう場の創造
M ミッション   探し求める小さな声を
V ビジョン    オールハッピーの社会の実現のために
          永続するトータルケアカンパニーへと進化する
V コアバリュー  世界を変えるために 私たちは変化し続ける

「フィロソフィー 『生き延びる』の肯定」は、理念経営の軸となるもので、その原点には「重度訪問介護」誕生の背景となった社会運動がある。

1960年代、それまで家庭の中で家族の悩みとして潜在化していた障害者の課題が社会問題として顕在化した。

70年代には、当事者である障害者自身による社会運動へと発展した「障害者運動」からの「障害者の命を軽んじるな」という声が「重度訪問介護」のサービス誕生へとつながっていく。

高浜さんは、それは単に社会福祉制度の確立だけでなく、社会変革の「萌芽」だったと捉えている。

「健常者でも「医療サービスが受けられない」となったら、自分の生命に関わる重大事だと認識できるでしょう。障害者にとって、介護が受けられない状況は命を軽んじられている状況なのです。

さらに、その過酷さが自分自身や家族の限界を超えれば、心身や命の危険にもつながりかねません。「生きる」ことがままならない状況で、どうすれば「生き延びる」ことができるのか。その改善を障害者が求めることができるステークホルダーは、行政であり、地域社会です。障害者運動によって誕生した「重度訪問介護」のサービスを担う私たちは、「生き延びる」ことを肯定的に捉え、ケアを提供することで人の命を守る、そして救う側面も担っているのです。」(高浜さん)

フィロソフィーの「生き延びる」の肯定を介護事業の根本に据え、その実現のためのインフラ整備の必要性をパーパスの「つながりあいささえあう場の創造」に込めた。

誰もが望めば「生き延びる」ことを選択できる社会の実現を担いたい。高浜さんのその強い思いが、47都道府県でのサービス提供を創業3年で実現させる推進力となった。

しかし、それで目標がまだ果たせたわけではない。ケアを必要とする人は常に少数の存在で、その声は小さい。

ミッションの「探し求める小さな声を」は、「さまざまな悲劇が私達の知らないところで起きている」という自戒を常に持ち、自ら能動的かつ積極的に探していくことを使命と自覚するためのものだ。

「大学生の頃、私は学費のために新聞奨学生として働いていました。自分が配達している新聞の一面に、前年に起きた米国同時多発テロを起点にしたアフガニスタンでの戦争、「報復の連鎖」に対する識者の論評が掲載されていました。

当時の世界情勢を「ハリウッド的大音量のスピーカーによる支配」と表現し、「世界の小さな声に、片隅から聞こえてくる小さな声に応えていくべき」だと訴える内容です。学生だった私が世界情勢を変えることなど考えもしませんでしたが、この言葉に強く感銘を受けました。無限に思える暴力の連鎖の起点には差別や貧困など、苦しんでいる人の声がある。

卒業を間近に控えていた私は、そうした小さな声に応えるような仕事をしたいなと思って、この障害福祉分野のケアワーカーの道へと進んだのです。」(高浜さん)

誰も取り残さない「オール」を目指す

ビジョンには「オールハッピーの社会の実現のために永続するトータルケアカンパニーへと進化する」とグループの未来図が示されている。

高浜さんは、この「オール」とは何かを社員に考えて欲しいと願っている。人が「みんな」と言う時は、自分を含む多数派をイメージしている。

その視点では、小さな声は含まれず、必ず誰かがはみ出てしまう。「人間の想像力には限界があります。『みんなの幸せ』という言葉は絵に描いた餅のようなもの。

『オールハッピー』って何だ? と考えることで、自分自身も含めた全ての人の幸福の実現をイメージできます」と語る。高浜さん自身は、そこに「子どもたち」の姿を思い描いているそうだ。

障害者だけでなく、高齢者だけでもなく、「オールハッピー」な未来に「子どもたち」も加えて行く。

「オール」とは何かを考える度に限界は突破され、しかしその広がりが新たな限界となる。新たな限界が生まれる度にそれを乗り越えていくことが、事業の永続性につながると高浜さんは考えているのだ。

「フィロソフィー、パーパス、ミッション、ビジョン、コアバリューは、額に飾られた文字ではなく、グループ2,500人の1人ひとりが自分の価値観として日々自問しています。

「ビックビジョン」に掲げた「2050年 年商1000億」は私の妄想のようなものですが、その時、グループを担う人たちへの「こうなりますように」という願いでもあります。でも、今から四半世紀、その間ずっと限界を広げ「オールハッピー」を考え続ければ、その世界は実現しているかもしれません。」(高浜さん)

土屋 デイホームで働く社員
土屋の社員達。デイホームの様子(画像提供:土屋)

経営者の矜持

土屋グループにとってのステークホルダーを聞くと、高浜さんは真っ先に「行政機関」と「金融機関」を挙げた。

当事者たちの社会運動から萌芽した事業の社会的立場に常に襟を正す姿勢を忘れないためだ。認可事業は行政から委ねられた仕事であればこそ、ルールを厳守する。

コンプライアンスを自らチェックするシステムを社内に作り、社外の監査協力も得た。金融機関から借りた資金の運用も透明化に努め、未上場でありながら予算と業績の数字は常に開示している。

そして、もう一方のステークホルダーとして、ケアを必要とする当事者であるクライアントと、ケアを提供する従業員たちへも心を寄せる。

四方に目を配り、その視線の先からの信頼を失うことのないように自らを律する。それが高浜さん流の「オールハッピー」を実現する流儀だ。

【プロフィール】
高浜敏之(たかはま としゆき)
慶応義塾大学文学部哲学科卒。大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。
2020年8月に株式会社土屋を起業。代表取締役CEOに就任。

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ライター:

フリーランス編集者、ライター、ブックライター。紙媒体・webコンテンツの編集制作、取材執筆全般で活動。読者の「結局、何の役に立つの?」への着地を念頭に、取材本意、現場主義のコンテンツ制作を多ジャンルで取り組む。SSI認定唎酒師、焼酎唎酒師。

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