「都市の未来と人の暮らしを支えるサービス」を提供する企業、株式会社横浜セイビは、ビルメンテナンス事業や家事代行サービス事業などを通じて、医療施設、学校、商業施設といったさまざまな施設の環境を整え、女性や高齢者をはじめとする人々の暮らしを支えています。
2代目代表として同社を率いる川口大治代表取締役社長は、NPO法人「戸塚てらこや」や、地域の課題解決を目指す「とつかリビングラボ」の代表を務めるなど、地域とのつながりを育むとともに、同社創業者の社会貢献精神をも引き継いでいます。
「地域貢献活動を通して見えてくる視点が、事業を営む上でも活かされている」と話す川口代表取締役社長に、横浜セイビのSDGsへの取り組みと社会貢献活動について伺いました。
SDGsに本気で取り組むビルメンテナンス会社
-まずは、御社の事業内容についてお聞かせください。
当社は1981年、清掃用のケミカル類や日常消耗品、環境用品・資材を販売するB2B事業からスタートしました。
現在はB2Bのビルメンテナンス事業、環境用品販売事業、そして家事代行サービス、ハウスクリーニング、整理収納サービスなどを担うB2C事業の3本柱で事業展開しています。
創業者である父が当社を立ち上げた当時から、90年代を経て2000年代へと突入し、かつては家庭の中で家事に従事していた女性が社会に出て働く時代になりました。
そこで当社に届いた“声なき声”に耳を傾け、時代の変遷を受けたニーズに対応するべく、2012年、家事代行サービス「Copier(コピエ)」を立ち上げました。
現在は、B2BとB2Cの両輪で事業を展開していますが、一貫して“お客様の縁の下の力持ち役”としての役割を全うすることで、人々の暮らしを支えて参りました。
当社の主幹事業であるビルメンテナンスは、差別化が図りづらい分野です。価格で差別化しようという方向に向かいがちですが、それで果たして皆が幸せになれるでしょうか。
安易に価格で勝負しようとするのではなく、誰もが幸せになれる差別化の方法はないか、そう考えたときに、SDGsを意識することは重要なポイントになります。
従業員もSDGsを理解し、意識して働いているという点は、当社の付加価値になると確信しています。
すでに2003年には「横浜型地域貢献企業」の最上位認定を受け、以来2度の更新を経て認定を維持するなど、先代の頃から地域貢献は大切にしていました。
健康経営は企業として必須の取り組みと捉え、社員が誇りに思える会社であろうと努力を重ねてきました。SDGsの目標達成に向けた取り組みも、その延長線上にあります。
2019年には、神奈川県の「かながわSDGsパートナー」に登録認定され、県や他企業・団体と連携してSDGsを推進する取り組みに関わっています。
また、昨年2021年には、横浜市のSDGs認証制度「Y-SDGs」の第1回認証事業者としての認証を取得することができました。
これからも、「都市の未来と人の暮らしを支える」企業として、2030年の世界的なSDGs(持続可能な開発目標)達成に向け、貢献していきたいと考えています。
ビルメンテナンス事業はじめ主要3事業全てでSDGsの実現に寄与
-具体的には、SDGsのどのような項目に向けた取り組みをされていますか?
当社の事業のうち、ビルメンテナンス事業では、病院やオフィスビルの清掃や設備・環境衛生などの総合メンテナンスを手がけています。
これにより、患者や利用者の方々の健康と福祉をサポートすることはもちろん、医療や介護に従事する方々が良質な医療を提供するための基盤づくりにも貢献しています。
また、家事代行サービスは、子育て世代だけでなく高齢者の方々も数多く利用されています。
買い物や料理といった家事を代行することで、住み慣れたご自宅、地域で、健やかな生活を続けられるよう、支援しています。
◎cokiの視点
SDGs目標3は、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進することを目指している。横浜セイビは、その中核事業であるビルメンテナンス事業を通して、病院、介護施設、学校、オフィスビルなどを利用するあらゆる人々の健康と福祉を支えている。
SDGs目標11は、都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にすることを目指している。横浜セイビの家事代行サービスは、地域に暮らす高齢者の家事を支援することで、高齢者も住み慣れた街と住居を離れることなく持続的に生活することを可能にしている。
学校・オフィスビル・商業施設や介護施設等の清掃や設備・環境衛生などの総合ビルメンテナンス業や、お客様のご自宅でのハウスクリーニング業などでは、環境にやさしい洗剤や資材を選定し、使用しています。
例えば、世界の海を巡るクルーズ船の清掃に使うワックスひとつとっても、海洋を汚染しないよう厳密なルールをクリアした材料からできているものを、当社でしっかりと選別し、採用しています。
また、当社は資材・用品の販売も行っています。環境に配慮した資材を積極的に販売することで、当社以外にも取り組みを波及させる効果もあります。
◎cokiの視点
SDGs目標12は、持続可能な消費と生産のパターンを確保することを目指している。ターゲットのひとつには、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減することも含まれる。横浜セイビは、ビルメンテナンス事業や家事代行サービス事業において、環境に配慮した資材・用品を使うことで、つかう責任を果たしている。
SDGs目標14は、海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用することを目指している。横浜セイビは、クルーズ船の清掃業務に際して、海洋を汚染しないワックスなどを使用することで、生態系や水産資源の保護に配慮している。
当社はパートタイムの従業員を含め約200人を雇用していますが、うち8~9割は女性が活躍しています。
また、後に詳しくお伝えしますが、戸塚てらこやの活動でも、家庭の外で働く子育て世代のお母さん方の感覚に触れることが多々あります。
家事代行サービス「コピエ」も、間接的に女性の活躍を支援している部分もあり、ジェンダー平等の実現に貢献できているかもしれません。
このように、地域貢献活動を通して見えてくる視点が、事業を営む上でも活かされています。
◎cokiの視点
SDGs公共の目標5は、ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図ることを目指している。ターゲットのひとつには、サービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価することが挙げられる。横浜セイビは、家事代行サービス事業を展開することで、家庭内における女性の家事労働の負担を軽減し、社会における女性の活躍を後押ししている。
「今より良い街に」、地域課題解決や世代間交流促す活動を主導し貢献
-「戸塚てらこや」での活動をはじめ、地域との関わりも大切にされています。
地域の課題解決を目指す団体とつかリビングラボの代表と、NPO法人戸塚てらこやの代表理事を務めています。
戸塚てらこやは、地域の子どもたち、大学生、市民ボランティアなどが一緒になって自然や人と関わる感動体験を通して、主体的に生きる力と地域への愛着心を育むことを目的に、2015年にスタートしたNPO法人です。
昔は、近所のお兄さん、お姉さんと遊んだり、近所づきあいで異なる世代とのタテのつながりができたりしていたものですが、今の時代、こうした関わりは希薄になっています。
小学生は登校班で登校するけれど、放課後はそれぞれに塾や習い事があって、なかなか地域でワイワイ遊ぶといったことは少ないでしょう。
そこで、小学校1年生から6年生までの参加者を募って、大学生が企画運営する“てらこや”で感動体験を積んでもらおうと、NPOを立ち上げました。
戸塚には明治学院大学の他、戸塚近郊エリアには多くの大学や短大があります。
大学生は子どもたちとめいっぱい遊ぶパワーが存分にある上に、イベントの企画を立てて運営する経験は、社会人になる前のインターンシップのような経験にもなります。
プロジェクトを立て、予算を組み、広告や告知を出して集客する。こうした事前準備を、我々と打ち合わせしながら行い、次回のイベントに活かすといった、PDCAサイクルも学ぶことができます。
我々大人たちは、金銭面や保険、安全面などに目配りしつつ、自主性を尊重して相談に乗り、見守る役割です。ブレーキになったりアクセルになったりしながら、共に活動を続けています。
全国規模の「全国てらこやネットワーク」という組織もあって、北は北海道から南は沖縄まであります。
連絡会議では、いろいろな地域の大学生とアイディアを交換したり、事例を紹介し合ったりしていて、学びにも遊びにもなっているようです。
卒業する大学生たちは、「楽しかった」という気持ちと「次の世代につなぎたい」という想いで、自ら新入生の参加者を募ってくれるなど、バトンをつないでくれています。
-川口社長の地域貢献のモチベーションは、どのようなところから生まれているのでしょうか?
戸塚てらこやに関しては、私自身、2013年の冬に第一子が誕生し、自ら親になったことがひとつ影響しているかもしれません。
地域との関わりの大切さを改めて感じましたし、子どもたちが10年後、20年後にもし戸塚を出ていくことになっても、「いい街だな」と感じていてほしい。
そんな親心もありますし、戸塚という場所で事業を営んでいる以上、「今より良い街にしていきたい」という強い想いは当然あります。
「人口減少の時代だから、人が減っていくのは仕方ない」とは思いたくないですし、人任せではなく自分たちでできることを少しずつでも一緒に実現していける仲間がいることは、幸せですね。
先代も常々、「会社は社会の“公器”だ」という趣旨のことを口にしていました。
先代とは異なるやり方かもしれませんが、私なりに、てらこややリビングラボの活動を通じて地域貢献できればと思っています。
◎cokiの視点
SDGs目標4は、すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進することを目指しています。横浜セイビの川口社長は、NPO法人戸塚てらこやの代表を務め、同NPOでの活動を通じて、地域の子どもたちに感動体験が得られる学びの場を提供するとともに、地域の大学生らの職業的スキルの習得をも支援している。
-社員に寄り添った経営も心がけておられます。
数ある会社の中で、従業員の皆さんが当社に属し、当社で働いてくれているのは、何かのご縁ですし、やはり、「この会社で働いていてよかった」と思ってもらえるような会社を作っていきたいです。
コロナ禍で社内のコミュニケーションがとりづらい時代にある中で、やりがいを感じながら働き続けてもらうためには、共に働いている人がどのような考えや想いを持って働いているのか、共有することが大切だと思っています。
そこで2021年9月から、致知出版社が出版している「人間力を高める」をコンセプトにつくられた月刊誌『致知』をそれぞれが読み、感じたこと、考えたこと、仕事にどう活かせるかなどを皆で話し合う場「社内木鶏(もっけい)会」をスタートしました。
月に1回、1時間の時間枠を設けて、本社、市川事業所、多摩事業所の3拠点をオンラインでつなげて開催しています。
同じものを読んだ後に意見交換すると、「この人はこんな考え方、読み方ができるのだな」と発見があり、人となりも見えてきます。
また、「この人たちと一緒に仕事ができていて嬉しい」「もうちょっと頑張らないと」など、それぞれに何かしら感じるところがあるようです。
また、毎年4月と10 月の年2回、社員、担当管理職、私の3者で、マネジメントレビューの機会を設けています。各社員と30分ずつ対話する時間をもち、日頃どのようなことを考えているのかを聞きます。
半年間の自分を振り返り、何を達成できたか、できなかったことは何かを確認したり、これからどうなっていきたいか、ありたい姿を聞いたりしています。
想いを共有したり助言したりしながら、「共に歩む」ことを目指しています。
目指すは新幹線型の会社経営。それぞれの動力が連結して推進力に。
―最後に、今後の課題と展望について教えてください。
創業者として「0から1」を作り上げた会長は、本人も“武田信玄役”を自認しているほど、けん引力のある人物です。
私も代表である以上、皆を引っ張っていくという気持ちは当然ありますが、会長のようなタイプではないかもしれません。
会長は、「前方にエンジンがあり、後から皆がついてくる」いわば機関車型。他方で私は、新幹線型を目指したいと思っています。
つまり、「それぞれの車両にしっかりとした動力があれば、連結することで推進力が増していく」という考え方です。
前だけに馬力がある会社ではなく、それぞれの各事業部が動力を持ち、つながり合うことで、より力強く進むことができる。
現在の当社は、そんな会社を目指しています。コミュニケーションの重要度も一層高まっています。
以前より多くの時間を、互いの考えや想いの共有に充てることを意識しながら、皆で一緒に前へ進んでいきたいと思います。
◎企業概要
・会社名:株式会社横浜セイビ
・所在地:本社・事業本部 横浜市戸塚区汲沢町1161-1石井ビル1F
市川事業所 千葉県市川市鬼高1-1-1
多摩事業所 川崎市多摩区宿河原1-30-37
・役員氏名:取締役会長 川口健治
代表取締役社長 川口大治
取締役 津幡哲也
・設立年月日:昭和57年7月16日
◎プロフィール
株式会社横浜セイビ 川口大治代表取締役社長