以前の記事で、日本自動ドア株式会社が各ステークホルダーとどのように向き合っているかをお伝えしました。
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日本自動ドア株式会社は、自動ドアの生産からアフターサービスまで一手に担う業界大手の老舗企業。同社の更なる発展に向けて、新技術の開発や新規事業の立ち上げなどをサポートしているのが、株式会社シードパートナーです。シードパートナーは、技術者の派遣などの総合経営支援事業と、外国人労働力の斡旋などの海外関連事業を主要事業としており、日本自動ドアに日本人技術者の派遣とベトナム人人材の斡旋を行なっています。
企業には未来を生きる世代に、より良い社会を受け渡していく責任があるという観点から、今回は日本自動ドア株式会社代表取締役の吉原二郎さんと、株式会社シードパートナー代表取締役の永沼秀一さん、そして、同社が斡旋し、現在は日本自動ドアで正社員として働くベトナム出身のグエン・バン・ドゥックさんとカオ・ヴァン・ヒエウさんにお話を伺いました。
プロフェッショナルを派遣し、経営課題を解決
吉原:日本自動ドアではベトナムをはじめとした海外人材を雇用しています。彼達が当社で技能を学び、経験を積むことにより、将来ベトナムに帰った先でも、自国の経済発展に寄与できる人材となってくれれば、当社としてこれほど嬉しいことはありません。
同時に、日本とベトナムという異文化同士が触発し合い、そこから新しいインスピレーションが生まれ、アイデアがもまれる機会になってくれればとも思います。そうしたサイクルを何度も経ていくことで、当社の企業戦略の巧に昇華されるプロセスになってくれればと、秘かに期待しています。
私自身が、ベトナム人社員の方のお話を聞く機会はあまりないので、ぜひどういったことを考えているのか声を聞いてみたいですね。
また、海外人材の採用には、シードパートナーの永沼さんのご尽力があったればこそです。
すでに永沼さんのおかげで10名を超えるベトナム人材を採用し、新たな戦力として活躍してくれています。本当に感謝しています。
株式会社シードパートナー 永沼秀一さんに聞く、日本自動ドア
—日本自動ドア株式会社と取引を始めた経緯を教えてください。
永沼:日本自動ドアの吉原社長とお付き合いが始まったのは2013年のことです。当時吉原社長は新たな自動ドアセンサーの開発など様々な課題に取り組んでいらっしゃいました。いずれの課題も新たな技術の開発が必要でしたので、当社の技術顧問の渡辺を派遣することにしました。渡辺は日本が誇る大手電機機器メーカーで技術開発などを手掛けるエンジニア経験があり、技術力・指導力ともに優れており、適任と考えたわけです。
—派遣した技術顧問の渡辺さんはどのような製品開発に携わったのでしょう?
例えば氷結防止ヒーターがあります。寒冷地では、自動ドアを開閉するための金属製のレールに雪が漂着して動作しなくなることがあり、同社のメンテナンス部隊がその都度雪を溶かしに行かなければなりませんでした。そのメンテナンス作業をなくすためにレール設置型氷結防止ヒーターを開発する必要がありました。いかにコストを抑えながら開発できるか苦心しながらも技術的な課題をクリアし、何とか量産体制までもっていったそうです。
当時の日本自動ドア株式会社はこうした難しい開発テーマをいくつも抱えていました。渡辺は派遣後まず課題の検証を行うと、すぐさま優先順位の高いものから現場チームと協力して試作に取り掛かりました。最終的に渡辺の派遣契約期間の4、5年程度で、担当する技術課題はおおよそ解決できたとのことです。
—日本自動ドアさんからの評価はいかがでしたか?
大変ご満足いただいたようで、すぐに次のご相談を受けました。「自動ドアを開閉するモーター内にあるBluetoothを活用した新規事業を立ち上げたい」ということでしたので、その道に明るい石塚という人材を派遣しました。石塚は楽天株式会社でマーケティングや新規事業の立ち上げに携わっていた経験があり、ITとモノづくりを掛け合わせたビジネスのアイデア出しや実行を得意としています。
—技術者やマーケッターなど、株式会社シードパートナーには様々な人材が在籍しているのですね。
そうですね。当社の主要事業である総合経営支援事業部門には各分野のプロフェッショナルが在籍しており、即戦力が必要な企業に派遣しています。現在は石塚の他に、10名のベトナム出身の人材を日本自動ドアさんに派遣しています。
海外人材の活用を成功させるために留意すべき点
—日本自動ドア社にベトナム出身の人材を派遣した経緯を教えてください。
日本自動ドアの吉原社長からは、社会構造の変化により年々縮小傾向にある日本経済を鑑み、経済発展著しい東南アジアでビジネスを展開したい、と以前より伺っていました。ある時、当社が2005年からフィリピンで展開する人材育成事業に興味をお持ちくださり、2017年に吉原社長と現地に視察に赴いたのがきっかけです。
しかし、フィリピンのビジネス街のオフィスビルや、ホテル、ショッピングモールなどの各種施設の入り口には、必ずと言っていいほどドアマンが立っています。通行者に丁寧に挨拶をしながらドアの開け閉めをするドアマンの仕事と文化が根付いており、ドアマンの仕事を奪うような事業を展開するのは適切ではないといった判断をされ、その後も色々調査を続け、ターゲットをベトナムに定めたと伺っております。
その後、吉原社長から「ベトナムに現地法人を設立し、現地の人材を採用して将来の幹部候補として育成したい」というご相談を受けたため、ベトナム人技術者を探して、日本自動ドアさんに斡旋しました。
—派遣したベトナム出身の人材の評価はいかがでしょう?
日本自動ドアの吉原社長からは、「きちんとした人を選んでもらっている。人によってスキルの差はあるが、真面目な人材が多く、半年〜1年で独り立ちしている」という高評価をいただいています。
—海外人材を活用するうえで留意すべき点があれば教えてください。
私は海外人材を派遣する際に、派遣先に必ず次のことをお伝えしています。
“海外の人材を採用するのは難しくありません。しかし、彼ら・彼女らに長期的に働き続けてもらうには気をつけるべき点があります。それは「評価基準」です。一般的に、海外人材は日本人よりも、自分の評価や仕事を通じて自己が成長できるかどうかを気にするため、評価の理由や、各人が成長するために今後どういった点を改善する必要があるのかを明確に示さないと、すぐに離職してしまう傾向があります。”
—海外人材の活用を成功させるには、評価基準の明確化とコミュニケーションが重要なのですね。
吉原社長に日本自動ドアさんの評価基準を伺ったところ、「当社の評価基準は人間性です」と明言されました。目先の成約率を気にしてオーバートークで営業する人よりも、コツコツ努力して信頼を構築する人を高く評価したいというお考えでしたので、海外人材の活用もスムーズに進むだろうと思いました。
吉原社長は以前、「雇用したベトナム人たちは、自分が一生懸命働くことで得た様々な恩恵を自国に還元したいという気持ちを強く持っている。日本自動ドアとしては、彼らの気持ちを尊重しサポートすることで、未来世代に貢献していきたい」と仰っていました。そうした熱い想いを持っていらっしゃる吉原社長ならば、今後ベトナムだけでなく様々な国に進出される時も上手くいくのではないかと思います。
—日本自動ドアさんが今後どのように海外展開を進めるか楽しみですね。
そうですね。当社にできることがあれば喜んでお手伝いしますので、海外でもより一層活躍する企業になってほしいと思います。
—ありがとうございました。
次に、株式会社シードパートナーが日本自動ドア株式会社に派遣した2名のベトナム出身の技術者にお話を伺います。
日本自動ドア株式会社で働くベトナム人実習生のリアルな声
—まずはお二人の自己紹介をお願いします。
ドゥック:グエン・バン・ドゥックと申します。ベトナムのバクザン出身です。年齢は26歳。来日6年目になります。特技は料理です。以前、日本料理店でアルバイトをしていたため、和食も作れます。
ヒエウ:ヒエウです。出身はベトナムのフンイェンです。ドゥックと同じく26歳で、日本に来て4年目になります。皆からは真面目な性格だと言われています。自転車が趣味で1日に40km走ったこともあります。
—お二人が日本で働くことになった経緯を教えてください。
ドゥック:僕は高校生の頃から日本で働きたいと考えていました。ベトナムでも日本メーカーは認知度が高く、待遇面はもちろん日本での暮らしも魅力的だったからです。高校卒業後に来日して、日本語学校で2年間、専門学校で3年間電気関連技術を学びました。日本で学んだ専門知識を生かすため、日本で技術者として就職を考えました。
ヒエウ:僕が学生の頃は、大学を卒業しても国内ですぐに働けない就職難の時代が続いていたため、日本に留学する風潮がありました。僕も留学生として日本語学校で数年学び、そのまま日本で就職しました。
—仕事のどのようなところが楽しいですか?
ドゥック:僕はまだ入社したばかりで研修中ですが、自動ドアの取り付けがスムーズにできたり、お客様に上手く説明できたときが楽しいです。また、日本自動ドアの製品を街中で見ると、「自分が働いている会社だぞ」という喜びを感じます。障がいを持っている方が、自動ドアを利用している姿を見るのも、自動ドアが役に立っているということなので嬉しいですね。
ヒエウ:僕は自動ドアの取り付け工事や保守・メンテナンスの仕事をしているので、自社製品が売れたり、多くの人に活用されている場面を見ると喜びを感じます。営業の仕事にも興味があるので、もっと多くの仕事を覚えて色々なことに挑戦していきたいです。
—お二人にとって日本自動ドアとはどのような存在でしょうか?
ヒエウ:凄く良い会社だと思います。コンビニをはじめ、色々なところに僕たちの製品が使われています。凄く誇らしいというか、世の中のためになることができていると感じます。
また、以前通訳のアルバイトをしていたときに、様々な会社を知る機会があったのですが、改めて日本自動ドアの良さを感じています。他の日本企業で働くベトナム人の友人から各種手当や社会保険などの不満を聞くことがありますが、僕はコロナ渦でも安定して仕事のある当社に就職できて良かったと思っています。生活の安定が一番なので、安心して働けていることに何より感謝しています。
ドゥック:日本自動ドアは将来もっと大きな会社に成長する企業だと思います。自動ドアはまだまだ進化していける。そういった環境で働くことができる喜びがあります。先輩も優しい人ばかりで、困ったことがあればすぐに教えてもらえます。入社したばかりでまだまだ勉強中ですが、今後も全力で頑張っていきたいです。
—ありがとうございました。
【会社情報】
会社名:株式会社シードパートナー
代表者名:代表取締役 永沼 秀一
設立:2013年3月1日
事業内容:総合経営支援事業、海外(フィリピン)日本語学校運営、および外国人の日本受入れ
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-27-4 ナカヤビル305
電話番号:03-6418-4405
メールアドレス:info@seed-p.co.jp
【永沼 秀一プロフィール】
早稲田大学人間科学部卒業後、損保ジャパン入社。在職中にフィリピンの日本語学校に出資。スタートアップ勤務後、株式会社シードパートナーを設立し、代表取締役に就任。以下の団体等でも活動も行っている。
一般社団法人ASEAN教育交流機構 代表理事
協同組合ネクストステージ・ジャパン 理事
西武文理大学 特命教授
Japan School of Advance Technology Vice-President
【会社情報】
会社名:日本自動ドア株式会社
代表者名:代表取締役社長 吉原 二郎
設立:昭和45年8月14日
事業内容:自動ドアの製造、販売、施工、保守メンテナンス
所在地:〒165-0031 東京都中野区上鷺宮3-16-5
電話番号:03-3970-2511
【吉原 二郎プロフィール】
昭和46年12月生まれ。日本自動ドア株式会社代表取締役社長。明治学院大学法学部卒業。在学中から同社の工場でアルバイトとして勤務していた。2012年同社代表取締役社長に就任。