ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

マテックス株式会社

https://www.matex-glass.co.jp/

〒170-0012 東京都豊島区上池袋2-14-11

03-3916-1231

人、場所、空間の関係性が未来を紡ぐ。HIRAKU 01 IKEBUKUROの可能性|マテックス

ステークホルダーVOICE 地域社会
リンクをコピー
HIRAKU 01 IKEBUKURO イベント会場
撮影:安藤ショウカ

人と人、人と地域、人と場所とがつながり、皆でひらく「HIRAKU 01 IKEBUKURO SOCIAL DESIGN LIBRARY」。街にひらかれた場として、図書館、学校、オフィス、ギャラリー、イベント会場など幅広い用途で活用され、使う人や集う人によってさまざまな表情を見せている。

開業から2周年を迎え、これまでにどのような学びがあり、これからどのような可能性をひらいていくのか。過去最多となる60名以上が集まり、盛況のうちに終了したイベントの様子をお届けする。

ひらいて、つながる。人と地域の期待が寄せられるHIRAKU

「本」と「窓」を起点にさまざまな人々や知識がつながり新たな価値を生み出していくためのソーシャルインキュベーション施設「HIRAKU 01 IKEBUKURO SOCIAL DESIGN LIBRARY(以下、HIRAKU)」。池袋という地域に根差し、街にひらかれた場として、日々さまざまな取り組みが展開されている。

2023年5月の開業から2周年を迎え、記念イベントとして「第2回 21.5世紀をHIRAKU 学びを作るフォーラム ― 空間、建築、ビジネスのこれからをHIRAKU ―」が2025年6月2日に開催された。2部構成のトークセッションと参加型ワークを通じて、これからをひらくためのヒントが得られる場となった。

HIRAKUのファウンダーである渡辺氏の挨拶からイベントはスタートした。HIRAKUのコンセプトである「街にひらいて、共創する」を参加者が実感できる場になってほしいと、次の1年の幕開けへの期待を話した。

そして、来賓の豊島区長補佐担当部長 小池氏は「豊島区の基本構想・基本計画の3つの理念の一つに『みんながつながる』があります。人がつながり、さまざまな方と共創していく。HIRAKUはまさに同じ理念に基づいた場だと思います」と共感を語った。

豊島区長補佐担当部長 小池氏
豊島区長補佐担当部長 小池氏

同じく来賓の豊島区上池袋町会会長 小峰氏からは、地域に文化的な事業が広がっていくことへの期待が語られた。「HIRAKUでは毎週水曜日に、地域の高齢者を対象とした食事会が開催されており、水曜日が大変楽しみになっています。新しい豊島区作りの原点となるのは人。人の輪がふれあいへとつながっていくための、人間関係を作るための場として、この場がひらかれていってほしいです」

豊島区上池袋町会会長 小峰氏
豊島区上池袋町会会長 小峰氏

空間が紡ぐ、人とのつながり。~空間と建築をHIRAKU~

第1部では「空間と建築をHIRAKU」をテーマに、空間と建築を通じた場づくりの可能性についてのトークセッションが行なわれた。ファシリテーターは、HIRAKUのファウンダーであり、立教大学名誉教授である中村氏。登壇者は積水ハウス株式会社総合住宅研究所 シニア・スペシャリストの彌重氏と、つなぐば家守舎株式会社 代表取締役 小嶋氏だ。

最初に、彌重氏から「住まいへの愛着とウェルビーイングにつながるライフスタイル」と題して、本イベントのテーマと紐づけながら積水ハウスの取り組みが紹介された。

積水ハウス株式会社総合住宅研究所 シニア・スペシャリスト 彌重氏
積水ハウス株式会社総合住宅研究所 シニア・スペシャリスト 彌重氏

積水ハウスは「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンに掲げ、幸せな生活の提案に向けてソフト・ハードの両面からサービスを提供している。幸せな住まいの基本となるのは「安全・安心・快適性・環境配慮・機能性・効率性」だ。しかし、これからの時代はこれらに加えて「健やか・つながり・私らしさ・生きがい・楽しさ」といった無形価値が重要になるという。そうした無形価値にも含まれる、住まいへの「愛着」とはどのようなものなのだろうか。

彌重

愛着とは、そのものを気に入っていて思い入れや味わい、絆を感じている状態だと定義しています。愛着が生まれるには、建物を作るプロセスに関与したり、家具・家電やインテリア選びに家族が参加したりと、自分たちが選ぶこと・関わることがポイントです。そうして作られた住まいは愛着が生まれ、幸せな生活、ひいてはウェルビーイングにもつながります。

続いて、小嶋氏から空き家を使った地域活性、取り組みへの思いについて語られた。

つなぐば家守舎株式会社 代表取締役 小嶋氏
つなぐば家守舎株式会社 代表取締役 小嶋氏

小嶋氏は独立後、住宅の設計を中心に手掛けていた中で、都市・地域経営課題を解決するための「リノベーションまちづくり」の活動を知った。そして、建物そのものよりも、使う人や事業が大切だと気付きを得る。

そこで会社を設立し、「DIO=ほしい暮らしは私たちでつくる」というミッションのもと、地域の資源を生かして、皆で一緒にほしいくらしを作っていくための取り組みを始めた。アパートをリノベーションして拠点として展開。日替わりでさまざまなお店が入ったり、託児をしている人や、コワーキングスペースとして使う人がいたり。暮らしに密着した出店者たちと、利用者も巻き込んで暮らしの再編集をしながら、ほしい暮らしをつくる場になっているという。

小嶋

いろいろな場所をプロデュースさせていただく中で、建築の視点からどのように街や人へひらいていくかを考えています。シェアする場やつなぐ場を作ることで、関わる方が街とつながっていく。そんなお手伝いができたらと思っています。

彌重氏、小嶋氏の2人の話を聞いて中村氏からは気付きが共有された。

中村

愛着やウェルビーイングと、リノベーションでの街づくり。どちらも本来の事業から越境した取り組みであり、場所や場と結びついているのではないでしょうか。現代は、人との関わりを求める時代になってきていると思います。そして、その関わりがウェルビーイング、幸せにつながる時代になっている。HIRAKUも地域のウェルビーイング、暮らしの編みなおしをつなげる場として機能できるよう議論を重ねていきたいですね。

立教大学名誉教授 中村氏
立教大学名誉教授 中村氏

いい余白が成果を生む ~空間とビジネスをHIRAKU~

第2部では「空間とビジネスをHIRAKU」をテーマに、空間がビジネスや文化に与える役割についてのトークセッションが行なわれた。ファシリテーターはHIRAKUのファウンダーであり、一般社団法人リリース 共同代表の桜井氏。登壇者は、同じくHIRAKUのファウンダーでありマテックス株式会社 代表取締役社長の松本氏と、HIRAKUの設計を担当したマシュー建築設計事務所の田中氏、松原氏だ。

はじめに松本氏から、そもそもなぜ窓の会社であるマテックスがHIRAKUを作るに至ったか、HIRAKUを通じてどのような学びがあったかが語られた。

マテックスは1928年創業、今年で97年目を迎えた。2009年に松本氏が社長に就任してから、窓ガラスという社会性の高い領域で事業をする上で、社会的な価値を見直す方向へシフト。企業文化を皆で戦略的に考えていこうと、文化醸成に着手した。2009年に経営理念、2013年にはビジョン、パーパス、コアバリューを策定し、2022年にはマイパーパス、2025年にはコーポレートメッセージを立てている。

マテックス株式会社 代表取締役社長 松本氏(左)
マテックス株式会社 代表取締役社長 松本氏(左)

そうして文化醸成に挑み続けているマテックスだが、文化は相反するものから生み出されるもの。それに挑む場にしたいという思いが、HIRAKUには込められているという。社内のメンバーが違う立場の方との交流の機会を得て、異なる言葉や考え方に触れ、知の源泉となるような場にしたいという思いでHIRAKUは作られた。

松本氏はHIRAKUでの取り組みを振り返り、「HIRAKUは私たちに必要なものだったと確信しています。地域の皆様により愛されるような場にしていきたいですね」と話した。

続いて、田中氏と松原氏からは、設計にあたってファウンダーの思いをどのように空間に落とし込み、ビジネスと場所のつながりを考えながら形にしていったのかが語られた。

マシュー建築設計事務所 松原氏(左)、田中氏(右)
マシュー建築設計事務所 松原氏(左)、田中氏(右)

「中村先生の本とこの場所を活かしたい」「違う言葉や考え方に触れて、知の源泉となる場にしたい」
計画当初、さまざまな思いを持ったファウンダーが集まり、それぞれのイメージも異なっていた。それらを一つに絞るのは難しいからこそ、アクティビティをすべて受け入れられる場づくりを目指そうと考えたという。

田中

この街をリサーチしたところ、商業地域と住居系地域のちょうど境目にあることが分かったんです。そのコンテクストを取り入れて、ここを地域の表と裏をつなぐ場にすることを提案しました。半分は建物の外壁や床の一部を取り払い、半分は表と裏をつなぐ大きい余白を作るイメージで、山手線側と下町側を地続きでつなげるような空間の在り方を想像しながら設計しました。

2組のトークを聞いた桜井氏からは、それぞれに質問が投げかけられた。

一般社団法人リリース 共同代表 桜井氏
一般社団法人リリース 共同代表 桜井氏
桜井

印象的だったのが、建築をするという話を最初からしていたことでした。それが「いいね!」とすんなり通ったほど、このプロジェクトには余白がありましたよね。

松本

数字で考えると、建築はシビアな話でした。ただ、マテックスは2009年から、事業性だけでなく、社会貢献による価値提供も追求し続けています。だからこそ、時間やコストをかけて何かに投資することの意義を想像できたメンバーが多かったのだと思います。

桜井

空間のすごさは、同じ時間でなくとも同じ文化を感じられる点にあると思います。ビジネスや経営において、同時に集まらなくとも文化を作っていけることには大きな力がありそうですが、ビジネスと空間は相性が良いのでしょうか?

田中

ビジネスである以上は数字も大事で、それに囚われてしまうこともあります。しかし、空間があることでいろいろなものを受け入れる余白を作ることができると思います。子育てを通じて自分も育てられているように、空間を育てている中で人も育てられる。そういうことも起こるかもしれません。

桜井

マテックスの業務上の機能とは異なる拠点を持ったことで、社内ではどのような変化がありましたか?また、持たなければできなかったことは?

松本

企業活動は経営資本をいかに増大させるかですが、財務資本を増やすだけが企業価値ではありません。HIRAKUは知的資本や社会関係資本を増やす場となっています。そうした非財務資本の増大はいろいろな発想につながって結びつき、この先で力になっていくのではないかと思います。

桜井

この空間ビジネスの関係性において学んだことで、21.5世紀に携えていきたいことは何ですか?

田中

空間への愛着は大事だと思っていて、特に自分が手を動かして作った空間はとても愛着がわきます。そういう愛着や親しみは常に離さず持っていきたいですし、皆さんにもそういう気持ちを感じていただけたらいいなと思います。

松原

空間においては、そこを使う方や運営する方など、関係者がどれだけ自分事化できるかがとても大切だと思います。空間を作るのと同時に、人が関われる仕組みを意識して作ることをこの先でも大切にしていきたいですね。

松本

時間の考え方です。現代においては、短期的な成果を求めたくて、時間のピッチ設定が短くなりがちです。HIRAKUは10年、20年と長期的な時間軸でピッチを設定しています。そんな時間の考え方を提案していきたいと思います。そして、いい余白をつくって、いい成果を上げる。そんな感覚を経営にも持ち込んでいけたらいいですね。

最後に、「愛着という言葉にぴったり合う言葉がドイツ語にはないそうです。もし、他の国にも貢献できる質感なんだとすれば、解明して21.5世紀で育てられたらいいですね」という桜井氏の言葉で締めくくられた。

人と人のつながりで作られていくHIRAKU

第3部では、参加者がグループに分かれて感想を共有し、アウトプットしながら理解を深めるワークが行われた。メモを取り合いながら感想や学びを共有する姿が見られ、時間いっぱい、各グループで会話に花が咲いていた。

HIRAKU 01 IKEBUKURO イベント会場

グループの一つからは、話した内容の共有も行われた。「余白や愛着というキーワードが印象に残っており、空間だけでなく心や経営においても、余白を大事にしていくべきだと感じた」との感想が語られた。

HIRAKU 01 IKEBUKURO イベント会場

そして、参加者からの質問タイムも設けられ、その中でファウンダーに向けて「青写真を教えてほしい」との質問が出た。

桜井

HIRAKUという空間や取り組みがあることを知り、他の地域でもこういうことをしたいと思う人が広がっていく。そんな拠点になったらいいなと思っています。

松本

商業区域と住宅区域の境目である上池袋には、いろいろな人が住んでいます。そんな場所であることを活かして、街づくりを盛り上げていきたいです。また、上池袋だけでなく、マテックスの拠点があるほかの地域にも関わりたいですね。そして、時代を担う人たちのために何かを残せたらと思います。

渡辺

HIRAKUにはシェア本棚があり、それを拠点に小さなイベントも展開されています。一人でも多くの方が、本棚を自分の拠点として活発に展開していただけるスペースになったら嬉しいですね。

柳田

集まる人たちが自分たちで作っていく場にしたいです。価値観は場や時代によって変わります。ですから、その時、そこに来た方々が創造的に作っていただけたらと思います。

中村

社会デザインのプラットフォームを広げていきたいですが、ゴールは積極的に考えないようにしています。枠が定まってしまうと、「ひらく」とは逆になってしまいますから。もしかしたら、50年先には考えもしなかった場になっているかもしれません。

NPO法人としまNPO推進協議会 代表理事 柳田氏
NPO法人としまNPO推進協議会 代表理事 柳田氏

最後に、中村氏の相談から始まったこのHIRAKUでの2年間を振り返りながら、これからやりたいこと、まだ見ぬ可能性に触れた柳田氏からの言葉でイベントは締めくくられた。

HIRAKUはこれからも、訪れる人、関わる人の手によって新たな可能性をひらく場となるだろう。3年目の新たな取り組みにも期待が寄せられるが、10年後、20年後先でどうひらかれているのか。人と場所によって成長していく姿は、多くの人の関心を集めている。

◎会場情報
『HIRAKU 01 IKEBUKURO(ヒラク 01 イケブクロ)』Social Design Library (SDL)
知・人・アクティビディをつなぐ媒体として図書館、学校、ギャラリー、公園、仕事場、実験場、事業相談所、社会的事業の8つの役割を持つ人々のサードプレイス。いつでも利用できるサードプレイスとして法人パートナー、個人パートナーを募集中。
WEBサイト:https://www.hiraku.community/
Facebook:https://www.facebook.com/hiraku.ikebukuro01/
Instagram:https://www.instagram.com/hiraku.ikebukuro.01_sdl/
X:https://twitter.com/hirakuikebukuro

Tags

ライター:

フリーライター。昔から感想文や小論文を書くのが好きで、今なお「書くこと」はどれだけしても苦にならない。人と話すのが好きなことから、取材記事の執筆が主軸となっている。新潟県で田んぼに囲まれて育った原体験から、田舎や地方への興味があり、目標は「全国各地で書く仕事をする」こと。

関連記事

タグ

To Top