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持続可能なビジネスモデルをデザインする株式会社グッドパッチSDGs無償デザイン支援プロジェクト

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持続可能なビジネスモデルをデザインする 株式会社グッドパッチSDGs無償デザイン支援プロジェクト

デザイン会社として初の上場を果たした株式会社グッドパッチ(東証マザーズ7351)。「デザインの力を証明する」をミッションに、世界で200人以上のデザイナーを擁するUI/UXデザインのリーディングカンパニーへと成長。2021年3月には、社会の共感をデザインすべくSDGs促進を志す企業への「無償デザイン支援プロジェクト」を展開し、さらなるデザインの可能性を追求しています。

今回は、フードロス削減に貢献する日本最大級の社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」を運営する株式会社クラダシと共同で展開した同プロジェクトについて、グッドパッチのデザインストラテジスト 長友裕輝さん、BX(ブランドエクスペリエンス)デザイナー米永さら沙さん、UIデザイナー 鈴木美沙紀さんに語っていただきました。

無償デザイン支援プロジェクトを支えたメンバーたち

─本日はよろしくお願いします。最初に皆さまの自己紹介をお願いします。

長友 デザインストラテジストの長友です。デザインストラテジストとは、顧客体験や顧客に対して創出した価値が、どれだけビジネスの成長につながるのか、収益や事業戦略に貢献するのかという、顧客体験とビジネスベネフィットを接続しながら考えていく仕事です。今回の無償支援プロジェクトでは、事業戦略のプランニングや伴走をするというよりは、プロジェクト全体のファシリテーションや進行管理などを担当しました。

弊社のミッションは「デザインの力を証明する」というものです。日本ではデザイナーというと、グラフィックデザインのように見た目を良くする仕事だという一般的な考え方がありますが、弊社では創業以来、10年間、「デザインとは経営そのものだ」と言い続けてきました。業界の常識や先入観を覆しながら、事業をここまでスケールさせてきたところに惹かれて入社しました。

デザインストラテジスト 長友裕輝さん

株式会社グッドパッチ デザインストラテジスト 長友裕輝さん

米永 BX(ブランドエクスペリエンス)デザイン領域を担当しています米永です。企業のビジョン・ミッション・バリューの構築、カルチャー浸透の支援、提供価値の整理・構造化など、社内組織の中の共通認識や共通言語作りが専門です。

今回の無償支援プロジェクトでは、ブランドブックづくりをメインに担当しました。

社員の皆様や、パートナー企業、ユーザーのヒアリングを元にクラダシの存在意義や価値を伝えるためのストーリーとコンテンツづくりを設計しました。

BX(ブランドエクスペリエンス)デザイナー 米永さら沙さん

株式会社グッドパッチ BXデザイナー 米永さら沙さん

鈴木 UIデザイナーの鈴木です。普段はWebサービスやアプリケーションを中心に、ユーザーが触れる部分にあたるUI(ユーザーインターフェース)のデザインを担当しています。ユーザーやクライアントに寄り添いながら、最後に目に見える形にまとめていく役割を担っています。

今回のクラダシさんの案件は、ストーリーやコンテンツをクラダシさんの世界観を踏襲しながら、ビジュアルデザインを反映して表層を整えるところや、より効果的に伝えるためのイラストレーションを作成しました。

UIデザイナー 鈴木美沙紀さん

株式会社グッドパッチ UIデザイナー 鈴木美沙紀さん

社会貢献とビジネスが両立する持続可能な社会へ

─グッドパッチさんが、株式会社クラダシさんと共同で実施した「無償デザイン支援プロジェクト」とはどのようなものなのでしょうか。概要をご説明いただけますか。

長友 2021年3月から同年5月までの3カ月間、SDGs促進を志す企業として、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」を運営する株式会社クラダシさんと共同で、無償デザイン支援プロジェクトを展開し、ブランド価値の言語化などを実施しました。具体的には、企業理念と提供価値の構造化/明確化、価値を表現する共通言語の開発、価値を伝達するための各種資料やWebサイトの開発などです。

1カ月目は、まずクラダシさんの社内メンバーに、「クラダシはどうありたいか」、「あなたにとってクラダシの価値は何だと思うか」と問い、一人ひとりの言葉をつまびらかにしていきました。その上で、クラダシさんが伝えたいブランドイメージと現在のイメージとのギャップなどの課題を抽出していきました。「KURADASHI」のビジネスモデルは、サプライヤーと消費者の間に入るリボンモデル(カスタマーとクライアントを集め、結びつける仕組み)なので、取引先の担当者、会員のお客さまに対してのインタビューも徹底的に行いました。サプライヤーに対しては、クラダシさんに対する期待や、クラダシさんが彼らに提供するベネフィットを聞いていきました。

2カ月目は、クライアントのプロジェクトチームとインタビュー結果を共有し、こういうブランド価値を言葉として作って共通言語化したい、こういう未来を描いていきたい、といった想いをワークショップという形でディスカッションして洗い出し、深掘りをしていきました。そして集まったクラダシさんの価値の断片を一気に統合・昇華をしていきました。

これらをもとに、3カ月目には、最終的にブランドブックとして形にするという流れでした。

長友裕輝さん

ノーベル平和賞をとれば、持続可能な社会づくりを目指す次世代を増やすことができる

─71社の応募の中からクラダシさんが選ばれたポイントは何だったのでしょうか。

長友 「KURADASHI」は、フードロス削減に貢献する日本初・最大級の社会貢献型ショッピングサイトです。クラダシさんはNPO法人という非営利団体ではなく、社会と顧客に価値を提供しながら、自分たちも成長するというビジネスの形態を取ることに、いい意味でこだわりがあります。弊社も、顧客価値とビジネス価値は両立していないと基本的に持続可能ではないと考えています。そういったわれわれ側の理念と合致していたという点が大きいと思います。

─「いい意味でこだわりがある」というのは、具体的にどういった点でしょうか。

長友 クラダシさんの創業者関藤さんは、阪神淡路大震災で被災し、ボランティアを経験されたとき、自分1人が持ち出しで実現できることのインパクトの小ささを痛感したというご経験があるそうです。もっと資金と人手があれば、ビジネスの力があれば、もっと大きな社会貢献ができるのに。NPOという形態では限界があり、なかなか続かないという原体験があったというお話を伺いました。

実は、選考プロセスの際、クラダシの事業部長さんから、「ノーベル平和賞を取りたい」という発言がありました。それはもちろん名声のためではなく、「社会貢献はビジネスでも実現できるというエビデンスをきちんとつくりたい」、「それによって持続可能な社会をつくろうとする後続のフォロワーたちがもっと増えていくはずだから」と言うのです。なるほどと思いましたね。

無償支援プロジェクトは全てのステークホルダーへの意思表示

──御社の中で、SDGsはどのように位置付けられているのでしょうか。

米永 毎月、弊社では代表の土屋が方針などを話す場があるのですが、2~3年前からSDGsについて触れていました。また全社総会で、弊社が取り組むべきSDGsとはどのような活動かを検討するワークショップを行い、メンバーの関心も高まっていました。そして、次は何ができるか考えるだけではなく、実際のアクションを起こしていきたいということで、今回の無償支援プロジェクトにつながったのです。

鈴木 当初、無償支援プロジェクトの話を聞いたときに、本音で言うと自社のブランドを高めるためにSDGsを利用しているのではないかと思いました。しかし、実際に活動していく中で、弊社全体でSDGsに関する取り組みが展開されるようになりました。プロジェクトの意義を実感するようになり、最初に抱いた疑念は払拭されました。例えば、売り上げの一部を寄付する、会社でもともと使っていたPCを寄付するという動きが出てきました。このプロジェクトは、会社全体でもSDGsに取り組むという社員も含めた全てのステークホルダーへの意思表示の一つだったのだと、今は実感しています。社員一人一人の意識も変わっていくきっかけになったと思います。

鈴木美沙紀さん

人間は自己矛盾を嫌う、自分が変われば、まわりの意識と行動量も変わる

─クラダシさんとのプロジェクトの中では、どのような気付きが得られましたか。

長友 「トレードオン」という単語を初めて知りました。トレードオンとは、一見両立しそうもないことを両方とも実現させて新たな価値を生み出すことです。私個人のパーソナリティーとしては、決められたシステムの中で順位を争うようなゲームは好きではありません。要は既存の資本主義のルール、既存の商習慣、業界構造の中で踊ることに対して、興味がありませんでした。どちらかというと、私はゲームのルールそのものを変えにいくストーリーがとても好きなタイプなのです。

クラダシさんが大事にしてきたこと、取り組んできたことは、まさに業界のルールを変えて、トレードオフではなく「トレードオン」の関係をつくっていくということです。それによってSDGsとビジネス価値の両立が可能になるというところは、クラダシさんの案件を通してとても勉強になりました。

米永 私はここ数年、ビジネスカンファレンスの運営に携わっている中で、社会課題の解決を事業にする会社が増えている印象を受けていました。例えば、アニマルフリーのアパレルブランドを事業としたスタートアップ、サバの養殖がさまざまな社会課題を解決する一つのソリューションになることから事業化を推進している人など。そういった事例に触れることで、私自身も社会貢献についてこれまで以上に意識するようになりました。「こういう会社が作っている製品だったらほしい」という意識で、自分の購買行動を見直すようになりましたね。

クラダシさんの案件を担当して、フードロスというテーマへの興味・関心がより深まりました。もともと動物が好きで、WWFに募金はしてきましたが、募金以外にできることはそれほどありませんでした。

今回のプロジェクトで、食肉がどのように生産されているのかを深掘りし、知れば知るほど、食事を残すこと、粗末にすることは、とても心が痛むようになりました。

米永さら沙さん
私たちが取り組んでいたフードロスの低減というテーマは、サプライヤーさんの商品が3分の1ぐらい大量に廃棄されてしまうという社会課題に対して、どのように改善していくかというものでした。サプライヤーさんからは、「消費者の意識も変わらなければいけない」と言われました。例えば、「賞味期限が切れそうな牛乳から買う人が少ない」というお話しを伺い、自分にできることが意外と日常にあふれているという気付きがありました。その瞬間から、スーパーでは賞味期限が切れそうなものから買うようになりました。

長友 私もそうですね。ご飯を残さなくなりましたし、きちんと保存するようになりました。要は仕事で真剣に取り組んでいくと、プライベートで矛盾する行動を取っている自分に耐えられなくなるのです。自分の中で一貫性を保とうとするために、プライベートの行動にもきちんと跳ね返ってくるという気付きがありました。人間は自分の中の矛盾を嫌うので、社会貢献への意識や行動をお客さまの中に生み出せれば、それがつながり合って、世の中に社会貢献に対する意識や行動量を増やせるのではないかということは、自分の体験を踏まえて考えました。

無償支援プロジェクトでSDGs実践ステージへ成長

─今回のプロジェクトが、御社に対してもたらしたものは何でしょうか。

米永 会社がSDGsの実現に具体的に貢献できるステージへ成長したという感覚があります。上場前は、自分たちの課題を解決すること、事業を伸ばさなければいけないという意識が強かったと思います。それを差し置いて社会貢献をすることもできますが、いいことはやっているけれども本丸の事業がうまくいってないという状況は継続的に貢献を続けていくことはできません。上場を果たすことで、より胸を張ってきちんと取り組むことができる状態になったのだと思います。

この取り組みが、会社として対外的に取り組む初めての社会貢献だったのではないかと思います。ただ、活動を続けていくことが必要なので全社でその意識を持って取り組んでいきたいです。

長友 始めたからには、続けないといけないという責任感は、確かに芽生えたと思います。

鈴木 私も会社として持続していかなければならないということを感じています。今回、会社全体で取り組むことによって、社内の他のメンバーにも、より主体的に社会貢献に取り組もうという意識の変化が見られたので、とても意義があったと感じています。

持続可能なスキーム作りが今後の課題

─プロジェクトに参画していないメンバーは、具体的にどのような意識の変化がありましたか。

長友 いい質問ですね。本プロジェクトの取り組みは、社内にもプロジェクト終了後に報告しているのですが、その後、社員全員の意識がどう変化したか、どのような行動変容につながったかというところは、これから検証していく予定です。単発のプロジェクトではなくこれを会社として持続可能なスキームに形作っていくということが、次の私たちのSDGsの取り組みにおける大きな課題です。私たちの伸びしろであり、これからやっていかなくてはいけないことだと思います。

長友裕輝さん

鈴木 そういえば、この案件がきっかけになったかどうか分かりませんが、総会のグッズなどが替わりました。IT業界では、例えばTシャツやマグカップなどのグッズを作りがちですが、長く使えるネックストラップなどのグッズを制作してくれたことは、広報チームの意識も変化されたのかなと感じました。

米永 確かにグッズに関しては、余りが絶対に出ないようにと運営チームで話していました。これまでのノベルティTシャツは薄い生地ですぐに色落ちしてしまい着れなくなってしまうこともあったのですが、今回のTシャツ制作では「10年着れる服を作る」ことをコンセプトに、サステナブルな思想が根付いている会社さんに発注しました。

それに対しては、割と早く皆が共通認識を持てました。それはクラダシさんの案件で、会社全体として大きな取り組みをしたことが影響していると思います。

社会活動の全てにおいて言行を一致させることは当初は難しいと思っています。企業として対社会的にどのようにSDGsへ貢献していくのかということだけではなく、社内における普段の生活で何ができるかというところに意識を向けるための準備が、クラダシさんの案件に取り組んだことによって得られたと思います。

米永さら沙さん

─仕事している中で、どのような瞬間にやりがいや楽しさを感じますか。

米永 私はプロジェクトで経営者や事業責任者と対話することが多いので、想いや提供価値を磨いていく、少し違う視点で見る、異なったカテゴリーの話をつなげるといったことを意識しています。そういった中で、「確かにこの表現はなかった」、「この視点は新しい」といったことに気付いていただき、共感ポイントを作ることができると、やりがいを感じます。いろいろなエピソード・体験・想いを持った方々に出会えることが最も面白いですね。

鈴木 新しい業界や企業と触れることで、自分の視野が広がる瞬間は、学びや自分自身がアップデートされているという感覚があって、とても楽しいです。デザイナーとしてプロダクトを作っていく中で、それまでさまざま議論していったものが、最終的にUIやサービスが形になったときに、メンバーやクライアントのテンションが上がる瞬間があって、その反応を見ることができることもうれしく、かつ、この仕事の楽しいところです。

 鈴木美沙紀さん
クラダシさんの案件においても、米永さんたちが作ったストーリーやコンテンツを、私の手を通して形に落とし、クラダシさんの反応を見ることができた瞬間にやりがいを感じました。

長友 人は、点と点がつながっていないと、つまりストーリーになっていないと、理解と解釈ができないという特性があると思っています。クラダシさんの案件でいえば、フードロスを減らすことが、どのように世の中とクラダシさんとサプライヤーの成長につながるのかということは、箇条書きになっていても、分かるような、分からないような状態です。これからクラダシさんに入社してくる人たちも、そのような状態では、自分たちが何のためにこの仕事をしているのか。この仕事をすることでどのように社会へ良い影響を与えるのか。自社の成長にどうつながるのかというところが、自分事として理解しにくいのではないかと思いました。

私たちはクラダシさんと一緒に、ステークホルダーとの関係の成長サイクルを作りました。消費者に対してこういう顧客価値をつなげて作っていくと、それがどうクラダシさんの成長につながっていくのか。一方で、クラダシさんが成長していくと、サプライヤーに提供する価値がどのように大きくなるのか。こういった点と点をつなげてサイクルにしたのです。

クラダシの成長サイクルの図

ステークホルダーとの関係の点と点がつながり、一つの成長ストーリーになる(資料提供:株式会社グッドパッチ)

クラダシさんからは、「自分たちがいろいろなステークホルダーに対して行なっていることが、それぞれどうつながり合って、持続可能な成長につながっていくのかということが、社員として理解しやすくなる」という言葉をいただきました。このように、点と点がつながって一つのストーリーになって、誰もが解釈しやすいものを作ることができた瞬間が、一番気持ちが良かったですね。

クラダシさんの成長サイクルの特徴的なところは、消費者とサプライヤーだけでなく、社会とも深くつながっている点です。クラダシさんが成長すると社会が良くなるというベクトルと、社会が良くなるとクラダシさんも成長できるという逆方向のベクトルもあります。それぞれが相互に成長し合うことで、全体の輪が大きくなります。このような持続可能なモデルを作ることができたことが、この案件を担当させていただけた醍醐味だと思っています。

<企業情報>

株式会社グッドパッチ

https://goodpatch.com//

代表者:土屋尚史

所在地:〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町3-3 VORT渋谷South 2階

設立:2011年9月

資本金:9億650万円(資本準備金を含む)

従業員数:173名(2020年4月末日時点 連結)

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WRITER
サイエンスジャーナリスト
小林 浩
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1964年生まれ、群馬県出身。国立群馬高専卒。専攻は水理学と水文学。卒業後、日刊紙『東京タイムズ』をはじめ、各種新聞・雑誌の記者・編集者を務める。その後、映像クリエーターを経て、マルチメディア・コンテンツ制作会社の社長を6年務める。現在は独立し、執筆と映像制作に専念している。執筆は理系の読み物が多い。 研究論文に『景観設計の解析手法』、『遊水モデルによる流出解析手法』、著書に科学哲学啓蒙書『科学盲信警報発令中!』(日本橋出版)、SFコメディー法廷小説『科学の黒幕』(新風舎文庫、筆名・大森浩太郎)などがある。

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