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国会議員の「月5万円増額」報道はなぜ反発を招いたのか

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政治家と国民の意識のズレ
DALL-Eで作成

国会議員の月額報酬を5万円引き上げる方向で検討されている――。デイリースポーツの報道をきっかけに、SNSでは強い反発が広がった。なぜ、こうした“政治と国民の意識のズレ”が繰り返されるのか。非難ではなく、その構造に目を向ける必要がある。

国民の反応は「驚き」から「呆れ」へ

デイリースポーツによると、報道直後からネット上では「年60万円」が急速にトレンド化し、「財源は?」「今やることではない」といった厳しい声が相次いだ。
とりわけ、物価高が続き、実質賃金も伸び悩む中にあって、一般の生活者にとって「月5万円」という数字は大きい。したがって、報酬の妥当性以前に、“その額”がまず生活実感と乖離して見える。

さらに、家計に直結する支出増を毎月のように体感している層にとっては、議員報酬の増額議論そのものが「なぜ今なのか」という疑問につながりやすい。こうした感覚の差が、反発の強さを押し広げたといえる。

 

「次の国政選挙後に増額」案と国民感情のギャップ

テレビ朝日系の報道によれば、歳費法の改正案は、国会議員の歳費を次の国政選挙までは据え置き、その後に月5万円増額する方向で与野党が調整しているという。
政治側から見れば、「すぐに自らの報酬を上げるわけではない」「選挙後に改めて判断する」という配慮を示したつもりなのだろう。

しかし、生活者からすれば、選挙の前後を問わず「政治の議論の優先順位」が問われる。国民の物価高対策や賃上げが遅れていると感じる中で、将来的な増額論が先に進む構図は、違和感の根源になりやすい。
つまり、「説明より先に増額の議論があるように見えること」が、ズレを大きくした一因といえる。

「政治は何を優先しているのか」という問い

さらに、今回の反発の根底には、政治に向けられた根本的な問いが存在する。

  • なぜ、このタイミングで議論されるのか
  • 国民生活の支援より議員待遇の改善を優先する理由は何か
  • 政治は国民の困りごとをどこまで自分ごととして見ているのか

本来、議員報酬の議論そのものは制度上必要なプロセスであり、必ずしも不当とはいえない。
しかし、こうした制度議論は、社会状況や生活実感と切り離して進めることはできない。政治が何を優先し、どこに重点を置いているのかが国民の感覚と一致しないとき、両者の距離は一気に広がる。

 

時間軸の違いが生む断絶

意識のズレは、政治家と生活者が置かれている「時間軸の違い」からも生まれる。

政治では、制度改正は数年単位の長期的な議論として扱われ、施行までの工程も長い。一方、生活者は物価の上昇や収入の変化を“毎月”のように体感する。
そのため、政治的には「長い検討の一部」に過ぎなくても、生活者にとっては「いま最も重要な課題とどう関係するのか」が最大の関心事になる。

結果として、制度として妥当な議論であっても、「なぜ今なのか」という疑問が強調されやすい。今回の議論も、この差異が露呈した形だ。

 

視界の広さの違いが印象を変える

政治家と生活者では、日常的に見えている“視界の範囲”そのものが異なる。

政治家は、外交・安全保障から財政、社会保障まで多岐にわたる課題を同時に扱っており、議員報酬の改定もその中の一項目に過ぎない。
一方、生活者にとっては、家計や物価、地域の暮らしなど、日々直面する問題こそが中心だ。

この視界の差が、政策に対する受け止め方の差を生む。
もし説明が不十分であれば、「なぜそこに力を入れるのか」という疑問が自然に発生し、これが意識の断絶として現れる。

ズレを埋める鍵は「説明」と「順番」

議員報酬の議論を否定する必要はない。
しかし、国民との信頼関係を維持するためには、「説明」と「順番」が不可欠になる。

まず、国民生活をどう支えるか。
そのうえで、制度上必要な改定をどう進めるか。
この順番が丁寧に示されれば、政治と生活者の距離は大きく縮まる。

政治家への批判が目的ではない。むしろ、政治の説明責任が果たされ、生活者が政策全体の流れを理解できる環境こそ、民主主義の健全性を支える。
今回の報道は、その距離をあらためて可視化する機会となった。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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