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大分・佐賀関の大規模火災 170棟延焼と離島飛び火の原因 強風・乾燥・密集地が重なった“最悪の条件”とは

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大分・佐賀関の大規模火災 170棟延焼と離島飛び火の原因 強風・乾燥・密集地が重なった“最悪の条件”とは
photo AC より

夕暮れの佐賀関で上がった炎は、港風に押されるように横へ伸び、家々をのみ込みながら海を越えた。170棟以上が燃えた今回の火災は、単なる異常気象の産物ではない。TBS NEWS DIGやテレビ大分などの報道を基に、現場の状況と地域経済、さらに気候変動がもたらす新たな火災リスクを探る。

 

なぜ大分・佐賀関では170棟超が延焼する“大規模火災”になったのか

18日夕方、佐賀関の住宅地の奥で立ち上がった火柱は、海から吹き込む風に横へ押し流されるように広がった。炎は道を選ぶことなく屋根を越え、軒と軒を結ぶように進む。

「玄関を開けたら火の粉が飛んできた」。避難所で語られた言葉は、わずかな判断の遅れですべてを失いかねない“火の速さ”を物語る。

TBS NEWS DIGによれば、焼失面積は約4万8900平方メートル。火は住民の避難よりも速い速度で街を走り、消防も追いつかない状況だった。

さらに、この火災は地域経済にも大きな影響を与えている。佐賀関は関あじ・関さばで知られる漁港であり、火災後は港周辺に煙が滞留し、漁業関係者が操業や出荷作業の一部を制限したという声もある。物流動線の一部にも影響が広がり、地域産業への打撃は避けられない。

海を越えて蔦島へ“1.4キロ飛び火”したのはなぜか ― 専門家が語る条件とは

通常、火は上へ向かう。しかしその夜は違った。強風が火と煙を水平に押し、燃えた木片が“炎の粒”となって海を越えた。

大分大学客員教授・板井幸則氏は TBS NEWS DIG に「火も煙も真横に流れていた」と語る。
11月の雨量は平年の10分の1。乾いて軽くなった木造家屋の破片は、強風に乗るには十分だった。

蔦島(つたじま)で火が上がったことは、この地域の地形と気象条件が極端に噛み合った証左だ。
海が“防火帯になる”という従来の常識が、気候環境の変化の中で通用しなくなりつつある。

強風・乾燥・木造密集地――大分の火災が“日本の都市が抱える弱点”を可視化した理由

 

佐賀関の住宅地は、斜面に挟まれた平地に木造家屋が密集し、狭い路地が網目状に広がる。空き家が多く、風通しが良すぎるほど良い――つまり、火にとっては“走りやすい構造”だ。

朝日新聞の報道では、炎が斜面を駆け上がるように山林へ広がった可能性が指摘されている。これらの条件が重なり、火災が一気に制御不能になった。

その影響は地域の生活にも及ぶ。港や周辺商店の営業は部分的に停止し、観光目的の来訪者の一部がキャンセルしたとの話も聞かれる。漁業・観光という佐賀関の主力産業が、火災によって一時的に機能不全に陥っている。

糸魚川火災や岩手山林火災と比べて何が異例なのか ― 大分火災の“規模と飛距離”

今回の火災は、2016年の糸魚川大火(約4万平方メートル超)をすでに上回った。
また、大船渡の山林火災のように、強風と乾燥が揃うと燃え方が急激に強まる点は共通している。

しかし今回、海を越えて1.4キロ先に飛び火した例はほぼ前例がない。
この“飛距離”は国内例として異例であると同時に、世界の山火事で見られる現象に近い。

カナダ、ギリシャ、カリフォルニア――いずれも気候変動による乾燥と強風が火災を巨大化させた地域だ。
佐賀関の火災も、気候変動が地方都市の火災リスクを“世界基準”へ押し上げていることを示す一例となった。

The HEADLINE編集長の石田健氏も「同様の現象は全国どこでも起こり得る」と指摘しており、これを単なる局地的火災として見るのは危うい。

大分・佐賀関の避難状況はどうなっているのか ― 停電・生活被害の広がり

最大350戸が停電し、住宅地は夜の間じゅう焦げた匂いに包まれた。避難所では、家族同士が手を握り合いながら夜を明かしたという。

SNSには「火の音がバリバリ響いた」「煙が港まで押し寄せた」との投稿が並び、現地の緊迫感がそのまま広がっている。

漁業者の一部は港周辺の煙を避け、操業開始時間を遅らせたとの証言もある。
災害は生活だけでなく、地域の経済活動にもゆっくりと影響を及ぼし始めている。

鎮火はいつか ― 大分市が示す“鎮圧見通し”と復旧のシナリオ

 

大分市は「20日にも鎮圧」との見通しを示すが、蔦島や山林の残火処理は時間がかかる見込みだ。

復旧では、焼失した住宅地だけでなく、漁港機能・物流・観光の回復が課題となる。
さらに、今回の火災が示した気候リスクをどう“都市設計”に反映させるかも問われている。

火の跡が残すのは瓦礫だけではない。
都市の弱点と、未来への課題である。
佐賀関の経験は、全国の地方都市が直面する火災リスクの“次のステージ”を示している。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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