
大阪市城東区の住宅街で、水道管の破裂による冠水事故が発生し、道路や公園が浸水、登校予定だった小学校も休校を余儀なくされた。大阪府の水道管老朽化率は全国ワースト1位であり、事故はインフラの更新遅れが引き起こす現実を突きつける。梅雨期を前に、都市部が抱える水害リスクと住民の備えが問われている。
大阪市城東区で水道管が破裂、道路や公園が冠水
10日午前7時15分頃、大阪市城東区東中浜の住宅街で、地中の水道管が破裂し、大量の水が道路上にあふれ出す事故が発生した。通行人の通報により、大阪府警城東署が現場に駆けつけ、付近の市道約200メートルを交通規制。道路だけでなく、近隣の公園まで冠水する被害が広がった。
現場は大阪メトロ緑橋駅から北東約500メートルの位置にあり、周辺は密集した住宅地。大阪市水道局は、住民に対し「水道管が破裂した」と周知。大阪市消防局によると、家屋への浸水や人的被害は確認されていないという。
小学校も登校中止に 約530人が自宅待機
現場近くの大阪市立東中浜小学校では、当日予定されていた授業と避難訓練を中止。児童約530人の登校が取りやめとなった。校内への浸水はなかったものの、周辺の道路状況を考慮し、学校側は安全を優先した措置をとった。
同校に通う娘を持つ近隣住民の男性(41)は、「午前8時過ぎには水がどんどん広がっていくのが見えた。周囲の住宅に被害がなかったのは幸いだが、次の登校日までに復旧していてほしい」と語った。
老朽化率全国ワーストの大阪府 水道インフラの危機浮き彫りに
この事故は、水道インフラの老朽化という全国的な課題をあらためて浮き彫りにした。
『週刊文春』(2025年5月15日号)によると、大阪府は水道管の老朽化率が全国47都道府県の中でワースト1位(33.1%)。とりわけ大阪市、門真市、阪南市では、耐用年数(40年)を超えた水道管が50%以上を占める。中には老朽化率60%を超える地域も存在するという。
こうした背景を受け、水道管の老朽化が進んでいる都道府県と、比較的維持管理が行き届いている都道府県を整理したのが以下の表である。
■ 水道管老朽化率ランキング(都道府県別)
順位 | 地域 | 老朽化率(年数超過率) | その他(危険度やその根拠など) |
---|---|---|---|
1位 | 大阪府 | 33.1% | 大阪市、門真市、阪南市では50%超。老朽管比率60%超も存在。 |
2位 | 香川県 | 30.9% | 狭小自治体が多く、更新予算が限られている可能性あり。 |
3位 | 神奈川県 | 30.3% | 高度成長期のインフラ集中整備地域で、一斉老朽化が進行中。 |
… | 東京都 | 21.0%(29位) | 一部の古い市区を除き、比較的更新が進んでいる。 |
43位 | 長野県 | 17.5% | 山間部中心だが、維持管理が比較的行き届いている。 |
45位 | 茨城県 | 16.9% | 都市部と農村部のバランス型。新規更新率も高い。 |
46位 | 山梨県 | 16.4% | 小規模自治体中心だが、更新ペース安定。 |
47位 | 栃木県 | 15.7% | 老朽化率全国最少。早期更新や点検体制が比較的整っている。 |
被害額や復旧費用は未確定 自治体の対応が急務に
今回の大阪市での事故による冠水被害に関する金銭的損害の詳細は、現時点では明らかにされていない。大阪市水道局は、今後の調査結果を踏まえて被害額や復旧費用を精査するとしている。
一方で、同様の事故を未然に防ぐためには、定期的な管路更新と点検体制の強化が急務である。費用の多くは自治体の予算に委ねられるが、国の補助制度も含めた対策の早期強化が求められている。
梅雨期を前に地域住民が備えるべきこと
これからの梅雨期は、今回のような水道管事故だけでなく、集中豪雨や地盤の緩みなど、複合的な災害リスクが高まる時期でもある。地域住民が取るべき備えを以下にまとめた。
■ 主なリスクとその影響
危険項目 | 内容 | 特に注意すべき地域・環境 |
---|---|---|
局地的な冠水 | 排水能力を超えた雨水が道路や住宅に流入 | 都市部の低地、排水不良地域 |
下水の逆流 | 老朽管や急激な水位変化で逆流 | 高密度住宅街や老朽地域 |
地盤の緩み | 地中の水分過多で路面陥没の危険 | 埋設物の多い都市部 |
停電・断水 | 水没による電力設備・浄水場停止 | どの地域でも起こりうる |
■ 家庭での具体的備え
- ハザードマップの確認と避難経路の共有
- 飲料水(1日3L×3日分)、モバイルバッテリー、簡易トイレの備蓄
- 排水溝や雨どいの清掃
- 地下室・車庫の防水対策
- 自動車保険の水災補償確認
■ 地域での取り組み
- 自治体が公表する水道管更新計画の把握
- 町内会による共助体制づくり
- 要配慮者(高齢者・障がい者など)への配慮確認
梅雨は“災害の連鎖”が起こりやすい時期であり、今こそ家庭と地域の防災意識を高めておくことが重要である。