
米投資会社バークシャー・ハザウェイの最高経営責任者(CEO)で、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット(94)が年内に退任する意向を表明した。バークシャーの株主総会が3日、米中部ネブラスカ州オマハで開かれ、バフェットが「グレッグ(・アベル氏)がCEOになるべき時が来た」と語った。グレッグ・アベル副会長(62)が取締役会の承認を経て次期CEOに昇格する見通しで、今後もバフェット本人は経営に関与するものの最終決定権はアベル氏が担うとされる。
会場の約2万人からはスタンディングオベーションが起こったという。
オマハの賢人、バフェット
バフェットは1965年に当時繊維会社だったバークシャーを買収して以来、60年近く経営のトップとして同社を率いてきた。その間に保険事業をはじめとした多角化を進め、現在では世界有数の投資持株会社に成長させた。バークシャーの時価総額は1兆1600億ドル(約170兆円)にのぼり、世界で8番目の規模となっている。
米ブルームバーグ通信によれば、バフェットの資産総額は現在1690億ドル(約24.5兆円)で世界5位。その卓越した投資判断から「オマハの賢人」の異名も持ち、日本では2019年以降に5大商社株(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)をまとめて購入したことで改めて注目を集めた。
後継のアベル氏はバフェットから2021年に事実上の「後継者指名」を受けており、鉄道など保険以外の事業を長く担当してきた。バフェットは「私よりもグレッグの方が会社が良くなる」と述べ、後任に大きな期待を寄せている。
「投資の神様」バフェットの逸話・伝説
バフェットに関する逸話は数多く存在し、その多くが彼の哲学や生き方を象徴するものとして語り継がれている。以下は広く報じられた証言や資料から確認できるものを中心に紹介する。
11歳で初めて株式を購入
バフェットはわずか11歳のときに初めて株を買い、株式投資を体験したというエピソードが知られている。これは本人のインタビューや複数の米メディア報道(CNBCなど)でも語られており、早くから投資の世界に興味を持ち、その後の大成功への土台を築いたとされる。
ティーンエイジャーで納税
少年時代には新聞配達で稼ぎ、14歳で初めて正式に納税したとされる。自転車の費用を経費として申告したというのは有名な話で、ここからも投資や資産管理に対するユニークな視点がうかがえる。
1958年に購入した自宅に現在も居住
オマハにある自宅を1958年に3万1,500ドルほどで購入し、今でも住み続けていると複数の海外メディア(ForbesやBloombergなど)が報じている。大富豪でありながら質素な暮らしを続ける姿勢は、バフェットの慎ましさや長期的思考の表れだと評価されている。
「理解できない企業には投資しない」
バフェットが掲げる投資原則として有名なのが「自分が理解できないビジネスには投資しない」というものだ。長期目線の投資を貫き、大きなブレが少ないポートフォリオ構築に寄与してきたとされ、世界の投資家たちから尊敬の念を集めている。
コーラ好きとしての一面
バフェットはコカ・コーラの大株主として知られるだけでなく、自身もコーラをこよなく愛する。インタビューの場などで「毎日数本のコーラを飲む」と語ったことが広く報じられ、投資家としてのみならず人間味のある側面も人気の理由となっている。
世界最大級の慈善活動「ギビング・プレッジ」
バフェットはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツらと共に「ギビング・プレッジ」を立ち上げた。これは資産家たちが財産の過半数を慈善活動に寄付することを誓約する取り組みで、バフェット自身も巨額の資産を社会に還元している。米メディアの報道などによれば、これは世界的な慈善活動の象徴の一つとなっている。
長期投資を証明する“10年賭け”
バフェットは以前、運用コストの低いインデックス・ファンドがヘッジファンドに勝るという予測を立て、10年間のリターンを競う賭けを実施した。結果としてインデックス・ファンドが優位だったと複数の金融メディア(Fortuneなど)が伝えており、長期投資の有効性を自らの行動で示したエピソードとして語られている。
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年内の退任によってバークシャー・ハザウェイのトップとしての時代にひとつの区切りがつくものの、バフェット自身は「投資の神様」「オマハの賢人」という称号を裏付ける数多くの伝説を築いてきた。膨大な資産と長期投資の哲学、慈善活動への積極的な関与など、投資家のみならず世界中の人々に影響を与える存在として、これからも注目を集め続けるだろう。