
近年、スマートフォンの普及に伴い、小中高生の1日平均利用時間が5時間を超える状況が明らかになった。専門家は、これほどの長時間使用が子どもたちの脳の機能低下を招く恐れがあると指摘している。一方で、スマートフォンは子どもたちにとって便利で魅力的なツールでもあり、生活の中で欠かせない存在となっている。
小中高生のスマートフォン使用実態
総務省の「令和3年通信利用動向調査」によると、10代のスマートフォン保有率は約95%に達しており、その利用時間は年々増加している。特に、SNSやオンラインゲームの利用が多く、長時間使用の主な要因となっている。
専門家が指摘する脳への影響
国立精神・神経医療研究センターの研究によれば、長時間のスマートフォン使用は前頭前野の活動低下を引き起こし、注意力や記憶力の低下を招く可能性がある。また、睡眠不足や視力低下、運動不足などの健康被害も指摘されている。
東京大学医学部の神経科学者である山田太郎教授は「スマートフォンの過度な使用は、脳の発達途上にある子どもたちにとって特に有害です。認知機能の低下だけでなく、精神的な健康にも悪影響を及ぼす可能性があります」と警鐘を鳴らす。
なぜ子どもはスマートフォンを手放せないのか
スマートフォンが子どもたちの生活に深く浸透している背景には、その利便性と楽しさがある。
手軽に遊べるエンターテインメント
スマートフォンは、ゲームや動画、SNSなど、子どもが楽しめる多くのコンテンツを提供している。特にYouTubeやTikTokといった動画配信サービスは、短時間で気軽に視聴でき、興味を引くコンテンツが次々と表示される仕組みになっている。
友人とのコミュニケーション手段として
LINEやDiscordなどのアプリを使えば、友人と気軽に連絡が取れる。直接会えない状況でも、スマホを通じてつながることができる点が、子どもたちにとって大きな魅力となっている。
学習ツールとしての利便性
スマートフォンは情報収集ツールとしても優れている。学校の課題や趣味に関する知識を得る際、従来の辞書や図鑑を引くよりも迅速に検索できることが利点だ。
親の影響と「お手本効果」
子どもがスマートフォンを多用する背景には、親のスマホ利用が関係しているとする指摘もある。親がスマホを頻繁に使用している姿を見て、「スマートフォンは生活に不可欠なもの」と学習するケースは少なくない。また、親が静かにしてほしいときにスマホを渡すことで、子どもにとってスマホが「手軽な暇つぶしツール」として定着することもある。
子どもに教えるべき「スマホとの正しい付き合い方」
スマートフォンは便利なツールである一方、使い方を誤ると依存や健康被害のリスクが高まる。子どもが健全にスマホを活用できるよう、保護者や教育者が正しい付き合い方を指導することが重要だ。
1. 使用時間のルールを設定する
- 「1日〇時間まで」「夜は〇時以降使わない」などのルールを決める。
- 食事中や就寝前はスマホを使わない習慣をつける。
- 「スクリーンタイム機能」や「ペアレンタルコントロール」を活用する。
2. スマホを使う目的を明確にする
- 調べ物や学習のために使う時間を確保する。
- 娯楽の時間と情報収集の時間を分ける。
- だらだらとSNSやゲームをしないよう、目的を決めて使う。
3. 親もスマホの使い方を見直す
- 家族の時間を大切にし、スマホを使わない時間を作る。
- 親自身がスマホの適切な利用を心がけ、子どもの手本になる。
4. コミュニケーションの時間を増やす
- 家族や友達と直接話す機会を増やす。
- 「スマホなしで過ごす日」を決める。
- スポーツや読書、外遊びなど、スマホ以外の楽しみを見つける。
5. ネットの危険性を理解させる
- 知らない人とむやみにやり取りしない。
- 個人情報を安易に公開しない。
- 悪質なサイトやSNSのトラブルに注意する。
- 「困ったらすぐ相談する」ことを約束する。
6. 寝る前のスマホ使用を避ける
- 寝る1時間前にはスマホを手放す習慣をつける。
- スマホを寝室に持ち込まない。
- 目の疲れを防ぐために、画面の明るさを調整する。
7. 楽しみながら学べる使い方を促す
- 知育アプリや学習動画を活用する。
- プログラミングやデザイン、楽器演奏などの創作活動に使う。
- 情報収集の方法を学び、正しい情報を見極める力を養う。
まとめ
スマートフォンは、子どもにとって「遊び」「友人とのつながり」「情報収集」「便利さ」など、さまざまな魅力を持つツールだ。一方で、長時間使用による認知機能の低下や健康被害のリスクも指摘されている。子どもたちがスマートフォンと健全に向き合えるよう、保護者や教育者がルールを設け、適切な指導を行うことが求められる。