
株式会社ナ・デックス(東証スタンダード:7435)は2月26日、特別調査委員会の報告を受け、不正取引の再発防止策を発表した。背景には、元業務委託社員の1億円以上にものぼる循環取引が発覚して、調査委員会を立ち上げていたことがあげられる。再発防止策は、社内の監査体制の強化、決裁プロセスの厳格化、在庫管理の見直しなど、組織全体でガバナンスを強化する内容となっている。
再発防止策の内容・決裁プロセスの厳格化と監査強化
同社は、不正取引が発生した要因の一つとして決裁プロセスの形骸化を指摘。これを防ぐため、取引の合理性を判断するためのチェックポイントを整理し、決裁の意義を経営層へ徹底させる。また、決裁者の意識向上を目的とした研修や勉強会の実施も決定した。
在庫管理の見直し“架空の在庫”を徹底排除
仕入れの実在性を証明するため、第三者が発行する配送証憑の取得を義務化するとのこと。また、預け在庫の管理を厳格化し、月次でリストを作成。残高や滞留期間、仕入先、エンドユーザーの視点からリスク評価を行い、不正の兆候があれば営業担当者以外の人員が現物確認を行う仕組みを導入する。
監督体制の強化――“一人に任せない”ガバナンスへ
一部の部署では営業部長と営業所長が兼任し、監督体制が脆弱だった。これを解決するため、兼任を原則禁止とし、営業部門とは独立した業務課を新設。監視体制の強化を図る。また、従業員同士が牽制し合える環境を整えるため、定期的な研修を実施する。
内部監査の強化――「見逃さない」仕組みの構築
リスクの高い案件を重点的に監査するため、内部監査体制を強化。人員不足の拠点や滞留在庫の監査を徹底し、監査役や会計監査人との連携を強めることで、不正の早期発見と予防を図る。
発覚の経緯――6500万円の請求書が暴いた不正の全貌
2024年11月、ナ・デックス北九州営業所に、仕入先のC社から「合計6517万円200円の売掛金を支払ってほしい」との請求書が届いた。しかし、営業所長が確認したところ、請求された商品が取引先に届いた形跡がなかった。さらに、他の仕入先との取引を調査すると、実態のない取引が次々と発覚した。
同社は直ちに外部弁護士と公認会計士を含む5名の特別調査委員会を立ち上げ、徹底調査を実施。その結果、元業務委託社員X氏が主導し、架空の商品を売買する「循環取引」を行っていたことが判明した。X氏は、仕入れたことにした商品を帳簿上に計上し、実際には存在しない商品を販売したかのように装って虚偽の売上を計上。さらに、A社やE社、H社といった取引先を経由させることで、実際には商品が動いていないにもかかわらず、売買が成立しているように見せかけていた。
また、X氏は架空取引だけでなく、実際には受け取らないPCや電動工具などを仕入れたことにして、その転売による利益を私的に流用していた。報告書によると、2020年から2024年10月までの間に、この不正取引の総額は約1億2000万円超にのぼる。
ナ・デックスは、「これらの再発防止策を確実に実行し、信頼回復に努める」とコメント。企業のガバナンス強化が問われるなか、同社がどのように市場の評価を取り戻していくかが注目される。