トランプ米大統領は9日、米国に輸入される鉄鋼およびアルミニウム製品に対し、25%の追加関税を課す方針を明らかにした。10日に正式発表する予定で、新たな関税は既存の措置に上乗せされる形となる。また、貿易相手国が米国製品に課している関税と同率の関税を導入する「相互関税」についても11日か12日に発表する見通しであり、国際貿易に大きな影響を及ぼす可能性がある。
輸入鉄鋼・アルミに25%追加関税、新たな貿易措置の狙い
トランプ大統領は9日、大統領専用機の機内で記者団に対し、米国が輸入するすべての鉄鋼およびアルミニウム製品に25%の追加関税を課す方針を明らかにした。関税の適用対象国は特定されておらず、日本や欧州諸国を含むすべての貿易相手国が対象になる可能性が高い。
ホワイトハウスのレビット報道官は、新たな関税が既存の鉄鋼・アルミ関税に追加される形になると説明。トランプ政権が掲げる「米国第一」の貿易政策の一環として、国内の製造業を保護し、貿易赤字を是正する狙いがあるとみられる。
バイデン前政権との違いと過去の関税措置
トランプ大統領は、2018年の第1次政権時に鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を導入した経緯がある。しかし、その後の貿易協定によって、カナダ、メキシコ、ブラジルなど一部の国には無関税枠が認められた。
バイデン前政権は、英国、日本、欧州連合(EU)にも無関税枠を拡大したが、その結果、米国内の製鉄業界の設備稼働率は低下。トランプ政権は今回の追加関税によって、国内産業の保護を強化する意向を示している。
相互関税導入の可能性、国際貿易への影響
トランプ大統領は今回の関税発表と併せて、貿易相手国が米国製品に課している関税と同率の関税を課す「相互関税」の導入についても言及した。具体的には、11日か12日に記者会見を開き、その詳細を発表するとしている。
「向こうが関税を課すなら、われわれも課す」とトランプ氏は述べ、特に欧州連合(EU)の自動車輸入関税(10%)が米国の自動車関税(2.5%)よりも高いことへの不満を表明。これにより、EUとの貿易摩擦が激化する可能性が指摘されている。
世界貿易機関(WTO)のデータでは、米国の貿易加重平均関税率は約2.2%であるのに対し、インドは12%、ブラジルは6.7%、ベトナムは5.1%、EUは2.7%とされている。(ロイター調べ)
市場と産業界の反応、経済への影響
今回の追加関税発表を受け、金融市場ではドルが対主要通貨で上昇する一方、オーストラリア・ドルは対米ドルで下落。鉄鋼・アルミの主要輸入国である日本や欧州諸国の株式市場にも影響を与える可能性がある。
また、米国内のエネルギー業界や自動車業界にも影響が及ぶとみられる。特に風力発電や石油掘削業者など、一部の企業は特殊なグレードの鉄鋼を輸入に依存しており、関税引き上げによるコスト増が懸念されている。
米国鉄鋼協会によると、2024年に米国が日本から輸入した鉄鋼は118万トンで、全輸入量の約4%を占め、国別では6番目に多い。今回の関税強化により、日本企業の米国市場での競争力が低下する可能性もある。
今後の見通しと貿易交渉の行方
トランプ政権の新たな関税措置は、米国内の製造業の活性化を目的とする一方で、貿易相手国との摩擦を激化させる可能性がある。特に、EUや日本、中国が報復措置を取るかどうかが注目される。
米中間ではすでに関税引き上げが行われており、中国政府は10日から米国からの輸入品に対し最大15%の追加関税を発動する予定。カナダやメキシコについても、発動が猶予されている関税措置の適用が今後の交渉次第で決定される。
今回の関税発表は、2024年の大統領選で再選を果たしたトランプ政権の貿易政策が、前回政権よりもさらに強硬な姿勢を取る可能性を示唆している。貿易交渉の行方が、今後の世界経済に与える影響は計り知れない。