
パナソニックホールディングス(HD)は4日、傘下の事業会社「パナソニック」を2025年度中に解散し、複数の事業会社に分割する再編方針を発表した。長年続いた「パナソニック」という社名の存続も未定となっており、テレビ事業の売却・撤退の可能性も浮上している。
同社はこの改革により、3000億円以上の収益改善を目指す。
パナソニック解散の背景
パナソニックHDの楠見雄規社長は、低収益事業の整理を含む抜本的な経営改革の必要性を強調した。同社は家電、空調、照明といった事業を抱えており、特にテレビ事業については成長の見通しが立たないとして、売却や撤退を視野に入れている。
「パナソニック株式会社という名前を残すかどうかについては、現在の時点でまだ何も議論が進んでいない」と楠見社長は発言しており、100年以上の歴史を持つ「パナソニック」の名称が消える可能性も示唆された。
事業再編の詳細
パナソニックHDの再編案によると、現在の事業会社「パナソニック」は、以下の3つの事業会社に分割される予定だ。
- スマートライフ(仮称):家電事業を担当
- 空質空調・食品流通(仮称):空調や低温物流事業を統括
- エレクトリックワークス(仮称):電材・照明事業を管轄
これらの名称は仮のものであり、「パナソニック」の名前が新会社に残るかどうかは未定である。なお、グループ全体の事業ポートフォリオの見直しにより、迅速な意思決定と経営の効率化を進める狙いがある。
テレビ事業の行方
パナソニックはかつて、日本国内外で高いシェアを誇るテレビメーカーであった。しかし、近年は中国や韓国メーカーの台頭により、競争が激化し、市場での存在感が低下していた。英調査会社オムディアによると、2024年上半期の国内薄型テレビ市場におけるパナソニックのシェアは12.8%にとどまり、10年前の20%台と比較すると大幅に減少している。
こうした状況を受け、パナソニックHDはテレビ事業の売却または撤退を検討している。楠見社長は「売却する覚悟はあるが、現時点では買い手が見つからない可能性が高い」と発言しており、今後の動向が注目される。
収益改善と人員削減
パナソニックHDは、2028年度までに3000億円以上の収益改善を目指している。これに伴い、早期退職制度の導入などを含む人員削減も予定されており、詳細は今後詰められる見通しだ。
一方で、電気自動車(EV)用電池事業などの成長分野への投資は継続し、グループ全体の収益力を向上させる方針である。同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務効率化を進め、固定費の削減も図る。
市場の反応と今後の展望
パナソニックHDの発表を受け、市場では同社の抜本的な構造改革を評価する声がある一方、ブランド価値の低下やリストラの影響を懸念する声もある。特に、「パナソニック」という社名の存続が不透明な点は、多くの消費者や関係者にとって大きな関心事となっている。
また、家電業界全体がグローバル競争の中で変革を迫られている状況を踏まえると、パナソニックHDの再編が業界に与える影響は少なくない。今後の動向次第では、他の国内電機メーカーにも影響を及ぼす可能性がある。
パナソニックHDは、「持続可能な経営基盤の構築」を目指し、2025年度を「改革に集中する年」と位置付けている。同社の抜本的な改革が成功するかどうか、引き続き注目が集まる。
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