ホンダの米金融子会社が信用情報の誤報告問題で米消費者金融保護局(CFPB)から約20億円の制裁を受けた。
不正確な情報が顧客に深刻な影響を及ぼすとして、対応が批判されている。
制裁の背景と概要
問題が表面化したのは、COVID-19パンデミックが拡大していた2020年頃である。
ホンダの子会社であるAmerican Honda Finance Corporation(以下、米ホンダファイナンス)は一部の顧客に対し、自動車ローンの支払い猶予を提供していた。しかし、猶予期間中にもかかわらず、同社は信用情報機関に対して「顧客が延滞している」と誤った情報を報告していたことがCFPBの調査により発覚した。
本来、支払い猶予を受けている顧客は「支払いが継続中」と報告されるべきである。しかし、米ホンダファイナンスが提供した不正確なデータにより、約30万人の顧客の信用情報が損なわれたとされる。CFPBは、この誤報告が住宅ローンや新たな融資の取得に際し、顧客に不利益をもたらす可能性があると指摘している。
※American Honda Finance Corporation(米ホンダファイナンス)
American Honda Motor Co., Inc.の自動車金融会社で、ホンダおよびアキュラの車両をアメリカで販売する正規ディストリビューター。米ホンダファイナンスの本社はカリフォルニア州トーランスにあり、同社はアメリカンホンダモーター社の完全子会社。同社の主な事業は、ホンダおよびアキュラの販売店が提供するローンやリース契約の購入と管理。同社は顧客の信用報告に関するデータを報告する業務も行っている。
問題の詳細と影響
誤った信用情報が報告された結果、複数の顧客が住宅購入や車両ローンの再契約などの場面で困難に直面したとみられる。信用スコアはアメリカの金融市場において極めて重要な役割を果たしており、不正確な情報が登録されることで顧客の経済活動が直接的に制約される可能性がある。
さらにCFPBの調査では、米ホンダファイナンスが顧客からの異議申し立てに適切に対応していなかったことも判明した。同社は、信用報告会社に提供した情報が誤っているという指摘を受けながらも、迅速かつ適切な調査を行わず、結果として不正確なデータが修正されないまま放置されたケースがあった。
制裁内容について
米消費者金融保護局(CFPB)は、米ホンダファイナンスに対し、1,280万ドル(約20億円)の支払いを命じた。この内訳は、約30万人の被害を受けた顧客への補償として1,030万ドル、さらに250万ドルの制裁金が含まれる。同社は、誤った信用情報による影響を受けた顧客への適切な補償措置を講じる必要がある。
CFPBのロヒット・チョプラ局長は「杜撰な業務により、多くの消費者が信用報告に汚点をつけられた」と批判し、信用情報の不正確な報告が、住宅ローンや新規融資の取得、さらには就職活動にまで悪影響を及ぼす重大な問題であると強調した。
過去の問題と広がる波紋
今回の措置は、米ホンダファイナンスが信用情報管理において初めて問題を指摘された事例ではない。
2015年には、同社がアフリカ系アメリカ人やヒスパニック系、アジア太平洋諸島系の借り手に対し、信用力に関係なく自動車ローンのディーラー手数料を高く設定していたことが判明し、CFPBと司法省によって違法な差別的行為と認定された。同社はこれにより、2,400万ドルの補償を行うことで和解している。
また、CFPBは他の自動車メーカーの金融子会社にも同様の措置を講じている。2023年にはトヨタモータークレジットに対し、信用情報の不正確な報告で6,000万ドルの罰金を科し、ヒュンダイの金融子会社にも1,900万ドル超の制裁を命じた経緯がある。
こうした動きから、当局が信用情報管理の不正確さを厳しく取り締まっている姿勢がうかがえる。
信用情報管理の重要性と今後の課題
信用情報は、金融市場において消費者と企業双方にとって重要な基盤である。今回の事例は、誤った情報が消費者の生活に深刻な影響を及ぼすだけでなく、企業の信頼性にも大きな打撃を与えることを浮き彫りにした。特に、新型コロナウイルスのような予期せぬ社会的危機において、適切な情報管理がいかに重要かが改めて問われる結果となった。
米ホンダファイナンスは、過去の問題も含め、信用情報の取り扱いにおける改善が求められている。同社が実効性のある対策を講じ、顧客サービスの向上を図ることができるかが、今後の課題となる。CFPBの厳しい監視が続く中、企業全体としての透明性や責任ある姿勢が試される局面に立たされている。
一方で、今回の措置は金融業界全体にも警鐘を鳴らすものといえる。
信用情報における誤りは消費者の信頼を損ない、ひいては社会全体の経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、企業は情報の正確性を確保し、不備があれば迅速に修正する体制の整備に取り組む必要がある。
CFPBは今後も消費者保護の観点から、信用情報管理の適切な運用を推進する方針を強調している。今回のケースを契機に、業界全体の意識改革が進むことが期待される。