2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる「2024年問題」。施行から半年以上が経過した現在も、現場では様々な課題が生じている。
全国社会保険労務士会連合会(以下、連合会、大野実会長)は、これらの課題解決を支援するため、運送、建設、医師の3事業・業務を対象に「2024年問題対応実務研修」を12月12日に実施した。
現場の課題共有と業界特性に特化した研修
研修は東京、福岡、大阪の3都市で開催され、延べ327名の社労士が参加した模様だ。各研修は講義と意見交換会の二部構成で、第一部では施行後の現状と業界特性を踏まえた講演が行われた。
第二部では、事前に参加者から寄せられた質問や課題を基に活発な意見交換が行われた。顧問先企業を抱える社労士や業界に勤務する社労士など、多様な視点からの意見が共有された。
複雑な法制度への対応と業界慣行への配慮
2024年問題は、複雑な施行内容への対応に加え、提供するサービスや業界慣行への影響、各業界特有の構造や働き方に基づく課題への対応など、多岐にわたる対応が求められる。運送業界の長時間労働の是正、建設業界の多重下請け構造への対応、医師の働き方改革など、各業界が抱える課題はそれぞれ異なる。研修では、これらの業界特有の事情を踏まえた上で、実務的な対応策が議論された。
「人を大切にする社会」の実現を目指す社労士の役割
連合会は、「人を大切にする企業」づくりから「人を大切にする社会」の実現をコーポレートメッセージに掲げ、多様で柔軟な働き方の創造、導入、浸透を目的とした政策提言・宣言を行っている。柔軟な働き方の推進を阻害する法制度や、現場で不公平・非効率な運用を生んでいる法規制に対する改善提案を、全国の社労士から広く意見募集し、政策提言や宣言として取りまとめている。
労働・社会保障制度及び人事労務の専門家として、労使双方の視点を併せ持つ社労士の知見を活かし、連合会は今後も継続的かつ積極的に政策提言を発信していく方針だ。個人情報保護の観点からも、SRP認証制度を通じて、個人情報を適正かつ安全に管理する社労士事務所・社労士法人を認証し、社会全体の信頼向上に努めている。
連合会は、1968年の創設以来、持続可能な労働社会保険諸法令・制度の実効性の担保に貢献してきた。2018年には制度創設50周年を迎え、持続可能な企業づくりをサポートする専門家として、SDGsの取り組みにも積極的に貢献している。