返品詐欺被害の訴えが契機に
フリマアプリの先駆けであるメルカリが、サービスの品質向上に向けて大きな一歩を踏み出した。返品詐欺や模倣品の被害が広がる中、同社は顧客サポート体制を強化し、新たな補償方針を11月25日に発表した。
これは、利用者からの不満や被害報告がSNSやネット上で拡散し、企業の対応が批判を浴びたことを受けての動きだ。
返品詐欺とは、購入者が受け取った商品を意図的にすり替え、異なる品物を返品する手口を指す。この被害に対し、これまで多くの出品者が「事務局の対応が不十分」と不満を訴えてきた。SNS上では「声を上げ続けた結果、ようやく動き出した」といった利用者のコメントも見られる。
商品回収センターの新設で被害調査を徹底
今回の発表で注目されるのは、新設された「商品回収センター」の役割だ。同センターでは、返品された商品を回収し、実物を精査することで、すり替えや模倣品などの詐欺行為を見極める仕組みを構築する。これにより、取引のキャンセルや被害補償が適切に行われることを目指すという。
さらに、商品の実物確認だけでなく、eKYC(電子本人確認)を活用した取引履歴や個人情報の照合も進める方針だ。これにより、不正利用者の排除を徹底するとともに、正当なユーザーへの補償の幅を広げる狙いがある。
不正行為監視体制を強化し、信頼回復へ
不正行為への対策も大きな焦点となっている。メルカリは、AIを活用した不正行為の監視システムの構築や、関係当局・警察との連携を深めることで、悪質な利用者の排除に向けた取り組みを進める。また、ユーザーから寄せられる通報機能の強化も検討中だ。
山田進太郎CEOは、自身のSNSで「お客様が安心安全にストレスなく利用できるサービスを目指し、サポート体制や不正対策を進めていく」と意欲を示した。
課題は残るが、利用者の信頼回復を目指す
今回の体制強化は、多くの利用者から歓迎される一方で、課題が残るのも事実だ。被害者の中には「サポート体制が改善されても、犯人が捕まらなければ気持ちは晴れない」との声もある。
また、アクティビスト投資家の田畑信太郎氏は兼ねてより、「炎上しなければ動かない体質が課題」と指摘しており、企業としての対応速度や透明性に改善の余地があるとみている。今回の開示についても、CEOの山田進太郎氏にむけて、「今のメルカリの経営は、US撤退も、サポート改善も、炎上させないと何も動かないようなので、これからも燃やし続けますね」とコメントしていた。
それでも、メルカリが具体的な対策を講じたことは、利用者にとって一歩前進といえる。返品詐欺は、オンライン取引が主流になる現代の消費社会における新たな課題だ。メルカリの取り組みが、フリマアプリ全体の信頼性向上につながるか、今後の展開が注目される。