~情報源はテレビが最多。企業はメディアを通して何を伝えるべきか?~
企業のブランディング支援を行う株式会社パブリックグッド(東京・渋谷)は2024年8月26日、首都圏の一般生活者を対象とした「ブランド・エンゲージメントとメディア利用」に関する調査結果を発表した。
4人に1人が「共感できるパーパスを持つブランドがある」と回答
調査の結果、企業のパーパスに共感するブランドが「ある」と回答した人は全体の24%に達することが分かった。調査は2024年4月30日から5月2日にかけて、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に住む20歳代から60歳代の男女5,000人を対象に実施された(スクリーニング調査)。
今回の調査では、まず「パーパス」という言葉の認知度を測定した。その結果、認知度は約45%となり、2021年頃から注目を集め始めた「パーパス」という言葉が、徐々に消費者に浸透してきている現状が明らかになった。
パーパスは企業と生活者のエンゲージメント構築に効果を発揮
さらに、パーパスという言葉の定義を提示した上で、パーパスに共感する企業やブランドがあるかどうかを尋ねたところ、全体の4人に1人にあたる約24%が「ある」と回答した。この結果から、ブランディング活動において「パーパス」が、消費者とブランドのエンゲージメント(愛着や信頼関係)構築にある程度の効果を発揮しつつある状況がうかがえる。
パーパスに関する情報源はテレビが最多、企業発信よりもメディアを通した情報が求められる傾向
続いて、調査に回答したうちの男女495人に企業やブランドのパーパスに関する情報収集源について追加調査を行うと、全体の70%以上(71.6%)が何らかのメディアから情報を得ていることが分かった。最も多かったのは「テレビ番組」で15.6%、次いで「ブランドの公式サイト」が14.6%、「新聞記事」が11.4%、「ニュース配信サービス」が8.9%、「雑誌記事」が8.8%と続いた。
この結果について、パブリックグッドは「消費者はブランドのパーパスに関する情報を、企業から直接受け取るのではなく、メディアが解説や編集を行った、分かりやすく信ぴょう性のある情報を求めている傾向がある」と分析している。
実際に、企業のプレスリリースをそのまま掲載するのではなく、独自の視点で分析したり、専門家の意見を交えたりするなど、読者の知的好奇心を満たせるメディアは強い影響力を持っていることがわかる。
消費者の共感を得られるパーパスは、企業と消費者の共創によって生まれる
今回の調査結果を受けて、パブリックグッドの代表取締役である菅原賢一さんは、「2019年末の新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、『サステナビリティ』『SDGs』といった言葉への社会的な関心が高まり、多くの企業がパーパスの策定や発信に取り組んできた。
今回の調査では、パーパスに共感するブランドが『ある』と回答した人が全体の24%に達したが、これを『もう4人に1人が共感するブランドを持っている』と捉えるか、『まだ4人に3人は共感するブランドを持っていない』と捉えるかは、それぞれの立場によって異なるだろう」と述べている。
さらに菅原さんは、「パーパス自体は2021年頃からブームになっているが、当社では、時系列的な変化や消費者心理を踏まえると、ブランディング活動において『パーパス』は急速に浸透し、成果を出しつつあると考えている。
一方で、ブームに乗って形だけ作ったパーパスや、サステナビリティばかりが先行してしまい、本来企業が提供すべき生活者へのベネフィットにつながらず、消費者にメッセージが響いていないケースも散見される。
当社は、パーパスの策定支援はもちろんのこと、過去に策定したパーパスの刷新や情報発信など、企業のブランディング活動を幅広く支援しているが、本当に共感を得られるパーパスは、企業が単独で作るのではなく、消費者との対話を通じて共に創り上げていくものだと考えている。ブランドと消費者の間で活発な議論が生まれるような仕掛けを作り、より深みと共感性を備えたパーパスへと成長させていくための戦略や戦術の実行を、今後も全面的にサポートしていく」とコメントしている。
この「共創」という視点は、まさにメディアの役割としても重要であると言える。企業の取り組みを単に紹介するのではなく、その背景にあるパーパス実現に向けた努力や葛藤をストーリーとして語ることで、読者の心を動かす記事作りができるだろう。同時に、図表やインフォグラフィックなどを活用し、複雑な情報を分かりやすく可視化することで深い理解を促すことも重要だ。
今回の調査結果の詳細については、パブリックグッドの公式noteで順次公開される予定とのこと。
企業がパーパスを掲げ、社会とつながりながら持続可能な成長を目指す動きが加速する中、メディアは、企業と生活者、双方にとってより良い未来を創造するための重要な役割を担っていると言えるだろう。
「ブランド・エンゲージメントとメディア利用」に関する調査概要
○調査主体:株式会社パブリックグッド
○調査プラットフォーム:Freeasy
■調査①(スクリーニング調査)
○調査期間:2024年4月30日 ~ 5月2日
○回答数:1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に住む20代~60代の男女 5,000名(男性2,200名・女性2,800名)
– 20代 男性375 女性500 – 30代 男性375 女性500
– 40代 男性400 女性600 – 50代 男性550 女性600
– 60代 男性500 女性600
■調査②(本調査)
○調査期間:2024年5月2日 ~ 5月13日
○回答数:1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に住む20代~60代
【対象者A】男女495人(男性250名・女性245名)
※40代女性は49名、60代女性は46名、その他は各年代男女50名ずつ
・スクリーニング調査で、 「パーパス」という言葉を「知っている」or「聞いたことがある」 かつパーパスに共感しているブランドが「ある」と回答した人
【対象者B】男女500名(男性250名・女性250名)※各年代男女50名ずつ
・ スクリーニング調査で、「パーパス」という言葉を「知らない」と回答した人
*構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため合計は必ずしも100とはならない