
日本ハムの「シャウエッセン」が、6本から5本への実質値上げを発表し、思わぬ炎上を招いた。そこへ飛び込んできたのが、カラオケチェーン「ジャンカラ」の広告だ。「ポテトが一本増えます」と、シャウエッセンの宣伝を大胆にパロディ化。SNSでは笑いが広がる一方、他社の炎上に乗じた広告手法にも注目が集まっている。同じ「1本」をめぐる発信で、なぜ企業への反応はこれほど違ったのか。
シャウエッセンが6本から5本に 「時代に負けてたまるか」が炎上
発端は10月5日、日本ハムが発表したシャウエッセンのリニューアルだった。主力の2パック商品について、1パック当たりの内容量を117グラムから107グラムへ減らす。参考小売価格は2パック702円(税込)のまま。一般的な6本入りの商品が5本入りになる変更で、実質的な値上げとなる。
同社は原材料価格や包装資材、物流費、エネルギーコストの上昇を理由に挙げた。一方、ウインナー1本当たりの重量は増やし、従来よりも食べ応えのある商品へ改良したという。ところが、宣伝に使われた「時代に負けてたまるか。」というキャッチコピーが物議を醸した。Xでは、量が減っているのに時代に負けていないと言えるのか、といった批判が相次いだ。
消費者が受け取ったのは、商品改良への意気込みよりも、値段を据え置いたまま1本減るという現実だった。原材料費の上昇で値上げが必要になることは理解できても、それを企業の奮闘として大々的に宣伝されることには抵抗がある。この受け止め方の違いが、今回の騒動を大きくしたといえる。
ジャンカラが「ポテト1本増えます」 シャウエッセン広告を大胆にパロディ
日本ハムの発表から2日後、思わぬ企業が話題に加わった。関西を中心に展開するカラオケチェーン「ジャンカラ」だ。
10月7日、同社の公式Xは「ポテトが一本増えます」と投稿。シャウエッセンの発表を思わせる文章に加え、赤い背景とフォークに刺さったポテトを使った広告画像も公開した。さらに、元の広告と同じ「時代に負けてたまるか。」という言葉まで使用した。
Xではジャンカラの投稿に笑いを誘われたという反応が広がり、他社の商品を題材にした広告の大胆さを評価する声もあった。一方、他社が批判を受けている最中にその広告をまねる手法には、リスクがあるとの指摘も出ている。
注目したいのは、ジャンカラが自社のカラオケサービスそのものを宣伝したわけではない点だ。たった1本のポテトを題材にしながら、日本ハムの広告を知る人ならすぐに意味が分かる仕掛けを作った。シャウエッセンをめぐる騒動が、ジャンカラの宣伝材料にもなったのである。
なぜ日本ハムは炎上し、ジャンカラは笑いを集めたのか
両社の広告には共通点がある。商品の変化を「1本」という分かりやすい単位で伝え、企業の思いを強調していることだ。しかし、その変化が消費者にとって得なのか損なのかで、受け止め方は大きく異なる。
シャウエッセンは、1本を大きくしたとはいえ、袋全体の重量が減っている。対するジャンカラは、ポテトを1本増やすという設定だ。わずかな増量を大げさに宣伝することで、日本ハムの広告表現のおかしさを浮かび上がらせた。
そもそも日本ハムにも、商品改良を訴える根拠はある。同社は従業員75人による比較調査を実施し、新商品について「張り」は72%、「パリッと感」は65%、「満足感」は61%が従来品より良いと評価したと発表。さらに、食べ終わるまでの時間も平均5.45秒長くなったという。だが、こうした調査が示すのは主に食感や食べ応えへの評価であり、価格に対する満足度とは別の話だ。1本の品質が向上していても、購入できる総量が減ることへの不満は残る。企業が伝えたい商品の価値と、消費者が購入時に重視する価値が一致していなかったのである。
ジャンカラの広告が話題になった背景には、その食い違いを誰もが理解できる形で笑いに変えたことがある。ただし、他社の騒動を利用した宣伝は、受け取る人によっては悪趣味と映る。今回は好意的な反応が目立ったものの、同じ方法が常に歓迎されるとは限らない。
ジャンカラはさらに広告を変更 今度はラーメンも登場
ジャンカラの広告は、ポテト1本の話題だけでは終わらなかった。10月8日夜、同社公式Xは、ポテトを1本だけ増やすという告知について、客にとって分かりにくいことや、一部店舗にはポテト食べ放題メニューがあることを踏まえ、内容を急遽変更すると投稿した。さらに「今度こそ時代に負けません」と続け、ラーメンの告知も展開した。Xでは、一連のやり取りを巧みなSNS運用として評価する反応が見られる。
ここまで来ると、単発のパロディ広告というより、SNS上の反応を取り込みながら次の話題へつなげる発信になっている。企業が広告を公開し、その反響を受けて再び広告を出す。消費者とのやり取りそのものが宣伝になっている点が興味深い。
一方、日本ハムが同じような展開をするのは難しい。元の商品変更が消費者に負担を求める内容である以上、軽い冗談で応じれば、さらに批判を招く恐れがある。ジャンカラは他社の広告を笑いに変えられても、日本ハムには商品の品質や価格について説明する責任が残る。そこに両社の立場の大きな違いがある。
シャウエッセン炎上が映し出した、値上げ時代の消費者心理
1985年に発売されたシャウエッセンは、40年以上にわたって日本の食卓で親しまれてきたロングセラー商品だ。朝食や弁当のおかずとして、6本入りのパッケージに慣れ親しんできた人も多いだろう。例えば、家族3人に2本ずつ出していた家庭では、5本になると分け方も変わる。1本を大きくするという改良は、必ずしも日々の使いやすさにつながるわけではない。
原材料費や物流費が上昇するなか、食品メーカーが価格や内容量を見直すのは避けがたい経営判断だ。ただ、消費者もまた、物価高に苦しんでいる。メーカーが「時代に負けてたまるか。」と奮闘を訴えても、買う側にとっては家計への負担が増える現実がある。今回の反発には、そんな物価高への不満も重なっているのだろう。
そして皮肉なことに、シャウエッセンが掲げた「時代に負けてたまるか。」という言葉を、ジャンカラは笑いを生む広告に変えてしまった。長年愛されてきた商品のリニューアルより、ポテトをたった1本増やすという冗談が注目を集める。日本ハムにとっては、何とも複雑な結末となった。



